脅威の侵略者編
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「染岡くんも水津さんと話したかっただろうに、僕なんかに付き合わせちゃってごめんね」
「はあ!?」
「染岡くん、声大きいよ」
もう屋上ではなく院内であることを思い出して、慌てて口を閉じる。
「お前が変なこと言うからだろ!」
「そんなに変なこと言ったかな?」
「水津が、とか………」
いや、吹雪は別に変なことは言ってない。 くそっ。アイツらが昨日変なこと言うから………。
「いや、そもそもお前も、僕なんかとか言うなよな。俺は……、その、お前の顔も見れてよかったし、な」
こういう気恥しいセリフは慣れず、少しそっぽを向いた。
「ふふっ、そっか」
吹雪は、来た時よりか元気を取り戻したのか小さく笑っていた。
「僕、先に外で待ってるって、水津さんに伝えておいて」
「おー、わかった。じゃあ、またな」
「うん」
ロビーへ行く吹雪と別れて、そのまま廊下を進んで半田達の大部屋へ向かいノックもせずに扉を開けた。
「でさー、ここが難しくて……」
『あー、わかる。ここ詰みポイントよねぇ』
頭だけ中に突っ込んで見れば、水津は、半田たちとゲームをしてる様子だった。
「おい、水津ー」
『あ、染岡。おかえりー』
そう言って顔あげた水津が、ニコッと笑った。
「お、おう………」
「あれ?彼は?」
マックスが後ろの方を見ながら首を傾げた。
「ああ、吹雪は先に外に出てるってよ」
『あ、ホント?って、もうこんな時間じゃん!』
窓の方を見た水津は、外が薄暗くなっているのに気がついて慌てて立ち上がった。
『長居してごめんね。みんな、看護師さんの言うこと聞いて、ちゃんとご飯も食べて、リハビリも気をつけてやるんだよ』
「母ちゃんかよ」
半田のツッコミを聞きながら水津はケラケラと笑った後、ぱぱっと荷物をまとめて扉の方へ歩いていった。
『じゃあね、みんな』
「おー、またな水津」
「水津先輩、バイバイ~」
バイバイと手を振った1年生2人に手を振り返した水津は、大部屋の扉を閉めながら、ちょっといい?と俺に声をかけてきた。
「え、お、おう」
『談話室行こう』
近づいて小声で言われ、その距離の近さに少しドキリとしたら、水津は直ぐに離れて、談話室の方へのんびり歩いていく。
俺は、深く息を吐いた後、松葉杖を使ってその後を追った。
『で、吹雪どうだった?』
談話室の長椅子に腰掛けるなり水津はそう聞いてきた。
「……あー、お前から聞いてた通りだった。その、上手く励ませたかは、わかんねえけど……」
『そっか。でも、きっと伝わってると思うし、彼の力になると思う』
そう言って水津は、やんわりと笑った。
「あ……」
ああ、マックスたちが言ってた通りだ。
俺は多分、水津のことが好きなんだろうな。人の事を思って、笑ってるこいつの事が好きだと思う。
自覚したら、顔に熱が集まるのが分かって、水津から目を逸らす。
「お、お前は……」
『ん?』
「……お前は、大丈夫か?人のことばっか気にしてっけどよ」
『私?私は………、うん。大丈夫よ。豪炎寺も帰ってきたし、アフロディも仲間になったし?イプシロン戦の時は人手不足で出てたけど、これからはトレーナーとしての仕事に専念出来そうだし。まあ、人増えたり、円堂がリベロになるから新規のトレーニングメニュー考えなくちゃいけなかったりで、大変っちゃ大変だなんだけどねぇ』
妙な間の後、ひとり頷いた水津はマシンガンのようにそう早口で喋った。
水津のいつもの誤魔化す癖だな、とは思ったが、それよりも先に内容が気になってしまった。
「待て待て、豪炎寺が帰ってきたのは円堂から聞いてたけどよ、アフロディ!?それに円堂がリベロって……」
『いやぁ、びっくりだよね』
「びっくりどころじゃねーよ!ッ!?」
思わず、怪我のことを忘れて立ち上がって、膝に痛みが走り、腰から落ちるように椅子に戻った。
『大丈夫!?』
水津が立ち上がって、心配そうな顔をして覗き込んできた。
ああ、くそっ。こいつにこんな顔させたくなかったのに。
「っ、なんともねえよ」
『けど……』
「ちょっと痛んだだけだって。んな顔すんなよ」
『……やっぱり、相当悪いんだね。ごめん』
眉を下げ、そう謝ってきた水津に少しイラッとした。
「お前、また自分のせいとか思ってねえだろうな」
『いや、だって……』
「だってじゃねえよ。前にも言ったろ、お前のせいじゃないって」
『うん………』
水津は頷いたものの、納得してない、という顔をしている。
……豪炎寺くらい強けりゃ、不動の蹴りも上手く躱して、あのボールを蹴り返してもこんな怪我負わなくて、水津にこんな顔させることもなかったんだろうか。
「俺は……、お前ともまたサッカーしたいと思ってる」
『染岡……』
「こんな怪我すぐ治してやっからよ。だから……んな顔してねえで、待ってろよ」
頼むから笑っててくれ
ありがとう、そう言って水津は少しだけ表情を和らげた。
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裏話
掠っただけとか言ってたけど、本当は不動が水津の足を潰そうとしたのを染岡が代わりに全部受けてたというね。