脅威の侵略者編
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深夜、いつものように女子用のテントから抜け出す。
リフティングボールを片手に夜空の下を歩く。
眠れないし、キャラバンから少し離れた場所でリフティング練習でもしようと思っていた。
『……吹雪?』
後ろ姿だが先に見えるのは銀の髪に、マフラー。どう見ても吹雪だ。
彼はぼんやりとした様子で沖縄の空の下を歩いている。
『吹雪!』
駆けて後ろから彼の腕を掴む。
「…!……えっ、水津さん?」
彼は驚いたような顔をしてこちらを見つめた。
「こんな時間にどうしたの?」
『どうしたのって、それこっちのセリフなんだけど……』
そう言えば、吹雪は困ったように笑った。
「あー、そっか。僕は、眠れないから散歩でもしようかなって……」
『……そんな荷物持って?』
彼の肩からぶら下がっているスポーツバッグに視線を向ければ、吹雪は小さく息を飲んだ。
眠れなくて散歩するのにそんな荷物いるだろうか?せいぜい財布と携帯くらいじゃない?
ああ、嫌な予感がする。
「…えっと、その……」
『……もしかして、キャラバンから降りる気?』
そう聞けば、吹雪の目が一瞬大きく開かれて、その後彼はまた困ったように笑った。
「うん……僕、完全にお荷物になっちゃったから……」
そう言って吹雪は下を向く。
日中、豪炎寺に誘われ練習に混じった吹雪は、鬼道からのパスに怯え動けなかった。
ボールが怖くなったのだ。
だけど、彼がチームを抜けるなんて事、本来の話ではなかったはずだ。
「染岡くんの代わりに頑張るって言ったのに、ボールが怖い、だなんて、ストライカーどころかディフェンダーとしても、役立たずになっちゃったね……」
『そんなことは…!』
「だから、僕、行くね」
そう言って吹雪は掴んでいた手を振りほどいた。
『待って!』
ここで吹雪が居なくなったら大判狂いだ。
『行かないで…っ、』
「水津さん……」
ああ、なんて、
私はなんて酷いやつなんだろうか。
『お願いだから行かないで』
吹雪の為に引き止めてるんじゃない。
「だけど、僕は……ここに居ちゃ…」
『みんなも吹雪が必要だって言ってたじゃない』
「それは……、みんなは優しいから」
そう言って吹雪は困ったように笑う。
『漬け込めばいいじゃん、みんなの優しさに』
「え?」
『ボールが蹴れなくなっただけじゃ出てけなんて言わないよ。あの子たちはこんな私でもチームに置いてくれてるんだから』
吹雪は不思議そうな顔してこちらを見ている。
「こんな…?」
秘密だらけの私を、嘘つきな私を、本気でサッカーしない私を、それでも追い出さないで居てくれるんだから。
『あのさ。何も出来ないでチームにいることが苦痛なら、私の仕事を手伝ってよ』
「……、水津さんの仕事って……」
……!食いついた!良かった……。
『トレーナーとしての仕事だよ』
「でも僕、そういう知識は……」
『大丈夫大丈夫。私だって瞳子さんに渡された本で勉強しながらだよ?それに吹雪はサッカー以外のスポーツもやってたでしょ?』
「う、うん」
『それで色んな観点から新しい練習法思いつくかもしれないし!スピードアップの練習にスノーボードやったみたいにね?』
「それなら、確かに、僕にも……。けど……」
『ボールを蹴る人だけがチームじゃないよ。マネージャーだってそうだし、監督もだし、古株さんだって彼が居なきゃ移動も出来ないし、ボールを蹴らなくてもイナズマキャラバンの一員でしょう?』
「……うん」
『一緒にチームにいて欲しい。吹雪まで居なくなったら……』
「……水津さん………。僕、まだ、居てもいいのかな……」
『むしろ居なきゃ困るよ』
だって、話が繋がらなくなっちゃうし。
『帰ろう、吹雪』
本気に酷いやつだ。
手を差し出せば、吹雪は恐る恐るその手を掴んだ。
みんなの為に出来ること
本当は自分の為なのにさ。