フットボールフロンティア編
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「さ、水津さん理事長室に行くわよ」
そう言って、HR終わりに夏未ちゃんが声を掛けてくる。
『あっ、うん、ちょっと待って!』
いそいそとカバンに教科書とかを詰めて立ち上がれば、隣の席の染岡が、はあ?と呟いた。
「お前今日も部活だぞ。何、雷門の秘書やってんだよ」
『いや秘書て』
「あら、少しの間借りるだけよ。そんなに睨まないでちょうだい」
「生徒会の仕事は生徒会の奴らでやれよ。サッカー部を使うなよ」
睨みを利かせる染岡に対し、こめかみがひくりと動いた夏未ちゃんを見て、あっ、これはやばいと察する。
『部活はちょっと遅れるって秋ちゃんにも円堂にも伝えてあるよ。それに今回はサッカー部の事でだから、ね』
どうどうと染岡を宥めに入れば、彼はそっぽを向いて不貞腐れたようにそうかよと呟いた。
それに対し夏未ちゃんは勝ち誇ったようにふふんと笑って、さあ行きましょうと踵を返し長い髪を靡かせた。
夏未ちゃんに着いて行き、理事長室に入って、座っていてと言われたので大人しくソファに腰掛ける。
相変わらずここのソファは座り心地が良い。
「練習の様子はどう?」
そう声をかけながら夏未ちゃんは本棚の横の壁に埋め込まれた金庫の傍に寄る。
『みんな真面目に取り組んでるよ。けど、対野生中の必殺技を考えるのは上手くいってないみたい』
「そう」
昨日も、栗松と少林寺がジャンピングサンダーなる技を考案して失敗して、宍戸がそのアフロにボールを隠して走るシャドーヘアーなる技を考案して失敗し、壁山が壁山スピンなる技を考案して失敗した。栗松と少林寺の技はともかくとして、後の2人はそもそも高さ勝負って事を忘れてる気がする。
『まあ、そういう訳で昨日メールした件になるんだけど』
「なるほどね。40年前に雷門中にあった伝説のサッカーチーム、イナズマイレブンの資料。お父様に聞いたところ1つ残っているのもがあって保管してあるそうよ」
そう言いながら夏未ちゃんは、ぐるぐると金庫のダイヤルを回して、その取ってを引いた。
「少し待っていてちょうだい」
『はーい』
その他の貴重品も入ってるだろうし、すぐに分かるかな?私は一応アニメで見てるからどんな物か分かっているが...。まあ、理事長室の金庫の中勝手に覗くわけにも行かないし、大人しく自身のカバンからルーズリーフをペンを取り出して書き物を始める。
一応みんなの筋トレのメニューを書いているのだが、中々楽しい。昨日の感じでは円堂、豪炎寺、染岡、風丸、松野、土門、少林寺辺りはまだ余裕そうだったので回数を増やしてもいいかもしれない。余談だが、円堂はGKだし他より腕周りのトレーニングを多目にしてあるし、先を見越して豪炎寺には脚のトレーニング、壁山には背筋のトレーニングを多目に設定してある。
「これかしら...?」
その声に夏未ちゃんの方を見れば、1冊のノートを手に取ってパラパラと捲って見て、首を傾げた。
『あった?』
「ええ...、恐らく?」
ずいぶんと歯切れ悪くそう言いながら夏未ちゃんは金庫を締め直して、こちらに1冊のノートを持ってやってきた。
「これよ」
はい、と渡されたノートはずいぶんと年季の入った物である。
『これが...』
マジックでぐちゃぐちゃに何かが書かれた表紙を撫でる。
恐らく秘伝書とでも書いてあるのだろう。
「でもこれであってるのかしら。お父様の言う秘伝書らしきものはこれぐらいしかないのだけれど、いったいなんて書いてあるか分からないのよね」
『見てもいい?』
「どうぞ」
ノートの表紙を捲ってみる。
次のページにある罫線を無視したその殴り書きとも言えないミミズがはったようなものを見て思わず、あーと零す。
『これは読めないわ』
「そうでしょう。正直これではなんの役にも立たないのではなくて?」
『そうだねぇ』
このまるで暗号のような文字を解読出来ないことには、持っていたってしょうがない。
「一応、これは円堂くんのおじい様が書かれた物らしいから、孫である彼に渡すのが適当でしょうね」
というわけで、と夏未ちゃんは話を続ける。
「これ、円堂くんに渡しておいてちょうだいね」
『夏未ちゃんも一緒に渡しに行かない?』
「嫌よ」
『なんで?』
「あの部室臭いもの」
『ぶっ、』
夏未ちゃんのその言葉に、吹き出して、ひいひいと腹を抱えて笑う。
そうね。お嬢様には男子運動部の部室は臭いわね。
それでも最近は春奈ちゃんという女の子も増えたしと、秋ちゃんと2人で消臭剤買って置いたりスプレーしたりしていくらかマシになっているのだけれど。
「いつまで笑ってるのよ!」
『いや、ごめんて。最近は消臭してだいぶマシになったから、もし気が向いたら遊びに来てよ』
「...貴女がそこまで言うなら、そのうち行っても構わないけれど」
『うんうん、そのうちね。じゃあ、これは私が持って行くね』
「ええ、よろしくね」
それじゃあ失礼しますと理事長室を後にして、サッカー部の部室へ向かった。
『遅くなりましたー!』
ガラガラと部室の扉を開けると、1人だけ、室内でスクワットをやってる豪炎寺が居た。与えたトレーニングメニューやってんのね。えらいえらい。
「水津か。遅かったな」
『うん、ちょっとね。それより、他の子達は?』
「昨日、円堂と風丸とラーメンを食べに行ったんだが」
『うん?』
豪炎寺はスクワットを繰り返しやりながら話を続ける。
「その、雷雷軒の店主が、円堂の爺さんが監督やってた時の秘伝書があると...」
『うん』
「それを探しに、全員、理事長室へ」
『あー...』
なるほど、ちょうど私と入れ替わりのタイミングで向かったのか。あの大人数なら部室に来るまでにすれ違いそうなものなのに、出会わなかったということは意外としっかり隠密行動してあのシーンまで向かってたのか。
『みんなが探しに行ってるの多分コレだと思うんだよね』
そっと、手に持ったノートを掲げて見せると、豪炎寺はスクワットの動きをピタリと止めた。
「ソレが?」
『たぶんね。全く何書いてあるかわかんないんだけどね』
見てみる?と手渡してみれば、豪炎寺はノートをパラパラと捲っては渋い顔をした。
「これは...」
『某人間...とも言い難いんだけど、多分コレってなんかを図で表してるように見えるし、恐らく技のやり方が書いてあるんだろうけど...』
図も図で分かりにくいが、何よりも大事なやり方、説明が書いてある文字がぐちゃぐちゃで読めない。
「...。わからないな」
ぱたん、とノートを閉じて豪炎寺が黙って戻してきたので受け取る。
『ね、まあ、一応円堂のお爺さんのものらしいから円堂に返却しといてって夏未ちゃんに言われてね』
「そうか」
そう言って豪炎寺はふたたびスクワットを再開する。
『豪炎寺、もっと肩幅より大きく股開いて、それでスクワットしたほうがいいかも』
「こうか?」
姿勢をただし股を広げて、豪炎寺は膝を曲げて腰を下ろす。
『うんうん。ワイドスクワットのほうが内ももに効くよ』
「詳しいな。前の学校のサッカー部でやっていたのか?」
『うん?いや、前の...学校は1学年1クラスしかないし、1クラス20名くらいしか居ないクソ田舎だったからさ、男子サッカー部すらなかったんだよねぇ』
何せサッカー部には最低でも11人はいる。人数の少ない田舎の学校の運動部なんて野球部、バスケ部、卓球部ぐらいのものだ。
『だからずっと1人でフリスタやってたんだよ』
「そうか」
だからこそ皆にもうサッカー部だろって言ってもらえて嬉しかったなぁ。まあ最初から円堂だけは入部入部と声を掛けてくれていたが、人数合わせの為だと思っていたからずっと断っていたのだけれど。それでも、人数が足りた状況でもああやって一緒にやろうと誘ってくれるとは思っていなくてとても嬉しかった。
『筋トレの仕方は、隣の家の体育大学行ってたお兄さんに習ったんだよ』
「へぇ。アクロバットもか?」
『そうそう!』
そのお兄さんは私にフリスタの動画見せてくれたお兄さんなんだけど、彼自体はサッカーはやってなくて、体操やってたからそれで飛んだり跳ねたりを教えて貰った。
『筋肉は一日にしてならず、らしいからジャンプ力上げるなら地道に筋トレするしかないね』
「だが、数日の付け焼き刃では恐らく野生中には適わないだろうな...」
『だよね』
試合が1年後とか言うなら話は別だが後数日で急にみんながムキムキになるわけないし。
『やっぱり新必殺技は必要だよね』
手に持ったノートを掲げて見てみる。
うん、やはり表紙に書かれてる事もさっぱり読めん!
「...しょ...ひで...しょ...、ひでんしょ、秘伝書ー!!」
外からだんだんと聞こえてくる声が大きくなり、バンッと部室の扉が開かれた。
どうやら夏未ちゃんから私が預かっていると聞いて戻ってきたようだ。
「水津!秘伝書!」
全速力で走って戻ってきたのか、円堂の後ろで幾人かはゼェゼェと呼吸を繰り返している。
『はいはい、これね』
「じいちゃんの秘伝書!!」
手渡すと円堂は直ぐにパラパラとページを捲って、その後ろから興味深そうにみんなが覗いて見ている。
「暗号で書かれてるのか?」
「外国の文字っすかね?」
染岡と壁山の疑問に風丸が、いや、と声を上げた。
「おっそろしく汚い字なんだ」
流石幼なじみ。恐らく円堂が持ってる特訓ノートも見た事あるんだろうなぁ。
「汚いんですか...」
『もはやあれは字じゃなくない?』
「誰も読めないんじゃ...」
「使えねえよ」
円堂!!とサッカー部のオカン2人、風丸と染岡が声を揃えで1人でパラパラとノートを読み続ける彼を怒鳴りつけた。
「すっげぇ!ゴットハンドの極意だって!!」
読めるのかよ!!サッカー部総出でツッコミが入った。
秘伝書ノート
その中に書かれたイナズマ落とし。説明がぴょーんとかバーンとかそんなのばっかりなのだが、大丈夫だろうか。