脅威の侵略者編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
新たな仲間綱海条介と、帰ってきた豪炎寺修也をチームに加えた一行は、フェリーに乗って沖縄から旅立った。
鹿児島に到着したフェリーを降りて、そこからはキャラバンで雷門中のある東京までを目指す。
14時間の長時間移動となるため、途中停車し、瞳子さんはみんなに練習時間を与えた。
『〜で、みんなの様子を見てコンディションの悪そうな子はココにチェック入れて……。で、後はメニューをこなせてるかの確認を………』
私は、みんなが練習を始めた横で、吹雪にやってもらいたい仕事の内容を説明する。
『分かった?』
一通り説明をして吹雪にみんなのトレーニングメニューを書いた紙を挟んだバインダーを渡せば、彼はコクリと小さく頷いた。
みんながボールを蹴る姿を見るのは辛いかもしれないから、まずは走り込みや筋トレなどをみんながちゃんとしてるかのチェックを任せる事にした。
『あ、特に豪炎寺と綱海は良く見ててね。昨日急いで作ったトレーニングメニューだから、余裕そうでもキツそうでも改善しないといけないし』
「うん。分かった」
よし、と頷いて吹雪の頭をぽんぽんと撫でる。
『私は中で、昨日の試合のビデオチェックしてるから困ったことがあったら聞きに来てね』
そう言って仕事を吹雪に任せてキャラバンに乗り込んだ。
春奈ちゃんが録画しててくれたイプシロンとの試合を見るのにノートPCを用意してながら、ふと、思い出して携帯を手に取る。
ぽちぽちと文字を打って、メッセージを送信する。それから携帯を隣に置いて録画チェックを始めた。
『……うーん、今回は土門がかなり大変そうだったからなぁ』
DFの風丸と栗松が抜けて初めての試合だったし、吹雪をDFに入れてたけどあの調子だったし。
綱海が入ってくれて運動能力が高いといってもサッカー初心者だし、立向居も久々のMFでフォロー必要だったし。いや、土門まじで良く動いてたわ。いつもみたいにマネージャー達にふざけてウィンクする暇もなかったんじゃない?
今のチーム戦力だと、土門が前目になるから……ゴール前を壁山と木暮にしっかり守って貰う必要になるよなぁ。
この2人の練習メニューも見直すか……。
『うーん、と………』
バインダーに挟んだ各選手別のトレーニング表をペラペラと捲っていると、傍に置いた携帯が着信音を鳴らした。表記を見れば染岡の文字。
『はい、もしもし』
急いで通話ボタンを押して電話に出た。
《あ、おー、今大丈夫か?》
聞き慣れた低い声が受話器越しに聞こえる。
『うん。ってかメールで良かったのに。わざわざ移動してくれたの?』
病院内じゃ、通話できる所は限られてるだろうに。
《いや、まあ、ずっと病室も飽きるし気分転換みたいなもんだ》
足を怪我してるんだから移動大変だろうに……。
『そっか。病室が飽きるのは分かるわぁ』
《だから、お前アイツらにゲームやら漫画やら見舞いに持ってったんだろ?》
『そうそう。みんなの部屋と行き来あるんだ?』
《おう。俺も半田たちと一緒にゲームやってるわ》
『そっか。役立ってるんならよかった』
みんなの怪我は今どうなんだろうな。
相当酷かったもんなぁ……。
《で、メールにあった相談ってなんだ?》
『えーと……吹雪の事なんだけどさ』
《あー、吹雪か。俺もイプシロン戦見てたけどよぉ……》
試合を見てくれてたんなら話は早い。
『実はアレから吹雪、ボール蹴れなくなっちゃったんだよ……』
《蹴れなくって……》
『ボールが怖いって』
そう伝えたら、染岡は言葉をつまらせ黙った。
『こればっかりは本人の心の問題だし、相談されても染岡も困るだろうけど……』
《まあ、本人の問題っちゃそうだけどよ、チームの、仲間の問題だろ。別に困りゃしねぇよ》
ああ。染岡のこういうところ好きだな。
ぶっきらぼうだけど、優しい。
《むしろ、今までこういう問題を1人で解決しようとしてたお前が相談してくれたのは、なんつーか、その……うれしい、し……》
終わりの方が段々と声が小さくなっていった事に、少し笑う。相変わらずの照れ屋だなぁ。
『ふふ、そっか。染岡が困らないんなら、明日か明後日かになると思うんだけど、みんなのお見舞い行くのに吹雪連れて行ってもいい?多分、吹雪が1番気心知れてるの染岡だから、話でもすれば少しは気分転換になるかもしれないし』
《おー、気心云々はわかんねぇけど、まあ俺もアイツの様子気になるし連れてこいよ。つうか、こっち帰って来てんのか?》
『東京に向かってる途中よ。エイリア学園の予告もないし、とりあえず雷門に戻ろうってなって』
まあ雷門に帰ったら先に、アイツらが待ってるはずだから、ハッキリいつお見舞いに行くって言えないんだけど……。
《なるほどな。気をつけて帰ってこいよ》
『うん。あ、そうだ。みんなにお見舞いに持ってきて欲しいものあるか聞いてあったらメール送ってよ』
《ああ、分かった》
『じゃあ切るね』
《あ、おー、またな》
『うん』
バイバイ、と伝えて通話を切る。
よし、これで後は吹雪を連れて行けば、この辺のイベントは回収出来るはず。
「今の電話染岡くん?」
『ひゃ、』
急に声をかけられ驚いて手から携帯が滑り落ちて、膝の上に落ちた。
『いたっ』
「あら、ごめんなさい。驚かせるつもりじゃなかったのよ」
いつの間にやら夏未ちゃんがキャラバンの中にいた。
『あーいや、大丈夫。ただ電話してて入ってきてたの気づかなかったから』
「吹雪くんの事、相談していたの?」
夏未ちゃん、結構前から聞いてたのかな?
『そうだよ。吹雪が1番仲良いのって多分染岡だし、男の子同士の方が話もしやすいだろうからね』
そう言えば夏未ちゃんは、そうね、と頷いた。
「貴女、今日、吹雪くんに仕事を任せていたでしょう?」
『うん?』
「アレは……彼がボールを蹴れないままチームに居ることを引け目に感じさせないためかしら?」
夏未ちゃんの言葉に、うん、と首を縦に振る。
「吹雪くんの事心配なのね」
『そりゃあ、まあ、ね……』
心配なのも確かだが、1番は話がちゃんと進むようにフォローしようとしてるだけだ。
「水津さん。人の心配の前に、自分の心配もしなさい」
どういうことと夏未ちゃんの顔を見れば、はあ、と小さくため息をつかれた。
「貴女、最近寝てないでしょう?」
『寝てるよ?』
「音無さんと鬼道くんから夜テントを抜け出してるって聞いてるわよ。それに、隈。コンシーラーで隠してるでしょう」
『えーと、』
図星だ。えへへ、と困ったように笑って見せる。
「もう。笑い事ではありません!」
夏未ちゃんは怒ったように、ムスッとしてる。
「私は心配してるんですからね!」
『夏未ちゃん……そっか。心配してくれてるんだ』
なんだが嬉しくて彼女を見れば、あっ、という顔をした後、夏未ちゃんは頬を紅く染めた。
「と、当然でしょう。と、友達なんですから……!」
そう言って夏未ちゃんは、ぷい、と顔を背けた。
『当然、か……』
本来ここにはいない人間なんだから、当然なんかじゃないのに。
「そうよ」
『そっか、友達、だもんね』
「え、ええ。…その、友達、ですから、貴女も何かあるのなら相談に乗って上げてもよろしくてよ」
夏未ちゃんの不器用な言い方に、少し笑ってしまう。
さっきの彼と同じくツンデレなんだよなぁ。実に可愛らしい。
『そっか。じゃあ相談っていうか、お願いがあるんだけど』
「なにかしら!」
夏未ちゃんは、ぱあっと嬉しそうな顔をしてこちらを向いた。
頼られるの嬉しいんだなぁ。
『ちょっと膝貸して欲しいなって』
「膝?」
『うん。最近寝てないって怒られたから、寝ようかなって思うんだけど、枕が欲しいじゃない?だから夏未ちゃんが膝枕してくれないかなって』
「な、なに馬鹿な事言ってるのよ!?」
夏未ちゃんは顔を真っ赤にして怒っている。
『ふふ、ごめん。冗談よ』
「も、もう!あなたって人は……!」
ごめんね素直じゃなくて
相談して、真実を話て拒絶されるのが怖い。友達、だから。