脅威の侵略者編
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窓のない真っ白い部屋に置かれたベットの上で身体を起こした。
シュン、という音がして顔を動かせば、ドアが開いて青白い顔の男が入ってきた。
「お目覚めは如何です?」
『…………最悪だよ』
「それは残念です」
大して残念そうな顔もせず、淡々と研崎がそう返してきた。
「一晩経ちましたが、協力していただける気にはなりましたか?」
『なるわけ、ないでしょ』
研崎が提案してきた、協力とは、彼ら側についてエイリア石の力で雷門を倒すということ。
彼の勘違いに気がついて、私は敢えて提案を蹴った。
そして、こんな事はやめて!と必死にみんなを止めるフリをした。
当然、信頼が地に落ちた私の言葉など、誰にも届かず、彼らは戦うことを選んだ。
これでいい。これで、物語通りすすんでくれれば……。
「ふむ。力が満ちる感覚を味わえば、分かっていただけると思ったのですがね」
『ああ……、それがこの胸糞悪い首輪ってわけ』
首にがっちりと嵌められた機械の首輪。
デスゲームでしか見た事ないような首輪が、寝ている間に取り付けられていた。
ツルツルとした首輪を指で触れば正面の真ん中辺りにゴツゴツとした石が嵌められているのが分かる。
恐らくエイリア石だろう。
自らの意思で取り付ける子達にはただ紐を通しただけのペンダントになっていたけれど、これは絶対に自分で外せないように作られたものだった。
「お似合いですよ。決められた未来の通りに進めようとする忠順な貴女には」
『はは、褒められてこんなに嬉しくないのは初めてよ』
「そうですか」
身体の底から沸き立つような感覚が、ずっと全身を包んでいる。
今ならどんな高難易度のアクロバットでも軽々と出来ちゃいそうだ。
頭がふわふわとして少しでも気を抜けば、力に飲み込まれてしまいそうで…………。佐久間と源田が、不動に見せられたエイリア石でああなってしまった気持ちが今なら分かる。
まともな意識でいられないのだ。
「実はそちらのチョーカーはエイリア石のエナジーを強化する研究の際に造られたものでしてね。ペンダントより効率よく力を得られるのですが、些か問題点がございましてね」
より効率よく得られるのに未だにペンダントを使用してるんだから、そりゃ何かしらあるだろうね。
首輪をカリと爪で掻く。
「どうにもエイリア石の力の強さに使用者の身体が耐えられなくなるようでしてね。長時間の着用が難しく、試作品止まりとなってしまったのですよ」
強い力に身体が耐えられない…………。皇帝ペンギン1号を使った佐久間のように、か。
「ですから、早く心変わりされることをオススメいたしますよ」
そう含み笑いを浮かべながら研崎は、踵を返し出口へと歩いていく。
『ご忠告どうも』
そう思っても無いことを言えば、ああ、とつぶやき研崎は足を止めた。
「そうでした。このフロア内でしたらご自由に動かれて結構ですよ。ただし、許可なくフロア外に出てしまわれた場合や無理やり外そうとした場合、その首輪が起爆スイッチとなり、この建物が爆発する仕掛けになっていますので、"みんな"の無事を祈るのであれば、大人しくしていてくださいね」
そう言って、今度こそ研崎は部屋を出ていった。
デスゲームの首輪より最悪じゃねーか。普通首輪付けた本人が爆発するんじゃないの??
研崎のやつ、わざわざ "みんな" を強調したあたり本当にいやらしい。
恐らくダークエンペラーズとなったみんなも、この施設に来るであろうイナズマキャラバンのみんなも、そしてこの施設にいるエイリア学園のみんなもその中に含まれる。
フットボールフロンティアの決勝で世宇子中戦の最中、影山に会いに行った時と違い今回ばかりは、スマホどころかリフティングボールまでも回収されてしまったし。
前のように鬼瓦刑事に連絡を取ることも、リフティングボールを武器にすることもできない。
『詰んだ』
ゴロンと両手を放り出すように後ろに向けて、そのままベッドに倒れ込む。
エイリア石のせいでまともに頭も働いてないし、策を考える余裕もない。
少なくともこのまま大人しくしていれば、物語通りことは進んでいく。
身体1つ壊れたって、元々こんな元気な身体じゃなかったんだ。本来の自分に戻るだけだし。
『そもそも、存在しない人間が1つ壊れたところで……』
なんの問題もない。
ならば、私はこのまま……。
そう考える私の耳に、シュン、とまた入口が開いた音が聞こえた。
でも、起き上がる気力が起きずそのまま寝転がったまま、顔を向けて見れば入ってきたのは染岡だった。
「は……、アイツ、どこ行った」
入るなりそう呟いた染岡は慌てたように直ぐに部屋を出ていった。
『え?』
なに今の?何しに来たの??
訳が分からない、とりあえず身体を起こそうとした時だった。
『あ、れ……』
倒れた時に放り出したはずの手を戻そうと顔の横を通過する際に、その異常さに気づいた。
『透けて、る……?』
反対の手を見ても、同じようになっていて、いや、手だけじゃなく、全身透けているようだった。
…………これは、エイリア石による状態異常なのか?
というか、私には透けているように見えたけど、さっきの染岡の反応は…………。
「だから、居なかったんだって!見てみろよ!」
大きなそんな声が聞こえて、三度扉が開かれた。
「そんなわけが…………」
今度は、杉森とシャドウが一緒に染岡と部屋に入ってきた。
「居るじゃないか」
そう言って、シャドウと杉森がジロリと染岡を見た。
「いや、でもさっきは…………」
そう言って染岡はこちらを見る。
ぱちり、と目があって、私は自分の手の方へ視線を動かす。
さっきのが嘘のように透けてない。
『えっと……?』
「お前、入る部屋間違えたんじゃないか?」
「んなわけ……!」
いや、染岡は間違ってない。一瞬だったけどちゃんと部屋に入ってきていた
だから多分あの一瞬、私が消えていたんだろう。
ERROR
限界は既に迎えているのかもしれない。