こちらの策に慣れてきたのか、鬼道の指示が良くなり雷門イレブン達にボールを取られることが多くなってきた。
ならばこちらはフィールドを縦に使い、もっと走らせる事によって相手を疲れさせる事にしよう。既に疲労の見える雷門には、相当キツイはずだ。

反対にこちらは疲れしらず。続けていれば相手を振り切るのも楽になるはずだ。

雷門ゴール目前で、ボールを持った風丸に吹雪と壁山がマークについた。

『風丸！』

こっちと合図を送れば、風丸は直ぐにパスを送ってきた。
そこまでは鬼道も読んでいたのか、パスカットしようとしてきた。

『邪魔！』

前に居る鬼道を避ける為に、右手を地に付け右足を回しながら左足で押すように飛ぶ、スクートと呼ばれるアクロバット技で彼の横を飛び抜けて、その回した足の勢いで、風丸から飛んできたボールを後ろへ飛ばした。

『影野！』
「豪炎寺！」

互いにダークエンペラーズのゴール側に近い二人の名を叫ぶ。
名を呼ばれた二人は互いにボールを目指して走り出したが、豪炎寺の方が速くボールに追いついた。

「フフフ、今が俺の存在感を示す時！」

そう言って影野は豪炎寺の周りを高速で回転しだした。

「コイルターン！」

旋回により生まれた突風で豪炎寺を吹き飛ばした影野がボールを奪った。

『影野！栗松へパス！』

「うん！」

返事をした影野から栗松へパスが通る。
先程の間に雷門イレブン達が上がってきている。

『いいね。……栗松！そこからロングでトリプルブースト！』

「は……」

「了解でやんす！」

何を、と雷門イレブン達が驚いた顔をするまもなく栗松はゴール前の場所からセンターライン前に居る宍戸に向けてシュートした。

「みんな戻れ！」

慌てて鬼道がそう叫ぶが、飛んでいくボールの方が早い。宍戸は向かってきたボールをそのまま蹴り飛ばし、ボールは雷門ゴール付近の風丸へ向かっていく。

「「「トリプルブースト！！！」」」

飛んできたボールを風丸が蹴り、ゴールへボールが勢い良く飛んで行くが、ボールはゴールポストへ当たって跳ね返った。
リバウンドボールをシャドウが何とか拾ってくれた。

「おい、いきなりやった事ないことをやらせるな」

『ごめんごめん。いけるかと思って』

シャドウが立て直しの為にボールを後ろの私に戻しながら伝えてきた苦情に素直に謝る。
本来のトリプルブーストより、それぞれの距離がありすぎてせっかくのブーストの威力が間延びして弱くなった結果、本来のボールの重心点を蹴れず、狙った方に飛ばなかったのだろう。

「水津！もう1回だ」

そう言った風丸の周りに染岡と松野が集まっている。

『おっけー、よろしく』

風丸へとパスを出す。
上がっていた雷門イレブン達はまだ戻ってきていない。

「いくぞ」

風丸の合図で3人はボールを蹴り高く飛び上がった。

「「「ダークフェニックス！！！」」」

「決めさせるもんか！」

飛んでくる黒い不死鳥を前に、立向居はどっしりと構えた。

「ムゲン・ザ・ハンドォオオ」

立向居の背から伸びた無数の腕たちがガッシリとボールを包み込む。

「ぐっ………！」

「立向居！」

ボールの威力に押される立向居の後ろに円堂が回り込み、その背を支える。
………かつて、木戸川清修との戦いで、ゴールを守る円堂の背を支えた壁山と栗松のように。

二人のパワーで押し返そうとするが……。
パリン、とムゲン・ザ・ハンドが割れ、2人は倒れボールが飛んだ。
ボールはクロスバーに当たって弾かれ、ラインの外へ出ていった。

「おっと！立向居と円堂がゴールを死守！！」

ピピッとホイッスルのなる中、角馬くんの実況が響く。

「大丈夫か！？」

先に起き上がった円堂が、倒れた立向居を起こそうとする。

「……はい、いっ………」

呻き声を上げた立向居に、円堂は見せてみろと彼のしていたグローブを脱がす。

「は……」

「まだ、戦えます」

「お前……！」

「立向居負傷か！？これは雷門イレブン絶体絶命だぁ！！」

角馬くんの実況を聞いて思わず鼻で笑ってしまった。
絶体絶命、ねぇ。

「フッ、どうする円堂。まだ続けるのか？」

地に座り込んだ二人に歩み寄って風丸が見下ろす。

「なに……！」

「見ろ」

そう言って風丸は後ろを向く。

「皆、立って居るのがやっと、今にも倒れそうじゃないか！しかもキーパーは負傷。そんな状態ではロクにゴールは守れない。もう諦めろ」

「いや、諦めない……！ゴールは俺が守る！」

円堂がそう言えば、風丸は待っていたと言わんばかりに口角を上げ、悪い顔をした。

「チッ、往生際が悪いですね」

研崎は気に入らないようだが、ダークエンペラーズの面々からすれば、円堂ならそうだろうな、といったところだ。

勝負したかったんだ
キーパーのお前と。そう嗤う風丸を見て、私も良かったと笑顔になった。