脅威の侵略者編
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昨日は水津と吹雪が見舞いに来て、今日は豪炎寺がやって来た。
「怪我の具合はどうだ?」
談話室の自販機で缶ジュースを購入し、備え付けのベンチに座って豪炎寺が訪ねてきた。
「ああ……、まだ、ちょっとな」
早く復帰したいが、足の具合は一向に良くならない。
「そうか……」
「そういやぁ、吹雪どうしてる?」
この話題を変えようと吹雪の事を聞けば豪炎寺はキョトンとしたようにこちらを見た。
その目は、昨日会ったんじゃないのか?と言っているようだった。
「…アイツ、完璧って言葉に拘ってたからよ」
そう言えば、豪炎寺は考えるように目線を落として、完璧……と反覆した。
「吹雪は今日も練習に参加はしなかったが、水津の手伝いをしていたな」
「あー、トレーナーとしての仕事か。円堂のポジション変更で大変っつってたもんな」
「ああ。実際今日も、円堂がいつもの癖で手を使おうとするから大変だったな」
「そりゃ、ずっとキーパーやってたんだからすぐには抜けねえよな」
……一緒に部を立ち上げた俺や半田がサボり始めても、円堂だけは1人でもずっとキーパーの練習を続けてたぐらいだしな。
「しかし、水津も大変だよな。監督にトレーナーやれだの、人手が足りないから船首として出ろだの振り回されて。まあ、お前が帰ってきてくれたおかげで、やっとトレーナーとして専念できそうとは言ってたけどよ」
「ああ。水津も脅しの件があるから極力試合には出たく……」
そこまで言ってから豪炎寺は、あっ、と言うような顔をした。
「……脅し?」
豪炎寺が妹の夕香ちゃんを人質に取られて立ち去る事になっていた、と言うのは豪炎寺がチームに帰ってきた日に円堂から聞いた。
だけど、豪炎寺の口ぶりから、今の話は己の話でなく水津の話だった。
「どういう事だよ」
身体をずい、と前のめりに詰め寄るようにすれば、豪炎寺は目を逸らしたあと後ろ首を搔いた。
「あまり他言するなよ。水津の身に何が起こるか分からないからな」
ああ、と頷けば豪炎寺は話始めた。
「……水津も、奈良に向かう前に俺と同じようにエイリア学園の者に接触されたらしい」
「はあ!?」
「詳しい内容はみんなに何かあっては困るから話せない、と言っていたが。まあ水津の事だ。ソレが全てだろうな」
水津は一人暮らしで、記憶喪失だか何だかで家族の事を覚えてねえって話だし、脅されて豪炎寺のように人質にされる家族は居ないはずだ。そんな水津が大事にしてるものは……。
豪炎寺に話したという、みんなに何かある、が水津が脅されている内容……って事か?
そして、みんなっつうのは……俺たちの事だ。
「やっぱり試合に出たくない理由、ちゃんとあったんじゃねえかよ……」
ずっと、嫌そうにしているのは気づいていた。
けどアイツは、みんなが頑張ってるのにっつって……
「くそっ、」
やるせなくて、どん、と膝を拳で叩く。
あん時、鬼道と一緒に必殺技なんか覚えさすんじゃなかった。
そうすりゃあ、監督だって諦めて無理に水津を試合に出さなかったかもしれねえ。真・帝国学園と戦って、不動を煽ったり無茶苦茶することもなかっただろう。
いや、そもそも、俺が豪炎寺くらい強いストライカーだったら、水津が選手になる必要なんて………。
豪炎寺が帰ってからも、ぼんやりと考える。
俺が強けりゃ、と。
強さが欲しい。それなのに今や、ボールを蹴ることすらかなわねえ。
「くそっ……!」
「随分と苛立ってるな、染岡」
後ろから聞き覚えのある声で、そう投げかけられた。
「お前っ……!」
振り返れば、紫色の石の付いた首飾りを下げた空色の髪をしたポニーテールの少年が立っていた。
力が欲しいか?
そう言って少年は、不敵に笑うのだった。