脅威の侵略者編
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鬼道、円堂、土門の3人が帝国ユニフォームに着替えて、すぐに練習試合が始まった。
「そんなとこに立っていないで座ったらどうだ」
アニメと違い、雷門のマネージャー達の隣ではなく帝国ベンチに座った佐久間からそう言われ、彼から2人分ほど距離を開けてベンチに腰掛けた。
正直、気まずい。
「悪いな」
『へ?』
何が、と佐久間の方を見る。
「鬼道はああ言ったが、本当は俺がお前と話がしたくて、こっちに来てもらったんだ」
『……私と?』
「ああ。俺と源田は不動から聞いているんだ」
『あー……』
その名前が出るって事は、いい話じゃなそうだなあ。
「アイツはお前の事を、何でも知ってる宇宙人だと言っていたんだ」
『うん』
「否定しないのか?」
佐久間は怪訝そうな顔をこちらへ向けた。
『いや、まあ、当たらずとも遠からずだし』
「そうか」
そう頷いて佐久間は、フィールドを駆ける鬼道へ視線を移す。
「実は、鬼道から聞いたんだ。お前の正体」
『そっか……』
雷門のみんなには混乱を招くからまだ言わないって言ってたけど……。佐久間には話したのか。少なくとも、鬼道は信頼出来ない相手にベラベラと話したりはしないだろうし、信頼しているんだろうな。
今、フィールドで合図もせずに帝国学園のみんなと連携が繋げれるように。
『ごめんね。もっとちゃんと止められば良かったのに………』
「お前が謝る必要なんかないだろ。コレは、俺たちの自業自得だ。あんな良い奴を、俺は勝手に恨んで、妬んだ」
『それでも、もっといい方法があったかもしれない……』
少なくとも、私が余計なことをしなければ、ここまで佐久間の怪我は酷くなかったはずだ。
「その事も鬼道から聞いたが、お前はお前の未来は分からないんだろう?」
『それは、そうだけど……』
だからこそ、余計なことをするべきではなかった。
「自分の未来が分からないなんて当たり前なんがら、お前が気にすることじゃないだろ」
『いや、でも………』
「はあ、」
わざとらしいでっかいため息を佐久間は吐いた。
「鬼道が言ってたように本当に、他人の怪我を誰より心配するお人好しなんだな。警戒してたのが馬鹿らしくなる……」
ぼそり、と佐久間はそう呟いた。
「お前が異世界人だろうが、未来を知っていようがなんだろうがもういいさ。ただ、鬼道は、こんな俺やお前を信頼してくれている。だから、鬼道や雷門を裏切るような事だけはしないでくれ」
『佐久間………』
「俺が言えた義理じゃないけどな」
『そんな事ないよ。鬼道有人のチームメイトなんだから、心配して当然でしょ』
「チームメイトか……。うん、そうだな」
佐久間は静かに頷いて、未だ成功しないデスゾーンを繰り返す鬼道たちをぼんやりと見つめるのだった。
「なあ、雷門での鬼道ってどんな感じだ?」
『うん?』
「俺は帝国のキャプテンだった鬼道しか知らない」
『うーん、そうねぇ……今の雷門だと、特に居ないと困る存在かも。鬼道ほど直ぐに策を練ったり相手の動きに対応できたりする上に、それを的確に伝える能力がある子が他に居ないし』
相手の動きへの順応能力は、一之瀬、吹雪あたりも早いんだけど、それを他の子に共有して立ち回らせれるかっていうと出来ないし。
まあ作戦に関しては、本来監督がもっと指揮するべきところだとは思うんだけど。
『あとはわりと精神的支柱でもあるんだよね。円堂が折れても、鬼道がいつも通りでいてくれるおかげでどうにかなった場面も結構あったしね』
世宇子中前で円堂が心折れていた時も、陽花戸中での時も、鬼道は冷静だったし。
「そうか」
『まあ、帝国と比べたら手のかかる子が多いし、鬼道自体は大変そう。帝国じゃ佐久間が参謀で、一緒に考えてくれただろうけど、雷門だとそういう子もいないからねぇ』
そう言えば、佐久間はキョトンとした顔でこちらを見た。
「いや、お前がそういう立ち位置だろう?今回デスゾーンをやるのを決めたのもお前と相談したって鬼道が言ってたぞ?」
『……あ、そっか』
言われてみれば確かに、作戦会議だのトレーニングメニューの考案なんかは、一緒にするかも。
『まあ、でも。本来は居ないものだからなあ……』
ぼそりと呟けば、佐久間は怪訝そうな顔をした。
「…………。お前の知っている世界ではどうか知らないが、今は、お前が居て鬼道が助かってるのは事実だと思うぞ」
『なぁに?励まそうとしてくれてる?』
「茶化すなよ。俺は真面目に……」
『うん。わかってるよ。ありがとう』
佐久間は良くも悪くも、真っ直ぐだなぁ。
だからこそ、鬼道に裏切られたと感じて、真・帝国学園に入っちゃったんだろうな。
『でもね、本来私がいようがいまいが、帝国の鬼道の参謀役は、佐久間次郎だからさ。鬼道が今求めてるものの答え、教えれるのはキミだけだよ』
鬼道が聞きたい帝国の事は、例え内容を知っている私が教えたって意味が無い。
帝国学園の生徒で、彼と対峙した佐久間や源田でないと……。
ピッピーと丁度よく前半終了のホイッスルが鳴り響き、佐久間の肩をポンと叩いてベンチから立ち上がるのだった。
親和性が高いのは
圧倒的に佐久間の方だろう。