脅威の侵略者編
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「研崎」
「はい、旦那様」
雷門中との対話から戻って来た吉良星二郎に名を呼ばれて、返事をして頭を垂れる。
下げた顔が笑っている事など、この男は知らないだろう。
「彼女の監視は今どうなっているのですか?」
「はい。旦那様と雷門中との会話を聞き、すぐさま確認した所、監視員が何者かに気絶させられ私が連絡するまで気を失っていたそうです。現在、急いで捜索させています」
全て嘘だ。吉良の命令で付けていた水津の監視員は、全て私の手の内の者。その者たちからの情報があったからこそ、私は彼女の異常さに有用さにも気づけた訳だ。
それに現在は彼女も私の手の内にある。わざわざ捜索などする必要はない。
「何者かに、ですか……」
ふむ、と吉良は考えるように顎を触った。
「はい。私は、神の可能性もあるのでは、と思っています。気がついたら気を失っていたそうですから」
神という単語に吉良は不気味なほどニッコリとした笑みを浮かべた。
「なるほど。その可能性は大いに有り得ますね。役目を終えた彼女が消えるのを、一般人に見せないために神が自ら動かれた……。消えうる前兆はずっとありましたからねぇ」
相変わらず単純な男だ。神代などと名乗るアレを盲信的に崇拝するこの男は、適当な嘘でも可能性を信じてしまう。
それにしても、消えうる前兆か。
確かにそれは監視員からの報告で受けている。1番最初の前兆は真・帝国学園の不動明王に足を蹴られた時、2回目は大海原中のグラウンドで練習中に飛んできたボールを蹴り返そうとしていた時。いずれも、彼女の身体が透けてすり抜けたらしい。
「本人は気づいていないようでしたがね」
「ええ。彼らと共に来なかった事を考えると消えてしまった可能性が高いですが、万が一にも居る可能性があります。そのまま捜索は継続してください」
「かしこまりました。そのように伝えて参ります」
そう言って、吉良に頭を下げて部屋を出る。
「おっと、失礼いたしました」
「ああ、いや、こちらこそすみません」
出ようとして開けた扉の目の前に顔色の悪い赤毛の少年が立っていた。
「父さん、準備できたよ」
少年はそう言って部屋の中へ入って行った。
今から負けるとも知らずに、あの男のためにと健気なものだ。そう思いつつ、研崎は部屋を後にした。
「………」
その背を見つめているものが居るなど知らずに。
「ヒロト、どうかしましたか」
吉良に聞かれたヒロトは、なんでもない、と首を横に振るのだった。
「もうすぐ試合が始まりますよ」
彼らと共に最終調整をしている彼女へ声を掛ける。
「見られますか?」
『いや、必要ないよ。結果は分かってるし』
首を振った彼女を見て小さく笑う。
「そうですね。では、時間になったら準備をお願いしますよ」
『そちらもあまりニヤニヤして吉良に怪しまれないでくださいね』
「ええ。十分気をつけますよ」
軽口を叩いてくる彼女にそう返して、また吉良の元へ引き返すのであった。
さあ、前座が始まる
存分に盛り上げて欲しいものです。