脅威の侵略者編
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やれやれと呆れた様子で見つめる杉森とシャドウから顔を背けた染岡は、おい、と私に声をかけた。
「お前、ずっと居たか?」
『居たよ』
……消えてたけど。
「やっぱりお前が部屋を間違えただけだろう。人騒がせな奴だな」
「確認はきちんとすべきだ」
シャドウと杉森に責められ、染岡はぐっと苦虫を噛み潰したような顔をした。
「そもそも何故、そんなに慌てていた?」
杉森の言葉に染岡は、チッと舌を打った。
「仕方ねえだろ……。コイツは付けられた首輪がどんなもんか知ったら、自殺ぐらいしかねない奴なんだよ」
「それは……」
驚いたような顔をして、シャドウと杉森がこちらを見てきたが、正直、私も驚いた。
「なんでお前が驚いて……」
考えなくはなかった。
死んでしまえば、エイリア石の効果も基地の爆発スイッチも関係ない。
元々いない存在なのだから、物語的にもなんら問題ない。
でも、その考えを染岡に見透かされてるとは思わなかったな。
「お前まさか……!」
怒ったような顔をした染岡がズンズンと大股でベッドに近寄ってきて両肩を掴まれた。
「その顔、考えてねえよな?」
『あはは、最終手段くらいには?』
「笑い事じゃねえよ!いい加減にしろよ!」
ぎり、と肩を掴む力が強くなった。
『染岡、痛いよ』
「ふざけんな!前にも言ったろ!なんで、お前は自分を蔑ろにすんだよ………!」
ああ、真・帝国の時のこと言ってるのかな。
さっきまで怒ったような顔だった染岡が何故か泣きそうな顔に変わった。
「なんで、お前はそうやって……」
『だって、私はね、この世界の人間じゃないんだよ。本来はいない存在。バグみたいなもんだから』
「本来だのなんだの知らねえよ!!けど、お前は今!ここに居んだろ!!」
肩に置かれていた手が背中に回され抱き寄せられた。
『染岡……?』
染岡は肩に顔を寄せ、震えていた。
「頼むからもっと、自分を大事にしてくれ。俺を……、俺たちを頼ってくれ。その為に俺は、エイリア石で強くなった。もう、誰に負けたりも怪我をしたりもしねえ。だから……」
ああ、本当にこの子は………。
『優しいなあ、もう』
そっと、腕を伸ばして抱き締め返す。そして、小さな子供をあやす様に、とんとん、と優しくその大きな背中を叩く。
『最終手段って言ったでしょ』
そうは言ったけど本当は死ぬ勇気なんてない。そもそもそんな勇気が持てるメンタルなら、きっともっと好き勝手にこの世界を変えようとしたと思う。
だから、身体が壊れても構わないから何もしないで静かに事の行く末を見守ろうと思ってた。
けど、気が変わった。
『正直死にたくないし、このままにして身体が壊れるのも嫌。それに、自由を意味するフリースタイラーの私にこんな首輪付けられてるのもムカつく。私がどうしたって変わらない、自由にさせてくれない、この世界にも。だからね、染岡。力を貸してよ』
「……ああ。ああ、任せろ!」
二度強く頷いた後、染岡は勢いよく立ち上がった。
『杉森とシャドウもよろしくね』
「ああ」
「ふっ。せいぜい、オレの闇に呑み込まれないようにな……」
静かに頷く杉森の横で、シャドウは厨二感満載に答えた。
「しかし、他のメンバーが納得するかは別だがな」
杉森の言葉に、あー、と考え込む。
確かに。特にジェミニストームとの初戦で怪我をした子達からすれば、信用ならないだろうな。
けれど…、うん。大丈夫。
『その為の力でしょ』
そう言って、首輪の嵌められた石を人差し指でひと撫でするのだった。
「流石、染岡くん。俺に説得させろと、志願してきただけの事はありますね」
あのまま3人と共に研崎の元へ向かえば、研崎は大いに喜んだ。
「心変わりが早くて助かりますよ、水津さん」
『色々考えたけど、寄らば大樹の陰。長い物には巻かれろ、かなって』
「ええ、分かりますよ。強さこそが全てだ」
ククク、と研崎は笑って私の後ろに回った。
そして首元に手を伸ばして、いとも簡単に首輪を外した。
それからどうぞ、と研崎は皆が付けているのと同じエイリア石の首飾りを手渡してきた。
それを手に取って、自らの意思で首に掛けた。 首輪よりも息がしやすい気がする。先程までのは溢れんばかりの力で気持ち悪いくらいだったのに、今は力が満たされて心地よく感じ、ほう、と息を吐く。
「おや、隙をついて逃げ出されるかと思っていたのですが、意外ですね。染岡くんの説得のおかげでしょうか」
「ああ。熱い抱擁を交わしていた」
「抱……!」
杉森の言葉に、染岡がカアッと顔を赤く染めた。
「ちげーよ!アレは……!!その、勢い余って、だな……」
否定の勢いが段々と尻すぼみになっていき、染岡はゴニョゴニョと何か呟いている。
自分からしといて照れるなよ。なんだかつられてこっちも恥ずかしくなってきた。
「おや、青いですね」
『はは。まあ、彼に当てられて知らない世界を見たくなったのは確かだしね』
心が動く
抱きしめられてから、とくとく、と脈打ち始めた気がした。