脅威の侵略者編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
『……はい。そういう理由で、到着は明日になります。はい、失礼します』
ボタンを押して通話を切る。
本来はそのまま目的地に向かう予定だったが、予期せぬ事態で違う島で降りてしまった為、瞳子さんに連絡を入れた。
フェリーの次の便が明日しか無いため、今日はこの地で過ごすことになる。
そんな訳で、みんなはと言うと一足先に浜辺で練習を初めている。
4対4のミニバトル。ゲームじゃエンカウントする度見た光景だ。
円堂チームに鬼道、塔子ちゃん、リカちゃん。
立向居チームに一之瀬、土門、壁山だ。
『どう?』
ベンチで日傘を刺しながら、見守っている夏未ちゃんにそう尋ねる。
「今、円堂くんが新しい技を、そして財前さんと浦部さんがバタフライドリームに挑戦してるところよ」
『ダーリンとやるー!って言わなかったんだ?』
「あはは……、言ってたよ」
困ったような顔して夏未ちゃんの横に座っていた秋ちゃんが笑う。
「あっ、話をすれば…!やるみたいですよ!」
春奈ちゃんの言葉を聞いて視線を向ければ、リカちゃんと塔子ちゃんが手を繋いで飛び上がった。
「「バタフライ──、」」
「あっ!」
ボールを蹴ろうとした塔子ちゃんに押される形でリカちゃんが地に落とされる。
「ミスった…!」
本来2人で蹴るはずだったボールは、バランスが崩れ、立向居が待つゴールでは無くあらぬ方向へ飛んで行った。
「焦りすぎやわ。………って、」
「「「あっ………」」」
みんなが声を揃えた。
飛んで行ったボールが、砂浜に縦に刺せられたサーフボードにぶつかり、それが倒れそれを日除けにして寝ていた人の上に倒れたからだ。
「うおおおおぉ!!」
雄叫びを上げて、サーフボードを持ち上げるその人の元にみんな慌てて駆け寄った。
起き上がったその人はさっき目金を助けたピンク髪の少年だった。
「ごめん!怪我しなかったか?」
円堂がそう声をかける。
「これ、蹴ったの誰だ」
少年はじっと、近くに転がったままのサッカーボールを見つめた。
「アタシだけど……」
塔子ちゃんがそう答えれば、少年は塔子ちゃんに近づいてグッと拳を握った。
殴られる!?そう思い円堂が止めようと手を伸ばす。
しかし、少年のその手は開かれて塔子ちゃんの肩に乗せられただけだった。
「えっ?」
「サンキュー!」
は?と塔子ちゃんは口を開けたまま固まる。
「ちょうどいい波の立つ時間なんだ!あやうく寝過ごすところだったぜ」
ニカッと笑って、サーフボードを小脇に抱え直す彼に、塔子ちゃんは大丈夫なのか?と聞き返す。
「ん?ああ、いいっていいって!んな事、海の広さに比べりゃちっぽけな話だ」
じゃあな、と軽く手を挙げて、少年は海に帰っていく。
「なんなんだ、アイツ……」
その背をじっと見つめる塔子ちゃんを見て、リカちゃんが、ははーん、という顔をした。
恋愛脳だなぁ、リカちゃんは。
「とりあえず練習再開するか」
円堂の言葉にみんな頷いて戻っていく。
「あっ、そうだ。水津が戻ってきたし木暮も入れよ」
円堂がそうベンチの木暮に手を降れば彼は、しょうがないなぁと言いながらも小走りにかけてきた。一緒にやりたいんじゃん、かわいいなぁ。
ちなみに、吹雪は病み上がりだし、目金は溺れかけて死にかけてたから2人はお休みでベンチで見守っている。
私と木暮が入って、5対5。
「バランス的に木暮がこっちで、水津が立向居のチームだな」
鬼道の指示に従って大人しく砂のコートに入る。私も女の子チームに入りたかったけどな!!!
「水津、よろしく」
『こちらこそ』
そう言って手を掲げた一之瀬とハイタッチを交わす。
って…!後ろからなんか殺気感じるんだけど!?
振り返って見たらリカちゃんの顔が怖い。
「やるで、塔子」
「え?お、おう?」
リカちゃん、そのやる、殺るじゃないよね???
『リカちゃん!?違うからねっ!?』
「いや、うちのダーリンとハイタッチやなんて許さん!!」
『えーーー!理不尽!!土門とハイタッチして上書きするから許してよ!!ヘイ!土門!ヘイ!』
早く!!と急かせば、土門はめちゃくちゃ笑いながらハイタッチしてくれた。
「……そんなんじゃ、許せへん」
そう言ってリカちゃんがそっぽ向く。
「ダーリンが、うちともハイタッチしてくれたら、許す」
『早くやれダーリン!』
「えっ、えぇ……」
困惑したようにそう呟く一之瀬に、もう1度早くと伝える。
「えーっと、ほら、リカ」
ひょいと一之瀬が片手を上げてみせれば、リカちゃんはその手をガシッと両手で掴み挟んだ。
「やーん!ダーリン手おっきい〜!」
黄色い声を上げるリカにげんなりしながらされるがままの一之瀬に手を合わせておいた。
『ありがとう。本当にありがとう』
あやうくリカちゃんに殺されるところだった。
「それで、そろそろ茶番はもういいか?」
痺れを切らしたように鬼道が言ってきた。
はーい、と返事をして、ポジションにつく。
私、一之瀬が前で、土門、壁山が後ろのポジションでGKが立向居。
向こうは、リカちゃん、塔子ちゃんが前で、鬼道と木暮が後ろ。そして円堂がGK。
キックオフは、こちらから。一之瀬がボールを軽く蹴り、それを私が受け取る。
さすがにサッカーの仕様じゃ睨まれなかった。良かった。
受け取ったボールをリカちゃんが奪うため駆け寄ってくる。それを、両足でボールを挟んで上に跳び、空中で前転する。
「なっ!」
「久々に見たけど本当、綺麗に跳ぶよな」
「塔子!感心しとる場合やない!」
「分かってるよ!──ザ・タワー!」
着地する私の前に回って、塔子ちゃんは必殺技を発動させた。
『わっと、』
聳え立つ塔に、気圧され、そして足元の砂で滑り尻もちをついた。
その隙にボールを奪われた。
「行くで、塔子!」
「いいよ、リカ!」
一緒に駆けた2人は手を繋ぎ、高く飛び上がった。
「「バタフライドリーム!!」」
今度は揃ってボールを蹴れたが……、またもボールは海の方へ飛んでった。
その海では先程の少年がサーフィンしている。波に乗った彼は、あろう事か飛んできたサッカーボールをそのまま蹴り返してきた。
素足でサッカーボール蹴るとか正気かよ、とも思うがそもそも超次元に何言っても、か。
蹴り返されたボールは波の上走って、砂浜に出て、そして立向居のいるゴールまで凄い勢いで飛んできた。
慌ててそれを立向居が止めようとしたが、そのままゴールへ押されてしまった。
『すっごい威力』
「ふー、びっくりしたぜ。急にボールが飛んできやがってよぉ」
呑気にそう言いながら、浜に上がってきた彼に、ねえ君!と円堂か駆け寄る。
「サッカーやってるのか?」
「そんなもん1回もねぇよ?」
「えっ、1回も!?」
信じられないと円堂は驚きの顔をしてみせた。
「サッカー!やってみないか!!」
円堂が唐突にそう言えば、少年は、は?と口を開いた。
「あんなにすごいキックができるんだ!やったらすっげぇ楽しいぜ!」
その言葉に少年は、ハハハ!と高笑いした。
「冗談はよせよ。俺はサーファーだぜ?」
「でもさぁ、ちょっとくらい…」
「悪ぃな、興味ねぇんだ」
そう言って少年は立ち去ろうとする。
「あっ、そっか……」
円堂があからさまにしゅんとする。
その後ろで、鬼道がゆっくりと腕を組んだ。
「やらなくて正解だ。ど素人が俺たちのレベルについて来られるわけないからな」
高圧的に見えるようにか、鬼道は少し顎を上に向けそう言った。
『ま、ただのサーファーじゃあねぇ』
鬼道の策に乗るように、わざとぷぷぷ、と笑うように言う。
「なに?」
ギロ、とこちらを睨みつけるように振り返った少年はズカズカと歩いて私たちの元にきた。
「どれだけ身体能力が優れていようと、やった事のない者がすぐに出来るほどサッカーは簡単ではない」
「ハッ?さっきの見ただろ!ちゃんと蹴り返したじゃねぇか!」
「1度だけな」
『まぐれ、ビギナーズラックでしょ?』
ねぇ、と鬼道を見てそう言えば、ああと彼は頷く。
それを見て、カチンと来たのか、少年は目を吊りあげた。
「お兄ちゃん!?梅雨先輩も……!」
何喧嘩売ってるの?というように止めに入ろうとした春奈ちゃんは、鬼道の横顔を見て、あ、と呟き伸ばした手を止めた。
鬼道の横顔は微かに口角が上がって、笑っている。たぶん、正面にいる少年にはバカにしているように見えただろうけど。
妹の春奈ちゃんには彼の真意が分かった。
「よし決めた!サッカーやってやるぜ!」
円堂に向かって、少年はそう言った。
「本当か!?」
「ああ。この俺様に二言はねぇ!」
「そうか歓迎するぜ!えっと、名前は……?」
「俺は綱海!綱海条介だ!」
大物をさびく
思ったより簡単に釣れたね、そう言えば鬼道は単純で助かったと笑っていた。