脅威の侵略者編
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ハーフタイムを終え、後半戦が始まった。
鬼道は佐久間と話して、少しスッキリとしたような顔をしてフィールドを走っている。
後半戦早々にボールを持った塔子ちゃんから洞面が奪い去り、ゴールへとシュートを打った。
「行ったぞ立向居!」
雷門ゴールに立つ立向居へ、綱海が声を張る。
「え?」
ぼんやりとしていたのか、腑抜けた声を上げた顔を上げた立向居の顔面にボールが飛び込んで後ろに倒れた。
顔面ブロックで跳ね返されたボールを拾った綱海が唖然としたあと、ハッとしたように立向居に駆け寄った。
「大丈夫か!?」
「だ、大丈夫です……。ボッーとしてすみませんでした」
頬に右手を添えながら立向居はゆっくりと起き上がる。
「無理すんなよ」
そう声をかけて、綱海はボールを持って駆けて行った。
「……ムゲン・ザ・ハンドに集中しなきゃ」
ゴシゴシと、立向居はユニフォームの袖で目を擦った。
『……あの子……』
ああ、そうだ。ここは確か……。
フィールドでは再び帝国側がボールを奪い、鬼道に繋げ、土門、円堂と共に3人がデスゾーンの回転を開始する。
「「「デスゾーン!!!」」」
3人の蹴りで放たれたシュートはやはり完成しておらず、しゅるしゅると、飛んでいく途中で威力が落ちて行った。
「……ボールが、幾つにも見える……」
眉間にシワを寄せ、じっと前から飛んでくるボールを睨みつけるように立向居は見ていた。
真っ直ぐ伸ばしていた手をなぜだか、止めた立向居の頭にドンとまたボールがぶつかって、彼は再び後ろに倒れた。
「立向居!?」
『ああ、もう!ちょっとタイム!』
「おい、水津」
『いいからストップ!』
サッカーにはタイムはないけど、練習試合だからいいだろうと、ベンチから立ち上がって、叫びながら雷門ゴールの方へ駆け寄る。
上半身を起こして座り込んだ立向居の傍に寄ってしゃがみ込む。
『立向居、頭グラグラしてるでしょ』
「…えっと、ちょっと…?」
呂律は回ってるけど、少しぼんやりしてるな……。
『秋ちゃん氷!』
雷門ベンチに向かって叫んで、それから立向居の目の前に掌を向ける。
『くっきり見える?ぼやけたり、二重に見えたりしてない?』
「…二重、というか、ぼやけて幾つもに……、!」
ぼんやりとした様子で答えている途中で、立向居はハッとしたように顔を上げた。
「ひょっとして……、今のが……」
『何か閃いたところ悪いけど、それ脳震盪起こしてるんだからね』
「梅雨ちゃん、氷持ってきたよ」
『ありがとう』
秋ちゃんから氷嚢を受け取って、立向居の頭に当てる。
『頭痛や耳鳴り、吐き気は?』
「ないです。大丈夫です」
『これは何の試合で対戦相手は?』
「え?えっと、練習試合で、相手は帝国学園です」
うん、記憶障害もなさそうかな。
『よし、立てる?』
数分頭を冷やしたところでそう尋ねる。
「はい、立てます」
そう返事をして立向居が立ち上がる。それと一緒に自分も立ち上がる。
『じゃあ、その場で目を閉じて腰に両手を当てて』
「こう、ですか?」
『いいって言うまでそうしてて』
「はい…?」
大人しく言うことを聞いた立向居は立ったまま両手を腰に当てて目をつぶった。
そこから20秒待つ。
……勝手に目も開かないし、腰から手も離れないし、フラフラとしてる様子もないね。
『よし、おっけー。目開けて。もうぼやけてない?』
「大丈夫です、くっきり見えます」
『うん。じゃあ、ムゲン・ザ・ハンド出来そう?』
「はい!」
力強いハッキリとした返事が返ってきたので、大丈夫だろう。
頑張れと、立向居の背中を軽く叩いて、氷嚢を持ってフィールドから出る。
『止めて悪いね、再開していいよ!』
「おう!」
みんな大人しく待っててくれて良かったよ。
いそいそと帝国ベンチの方へ戻って、再開された試合を見る。
「脳震盪か?」
佐久間の問に、うんと頷く。
『軽度でよかったよ』
ホッと息を吐く。
「こういう出来事も起こるの知ってるんじゃないのか?」
『知ってても、怖いよ』
脳震盪は特に、私は後遺症が残った方だったし。
「そうか。そうだな……」
私のせいで何が変わるかも分かんない状態だから、本当に酷くなくて良かった。
フィールドを見れば、幾度目かのデスゾーンが鬼道達から放たれる。
今度は、先程と違い真っ直ぐ前を向いて構えた立向居がゴール前にいた。
「シュタタタタタン、ドババババーン!」
瞳を瞑りそう叫びながら手を幾度も前に突き出した立向居の背に青い大きな手のひらが4つ程現れた。
が、その横をすり抜けてボールはゴールへと入っていった。
「おい、立向居?」
ピッピッピーと笛が鳴る中、触れれもせずゴールを許した立向居を見て不安そうに綱海が声をかけてた。
「いいんです。このまま練習をつづけさせてください」
ブレない瞳
真っ直ぐ綱海を見てそう言う立向居の視界はすっかり晴れているようだった。