フットボールフロンティア編
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『と、言うわけでですね...、正式にサッカー部に入部したいんですが』
目の前に仁王立ちしている夏未ちゃんの顔を恐る恐る見れば、彼女は大きくため息を吐いた。
「そんなに恐れないでちょうだい。そもそも貴女をサッカー部と関わらせたのは私だし、元々フリースタイルフットボールをやっていたという貴女ならそう言うのも想定済みです。こちらはきちんと受理しますから、貴女はせいぜい部活頑張りなさい」
『夏未ちゃん...!!』
「それにフットボールフロンティアに参加するのに、彼らがまた練習をサボって初戦敗退なんて恥ずかしい事にならないように監視してもらうのにちょうどいいですからね」
『うん、うん。活動日誌とか付けるわ。任せて』
ぐっと親指を立てて見せれば、夏未ちゃんは、もう、と呟いて笑った。
「ええ、任せたわよ」
『それじゃあ、先教室戻るね』
まだ理事長代理としての仕事があるであろう夏未ちゃんを置いて、理事長室を出る。
廊下を歩いていると、随分と背の高く細い男子が、廊下をキョロキョロと見渡していて、私を見つけると駆け寄ってきた。
駆け寄ってきた彼を見て思わずああ、と呟く。
「よっ!俺、土門飛鳥!」
ずいぶんとフレンドリーに自己紹介してくれた彼はニカッと爽やかな笑顔を浮かべた。
『どうも。水津梅雨です』
こういう陽の者に出くわした時どうしたらいいかわからないね。
とりあえず自己紹介返しをすれば、土門は一瞬大きく目を見開いて、また直ぐにニコニコと笑いだした。
「梅雨ちゃんか!よろしく!ところで俺、転校生なんだけど、校長室の場所教えてくんない?さっき他の奴に聞いたんだけど途中から分かんなくなってさ」
わぁお、こちらにいきなり名前呼びかよと突っ込ませる間もなく、どんどんと喋り掛けてくるじゃん。コミュニケーション能力高すぎるんだが。
『...あー、この学校広いもんね。私も数ヶ月前に覚えるの苦労したわ。こっちだよ』
案内してあげる、と歩き出せば、Thank youとやたらいい発音で返してきてそのまま後ろを着いてくる。
「梅雨ちゃんは、2年生?確かこの学校女子はリボンの色で学年が違うんだろ?」
『そうね』
今の1年生はオレンジ、2年生は緑、3年生は青、生徒会はピンクになっているらしい。来年今の3年が卒業したら次の1年が青のリボン、2年がオレンジ、3年が緑と回っていくらしい。
ジャージのカラーも同じ原理らしい。
「じゃあ、俺も2年生だから同級生だな」
『あ、そうなんだー』
いやまあ知ってたし、なんなら私はアラサーだから同級生でもないんだけど。
『あ、着いたよここが校長室』
「おー!助かったわ!!」
『じゃあ、私はこれで』
「おう、同じクラスだといいな!」
そう言って大きく手を振る土門に、そうね、と言って手を振り返した。
まあ、そんな希望虚しく土門とは別クラスで、今日もたんたんと授業は進みあっという間に放課後になった。
「みんなわかってるな!」
円堂の掛け声に、狭い部室の中に集まった部員達がおおー!!と声を上げる。男の子達は床や室内に置かれたタイヤや棚の上などに座り、長テーブルと椅子は我々女子に譲ってくれている。
「とうとうフットボールフロンティアが始まるんだ」
再び、おー!と声が上がり、円堂はじぃんと感動している。
「で、相手は何処なんだ?」
「相手は...」
風丸の問にキリッと表情を正した円堂に皆は息を飲んだ。
「知らない!!」
言い切った円堂に、部員たちはあぁ...と唸りながらなんとも言えぬ表情を浮かべた。
そんなタイミングでちょうどよく、部室の扉が開かれた。
「野生中ですよ」
冬海先生が入ってくるなりそう言えば、春奈ちゃんがいそいそと手元に持った手帳をパラパラとめくった。
「野生中は確か...」
「昨年の地区予選の決勝で帝国と戦っています」
まあ、40年間無敗の帝国学園なので、結果は言わずもがな、だが。
「すっげぇー!!そんな強ええチームと戦えるのか!?」
「初戦大差で敗退なんてことは勘弁して欲しいですね」
あー...夏未ちゃんと似たような事言ってら。
皆は、むっ、とした様子で冬海先生を見ている。そりゃあそうだ。もう少し尾刈斗中の地木流監督くらい選手を信頼して欲しいよね。
「ああ、それから」
そう言いながら冬海先生が入口を振り返れば、ひょっこりと褐色肌に水色の短髪がニコニコ笑顔とピースサインを覗かせた。
「ちーす!俺、土門飛鳥!一応ディフェンス希望ね!」
その様子に部室の奥の方に座っていた、壁山と少林寺があっと声を上げている。ああ、朝、校長室の場所を他の子にも聞いたって言ってたね。
「君も物好きですね。こんな弱小クラブにわざわざ入部したいなんて」
そんな嫌味を言いながら部室を出て行く冬海先生を、なんだあれと言った様子で渋い顔をしながら土門が指さしている。
そんな様子を見ながら隣に座っている秋ちゃんがガタガタと音を立てて椅子を引いて立った。
「土門くん!」
「あれ?秋じゃない!お前雷門中だったの!」
やけに親しそうな2人を、円堂が見上げる。
「なんだ?知り合い?」
そう聞かれて、土門はふふんと笑った
。よく笑う子だねぇ。
「昔ね」
『幼なじみってやつかな?』
そう言えば、2人はまあそんな感じ!と頷いた。
「とにかく!」
円堂ががばりと土門の手を掴み上げる。
「歓迎するよ!」
そのままその手を掴んだまま上下に振るので、土門は困った様子で振り回されている。
「フットボールフロンティアに向けて一緒に頑張ろう!!」
『コラコラ円堂。危ないから手をぐるぐるするのはやめなさい』
ただでさえ部室狭いんだから。
「おう!悪い悪い!!」
そう言って円堂が手を離せば、土門は私の顔を見てハッとして、音に出さず口をパクパクとさせてサンキューと言った。
「けど、相手野生中だろ...大丈夫かな」
「ん?」
「なんだよ。新入りが偉そうに」
染岡が睨みを利かす。君は必ず誰かに噛みつかんといけないのか。
「前の中学で戦った事あるからねぇ」
前ねぇ...。全てを知ってればここでちゃんとフラグ経ってんだよなぁ。
「瞬発力、機動力とも大会屈指だ。特に高さ勝負にはめっぽう強いのが特徴だ」
「ちょ、ちょっとトイレ!」
いつもの事ながら、ビビリの壁山が立ち上がる。
「戦う前からビビってどうする!」
染岡の言葉に、あ、うん...と項垂れて壁山は座り直す。ぶっちゃけ野生中より染岡の方が怖いまであると思うけどな。言ったら殴られそうだから本人には言わないけど。
「高さなら大丈夫だ!俺たちにはファイアトルネード!ドラゴンクラッシュ!そしてドラゴントルネードがあるんだぜ!」
みんなの不安を払拭しようと円堂がそう言いながら3つの指を立てていく。
「どうかなぁ?アイツらのジャンプ力とんでもないよ?」
『野性味半端ないもんねぇ...』
「そうそう。ドラゴントルネードだって上から押さえつけられちゃうかも」
「んなわけないだろう」
「土門の言う通りだ。俺もアイツらと戦った事がある...。空中戦だけなら帝国をも凌ぐ。あのジャンプ力で上を取られたら...」
豪炎寺の言葉にやっと土門の言葉が本当だと思えてきたのか、皆が口々にそんなぁ...と情けない声をあげる。
「やっぱりトイレ「新!!」
そんな壁山の言葉を円堂が遮った。
「必殺技だー!!新しい必殺技を生み出すんだよ!!空を制するんだ!!」
新しい仲間、新しい必殺技
円堂を先頭に皆が部室を飛び出していくのを見て、タオルがたくさん入りそうだねと、マネージャーの仕事に取り掛かった。