脅威の侵略者編
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対侵入者用ロボットから逃げて飛び込んだ部屋はホロビジョンルームだった。
恐らく意図的に誘い込まれたその場所で父が放映したのは、日本の首脳人に贈る、兵器のプレゼンテーションだった。
まず父が語ったのは、エイリア学園の子供達は宇宙人でない、という事と、5年前に飛来してきた隕石、エイリア石を使ってハイソルジャーを作る計画のことだった。
今回のエイリア学園によるサッカーでの襲撃事件は、このハイソルジャー計画を1度蹴ったサッカー好きの財前総理への見せしめであり、それを実行した子供たちは、エイリア石で強化された人間なのだと。それがエイリア学園の真実。
そして、究極の戦士として父が紹介したのは、ヒロト……いえ、グラン率いるザ・ジェネシスだった。
放映が終わると共に、先の扉が開き眩い光が入ってくる。
目を細めた先に見えたのは、細身の男の姿だった。
「研崎………!」
含み笑いを浮かべた、頬のコケた顔色の悪い男が、どうぞこちらへと私達を先へと招いた。
人工的に作られた自然の中にある、和室の縁側に和服に身を包んだふくよかな男が待っていた。
「プロモーションはどうでした」
「お父さんは間違ってます。ハイソルジャー計画をやめてください!」
そう言えば、父は硬い表情を崩し小さく笑った。
「どうやら分かっていないようですね。お前たちも私の計画の1部に組み込まれていたということが」
「どういう意味ですか」
思わず顔を顰める。
「エイリア学園との戦いで鍛え上げられたお前たちが、ザ・ジェネシスにとっていずれ最高の対戦相手になると思っていたからですよ」
父のその言葉の"意味"に気がついて、絶望した。
私は………
「瞳子。お前は期待通りの仕事をしてくれました。礼をいいますよ」
「私のしてきた事が、エイリア学園の為だったというの………」
「監督……」
きっとすんなりと施設に入れたのもそういう事だったのだろう。
「ところで、彼女が居ないようですが」
子供達の顔を見渡していう父の言葉に、首を傾げる。
「彼女って……」
「水津梅雨さんですよ」
言葉の意味が分からなかった。
だって、彼女は、
「エイリア学園が連れ去ったんじゃ……」
「そうだ!水津を返せよ!」
私達がそう言えば、父は驚いたように目を見開いた。
「なるほど」
そう呟いて父は笑った。
「エイリア学園は攫っていませんよ」
「嘘をつくな!」
財前さんがそう噛み付くが、父は笑顔を崩さなかった。
「嘘ではありません。少なくとも私は彼女を攫うような指示は出していない。ですから、あなたたちの前から居なくなったと言うことは、あなたたちを見守る必要がなくなったのでしょう」
「そんな………自分の意思で居なくなったって言うのか?」
「嘘や……!だって、水津はみんなと一緒にここに来て、秘密を話すんやって………」
円堂くんと浦部さんが、信じられない、とそう零す。
「秘密。ふむ、やはり彼女はあなたたちに話していなかったのですね」
「……お父さんは何か知っているの」
「ええ。言ったでしょう。彼女は神の子供なのだと」
神。その言葉に顔を顰める。
「確かに、あなたは前に言いましたね。神代というのが水津の親なのだと」
鬼道くんが聞けば父は、ええと頷いた。
「そうです。彼が彼女をこの世界に創った親なのです」
「この世界に創った……?」
父の妙な言い回しに首を傾げる。
「創られた……?異世界からやって来たのではなくか?」
「おや、有人坊ちゃんはご存知でしたか。そうですよ。彼女は神が世界を見るために創った目ですから」
「目だと……?」
鬼道くんと父とのやりとりに、他の子供たちはついていけてない。
響木さんや本人から彼女の事を聞いていなかったら、きっと私も混乱していた。
「本人は気づいて居ないようですがね。これ以上私が話す必要はないでしょう」
「なっ、待て!まだ……」
「試合の準備をしてください。ジェネシスが待っていますよ」
鬼道くんが引き止めようとしたが、それを無視して父は踵を返し部屋の奥の襖をあけて消えていった。
水津さん……。最初に会った時から異世界からきた異邦人だと言っていた変わった子だった。いえ、ハタチ過ぎてると言っていたから、子ではないわね。
父の本人も気づいていないという言葉が本当なら、彼女がスパイだったとしても、それは本人の意思ではなかったという事だ。
いや、そもそもスパイなんかじゃないのだろう。私は分かっていたはずなのに、ずっと彼女を疑うフリをしていた。
だって、彼女は私と違って、子供たちのために動いていた。
渋ってはいたが、エイリア学園に脅されている豪炎寺くんの代わりに選手として入ってくれて、私が彼を排除しても、まあまあ、と反発する染岡くんを宥めてくれたり。
吹雪くんの事も、彼女は最初から諸刃の剣だと警告してくれていた。
真・帝国学園との戦いでも、彼女は佐久間くん達を救おうと戦おうとしていた。
私とは大違いだ。
だけど、そんな彼女さえ、私は、私のやり方は壊してしまったのかもしれない。最近の彼女は誰が見ても空虚だったから。
「みんな」
後ろにいる子供たちの方へ向き直る。
「私は今日までエイリア学園を倒し父の計画を阻止するために戦ってきた。でも、あなたたちを利用することになっていたのかもしれない。私には、監督の資格は……」
違う!!
監督を降りようとした私を、引き止めたのは円堂くんの強い否定だった。