脅威の侵略者編
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吹雪が何度もエターナルブリザードを打つが、デザームはドリルスマッシャーとワームホールですべて止めてしまう。
「俺は完璧にならなきゃいけないんだッ!」
吹雪はそう叫び、もう一度エターナルブリザードを打った。
どんで来る必殺シュートを前にデザームはゆっくりと左手を前に出して、そして、そのシュートを必殺技を使わずに止めてしまった。
あっ、とみんなが驚き息を飲むのがわかる。
「なんとデザーム!あのエターナルブリザードを軽々と片手でキャッチしてしまったあ!」
「そんなっ、馬鹿な……」
「楽しみにしていたのにこの程度とはな」
つまらん、と言うようにデザームは片手に持っていたボールを下に投げ捨てた。
「お前はもう必要ない」
「は、」
デザームの言葉に吹雪が停止した。
そして、そのまま、尻もちをつくように吹雪は後ろに倒れた。
必要ない、か……。今の彼にはそうとうキツい言葉だ。
「吹雪!!」
円堂が叫び走り出し、他のチームメイト達も彼の傍に駆け寄る。
「吹雪!吹雪、吹雪!!」
円堂が何度も彼の名を呼びかける。
「監督!」
秋ちゃんが呼びかけるが、瞳子さんは放心したようにフィールドを見つめていて気づかない。
「監督!!」
もう一度秋ちゃんが力強く言えば、ハッとしたように彼女は振り返った。
「これ以上無理をさせても吹雪くんがまた……!」
『監督。選手交代を』
普段は呼ばない呼び方でそう言えば、動揺した様子だった瞳子さんは静かに頷き、表情を引き締めたあとフィールドに向き直った。
「選手交代!目金くん、吹雪くんと代わりなさい」
「えっ、僕!?あ、はいっ!」
自分だと思っていなかったのか慌てたようなに返事をして目金は立ち上がる。
『みんなベンチ空けて』
円堂と鬼道が吹雪に肩を貸して、ベンチまで連れてきてくれた2人が、彼を座らせやすいように席を空ける。
ゆっくりと2人が吹雪をベンチに腰掛けさせ、肩から彼の腕を下ろす。
「吹雪、ここで見ていてくれ。俺たちみんなでお前の分も戦い抜く!」
そう円堂が吹雪に伝えるが、放心状態の彼は何も言わず俯いたままだ。
『目金。やれば出来るの知ってるから。頼むよ』
ぽん、と彼の背を押す。
「は、はい」
緊張した面持ちで目金は頷いて、フィールドへと駆けていく。
目金はイプシロンと戦うのは今回が初めてのはず。
円堂と鬼道もフィールドに戻って試合が再開する。
皆、吹雪の分まで頑張ると気合いを入れるが、その思いは今の彼には届いていない。
フィールドに背を向け、ベンチに座る彼の目の前にしゃがみこむ。
『吹雪』
呼びかけるが、やはり反応はない。
「先輩どうしたら……」
春奈ちゃんはタオルを片手に、秋ちゃんはドリンクボトルを片手に持っている。渡そうとしたけど反応がなくて困っているのだろう。
『こればかりは心の問題だからどうしようもないわ。私たちが今出来るのは、みんなを応援する事よ』
吹雪の隣に座り、彼の背中に手を添える。
『吹雪、みんな君と一緒に戦ってるんだよ。ちゃんと試合見て』
「………………」
やはり、無反応。
「水津さん」
フィールドを険しい顔をしながら見つめる瞳子さんが名を呼んできた。
「アップをしておいて」
使う気はないと宣言していたが、フィールドの現状を見てそう言った。
DFもFWも出来る吹雪の抜けた穴が大きすぎるのだ。どうしても守備力も攻撃力も同時に下がってしまう。
攻めるにはボールを取らなきないけないから守備を固める事になるが、ボールを取っても吹雪ほどのスピードと突破力がある選手がいないから攻めることに転じれず結局防戦一方になる。
前なら吹雪が抜けても、スピードのある風丸がその分のフォローが出来ただろうが、その彼も今や居ない。
じゃあ吹雪や風丸の代わりに、中間突破できる者は全く居ないのかと言えば、鬼道が出来るのだろうが……しかし彼は立向居に綱海、新しく入ったメンバー達との連携を繋げているので、その彼がそっちに回るとチーム全体が崩れる可能性がある。
今は円堂が正義の鉄拳で止めてくれているからどうにかなっているわけだが、このままだと…………。
『分かりましたけど、ポジションは?』
「……そうね。今は吹雪くんが抜けた所と、チーム慣れしていない立向居くんのフォローで土門くんと鬼道くんが多く動く事で疲れが見えてるわ」
特に土門はトラップミスなどが増えている。
そもそも前日の鬼道との作戦会議では立向居のフォローは私と鬼道と土門の3人でそれぞれの守備範囲を少し広める形で行う予定にしてたから、私が入らないことで全部ぶち壊しになっている。目金じゃ人のカバーまでは難しいだろうし……。
「FWをもう1人と言いたいところだけど、そうするとDFやMFの守備を削ることになるわ。だから…………」
フィールドではイプシロンのガイアブレイクを円堂の正義の鉄拳が止めた。
そのタイミングで、審判の古株さんが笛を鳴らした。
そして私は5と17と書かれた選手交代ボードを掲げる。
「5番……」
あっ、と言うような顔を立向居がする。
本来なら彼が居るはずの場所を、私が奪うことになる。心の中でごめんね、とつぶやく中、割り切るように頭を振るった立向居は走って、ラインの外に出てきた。
そして私が手に持った交代ボードを立向居が取る。
「よろしくお願いします」
『うん。任された』
誰かを犠牲にして立つ
吹雪は自分を犠牲にしてた。私は……。