脅威の侵略者編
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「お前のせいじゃない」
まっすぐこちらの目を見て、真剣な、だけどどこか悲愴感のある面持ちで染岡にそう言われ、うん、と頷くことしかできなかった。
染岡は優しいから、「また一緒にサッカーがしたい」と、「待ってろ」と言ってくれたが、次に彼に会う時、どうなっているか知っている私には、『私も』だとか『待ってる』だなんて事は言えなくて、ただ彼の優しさに対して『ありがとう』と返すだけて精一杯だった。
翌日から、雷門中のグラウンドで、練習が始まった。
円堂と立向居のユニフォームが変わり、円堂はリベロとしての特訓を、立向居はキーパーとして、円堂から託されたムゲン・ザ・ハンドの特訓を開始した。
が、どちらもそれぞれ難航していた。
円堂は長年キーパーとしてやっていた癖でつい手が出てしまうし、立向居は、ムゲン・ザ・ハンドの極意、シュタタタタターンドバババババーン、全身を目と耳にしてシュートを見極めることに苦戦していた。
「円堂ぉ〜」
土門が嘆くように円堂の名を叫ぶ。
また、手を使ったようだ。
やれやれと、彼の特訓に付き合っている雷門中2年生達がため息を吐いている。
『もういっその事縛っちゃえば?』
「なるほど、どうしても手を使ってしまうのなら物理的に使えなくしてしまえばいいわけか」
頷く豪炎寺の横にいる鬼道を見る。
「それは俺も考えたが、手を縛るとなると転んだ時に危険だろう」
『あー、それはそう』
手が使えないとなると、頭から転んで大事になる。
『ヘルメット被せる?』
「ヘディング練習するんだぞ?邪魔になるだろ」
『だよねー』
ダイヤモンドダストとの戦いで見せた、額から拳が飛び出たヘディング技をものにしたいんだもんなぁ。だからこそシュートを受けた反動で転ぶ可能性も考えないと。
『せめて何かクッションにでもなれば…』
「イナズマ落としを練習してた時みたいにマット敷くか?」
豪炎寺の言葉に、懐かしいと思いながら体育館の方を見る。
『…建築中の今、マットないよね』
ジェミニストームに学校を破壊されてしまっているので、校舎も体育館も絶賛建築中だ。
うーん、と悩んでいると、そうだ!と秋ちゃんが手を叩いた。
「イナズマ落としで思いだしたんだけど……、ちょっとまってて!」
そう言って秋ちゃんは、一之瀬と土門を連れて何処かに消えた後、数分して戻ってきた。
秋ちゃんの後から戻ってきた一之瀬と土門は、コロコロとタイヤを転がしていた。
『なるほど。確かにイナズマ落としの練習に使ったね』
壁山のジャンプ力を上げる特訓の時、円堂も一緒に身体をタイヤの中に入れて跳ぶ練習をしていた。
「しかし、よく残ってたな」
「ええ。部室のもので大丈夫そうなものは基地に運び出したって前に瞳子監督が言ってたでしょ?」
私がまとめた選手データやトレーニング表ももそこから見つけたって言ってたもんな。
『あー、言ってた言ってた。瓦礫と一緒に廃棄されてなくてよかったよ』
「これなら、弾力も厚みもあるから転んでもクッションになるし、しっかり手も腕も拘束もできる」
ぽんぽん、とタイヤの表面を叩きながら、一之瀬がさすが秋!と秋ちゃんを褒めたたえている。
「てな、訳で円堂」
ぽん、と土門が円堂の肩を叩く。
「なんでこうなるんだー!」
嘆く円堂の身体にタイヤを2つ通して、肩からぶら下げるようにロープで固定する。
「これなら頭にパワーを集中しやすくなるだろう」
「ええーっ」
「これで行くぞ」
有無を言わさぬ鬼コーチ、じゃなかった鬼道の言葉に、円堂は渋々、わかったよ、と頷いて練習を再開するのだった。
『はい、お疲れ様。みんな水分補給しっかりね』
練習を終えドリンクとタオルをみんなに配り歩く。
「水津」
『なに?』
声をかけてきた豪炎寺の方を見る。彼には先程春奈ちゃんがタオルもドリンクと配っていたはずだが…?
「この後、染岡の見舞いに行くんだが、水津も来ないか?」
『はい?』
なんで、と首を傾げる。
昨日、吹雪と行ったの豪炎寺は知ってるでしょうよ。
訳が分からず首を傾げていれば、豪炎寺はフッと小さく笑った。
「お前が来れば喜ぶだろうからな」
『いや、あの性格だから多少ツンケンはするだろうけど、誰が行っても喜ぶと思うよ?』
「……少し可哀想になってきたな」
『なにが?』
豪炎寺って時々会話が噛み合わないんだよね。
「いや、とにかく一緒に行かないか?」
『うーん、やめとく。私が行くと気を使わせるし』
そう言えば、ほう?と呟いて、豪炎寺が眉を上げた。
『染岡優しいから、私が怪我の心配すると大丈夫だって言って辛そうな顔するし』
「それは……、」
優しいからなのか。強がりだから、でなく。
思った言葉を豪炎寺は飲み込み、少し口元を緩めた。
友を思う
自分が居ぬ間に2人の関係性が少し変わっていたようだ。