フットボールフロンティア編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
※幽谷視点
負けた。ここ数年フットボールフロンティアにも出ていないような弱小チームに負けるなんて。
まさかゴーストロックだけでなく鉈のゆがむ空間まで攻略されるとは思ってもいなかった。
試合後、膝から崩れ落ち放心状態の地木流監督を先輩達が支えながら帰りのバスへと乗り込んでいく。
「ねえ、幽谷...」
頭に3本の蝋燭を差したチームメイトで1学年上の八墓先輩が、フラフラとした足取りで寄ってきた。
「どうしました?」
「あの、途中から入ってきた女子なんだけど」
そう言って八墓先輩が指したのは、勝った勝ったと喜ぶ雷門中の奴らの中にいる15番のユニフォームに身を包んだ、青みかかった黒髪のアメジスト目の女子選手。
「ああ、あの15番の方ですか?」
彼女の周りに渦巻く白いモヤの様なもの、おそらく普通の人間には見えていないものだろう。雷門選手たちは疎か、本人も気づいていないようだ。
「うん。最初はよく見る憑いてる人かなと思ったんだけど、"のろい"で触れただろ。そしたらあの白いの増えた気がする」
八墓先輩の言う通り、最初にフィールドに立った時よりも、モヤが大きくなっている気がする。霊感の強いわたしたちはよくそういった物に遭遇するわけだけど、何となく勘でやばい物だということだけがわかる。
それにしても白いモヤか...。黒いモヤモヤした物がまとわりついている人は大概悪霊が付いているのだけれど、八墓先輩の攻撃に対しモヤが大きくなったということは守護霊の様なもの...にしては感じる力が強すぎる。
「伝えた方がいいかもしれませんね」
「そうだよね」
そう思い、2人で雷門選手たちの方へ歩み寄ろうとした瞬間、空気が凍ったような気がした。背中へと走る悪寒に、後ろを向けば、白いモヤの様なものが集合して、ヒトの形を作っている。ちらり、と盗み見るようにあの15番の女子を見れば彼女の周りに渦巻いていた白いモヤは無くなっていて、今自分たちの前に現れたコレがソレだと気づく。
ヒトのような形になった白いモヤは人間でいう顔の部分に口のような穴をぱっくりと空けた。
「余計なことはしないで欲しいなぁ」
抑揚のない声でそう聞こえた。わたしたちと意思疎通ができるということは、コレは幽霊であっているのだろうか。
「ああ、私は霊とは違うかな」
思考を読まれた。白いモヤの口角と言っていいか分からないがそれがニヤリと上がった気がする。
「君たちのような者はそういったヒトでは無いものへの勘が鋭いみたいだから、困っちゃうなぁ」
白いモヤが、わたしと八墓先輩の周りを、まるで逃げないようにとぐるりと囲んだ。
「なんで、あの子に取り憑いてる...?」
八墓先輩が聞けば、白いモヤは手のようなものを作り出して、先輩の肩に指を1本ずつ降ろして掴んだ。
「取り憑いてるわけではないよ。霊ではないと言っただろう。僕はただ見てるだけだよ」
「見てるだけ...?」
霊ではないと断言するのであれば、守護霊でもないということだ。それなのにただ見てるだけってなんなんだ、コレは。
「まあ君らのお陰で、分かったよ。あまり梅雨の近くに俺が居ると君らのような特殊な人間に気づかれてしまって面倒だ」
一人称もぐちゃぐちゃだし、何かの集合体なのだろうか。
「監視は離れてする事にしよう」
そう言って白いモヤはヒトの形を崩してぐるりとわたしたちの周りを回った。
「君たちも梅雨に余計なことは言わないで、ね」
首の周りを撫でるようにモヤが一周した。あの女子にこの事を伝えばわたしたちの命はない、と言っているようだった。
思わず息を飲むわたしと八墓先輩の様子を見てモヤはくすくすと笑い声を上げて、そして何事もなかったかのように溶けて消えてなくなった。
「なんだったんだ今のは...」
「わからない...けどこの世のものではないね」
15番の彼女を見れば、彼女の周りにももうモヤは居なかった。
じっと見ていたせいか、彼女はこちらに気がついて不思議そうに首を傾げた。
先程のモヤの件があるし、なるべく関わらない方がいい。
ぺこり、と会釈をして、わたしと八墓先輩は帰りのバスへと飛び乗った。
憑き物
触らぬ神に祟りなし。
負けた。ここ数年フットボールフロンティアにも出ていないような弱小チームに負けるなんて。
まさかゴーストロックだけでなく鉈のゆがむ空間まで攻略されるとは思ってもいなかった。
試合後、膝から崩れ落ち放心状態の地木流監督を先輩達が支えながら帰りのバスへと乗り込んでいく。
「ねえ、幽谷...」
頭に3本の蝋燭を差したチームメイトで1学年上の八墓先輩が、フラフラとした足取りで寄ってきた。
「どうしました?」
「あの、途中から入ってきた女子なんだけど」
そう言って八墓先輩が指したのは、勝った勝ったと喜ぶ雷門中の奴らの中にいる15番のユニフォームに身を包んだ、青みかかった黒髪のアメジスト目の女子選手。
「ああ、あの15番の方ですか?」
彼女の周りに渦巻く白いモヤの様なもの、おそらく普通の人間には見えていないものだろう。雷門選手たちは疎か、本人も気づいていないようだ。
「うん。最初はよく見る憑いてる人かなと思ったんだけど、"のろい"で触れただろ。そしたらあの白いの増えた気がする」
八墓先輩の言う通り、最初にフィールドに立った時よりも、モヤが大きくなっている気がする。霊感の強いわたしたちはよくそういった物に遭遇するわけだけど、何となく勘でやばい物だということだけがわかる。
それにしても白いモヤか...。黒いモヤモヤした物がまとわりついている人は大概悪霊が付いているのだけれど、八墓先輩の攻撃に対しモヤが大きくなったということは守護霊の様なもの...にしては感じる力が強すぎる。
「伝えた方がいいかもしれませんね」
「そうだよね」
そう思い、2人で雷門選手たちの方へ歩み寄ろうとした瞬間、空気が凍ったような気がした。背中へと走る悪寒に、後ろを向けば、白いモヤの様なものが集合して、ヒトの形を作っている。ちらり、と盗み見るようにあの15番の女子を見れば彼女の周りに渦巻いていた白いモヤは無くなっていて、今自分たちの前に現れたコレがソレだと気づく。
ヒトのような形になった白いモヤは人間でいう顔の部分に口のような穴をぱっくりと空けた。
「余計なことはしないで欲しいなぁ」
抑揚のない声でそう聞こえた。わたしたちと意思疎通ができるということは、コレは幽霊であっているのだろうか。
「ああ、私は霊とは違うかな」
思考を読まれた。白いモヤの口角と言っていいか分からないがそれがニヤリと上がった気がする。
「君たちのような者はそういったヒトでは無いものへの勘が鋭いみたいだから、困っちゃうなぁ」
白いモヤが、わたしと八墓先輩の周りを、まるで逃げないようにとぐるりと囲んだ。
「なんで、あの子に取り憑いてる...?」
八墓先輩が聞けば、白いモヤは手のようなものを作り出して、先輩の肩に指を1本ずつ降ろして掴んだ。
「取り憑いてるわけではないよ。霊ではないと言っただろう。僕はただ見てるだけだよ」
「見てるだけ...?」
霊ではないと断言するのであれば、守護霊でもないということだ。それなのにただ見てるだけってなんなんだ、コレは。
「まあ君らのお陰で、分かったよ。あまり梅雨の近くに俺が居ると君らのような特殊な人間に気づかれてしまって面倒だ」
一人称もぐちゃぐちゃだし、何かの集合体なのだろうか。
「監視は離れてする事にしよう」
そう言って白いモヤはヒトの形を崩してぐるりとわたしたちの周りを回った。
「君たちも梅雨に余計なことは言わないで、ね」
首の周りを撫でるようにモヤが一周した。あの女子にこの事を伝えばわたしたちの命はない、と言っているようだった。
思わず息を飲むわたしと八墓先輩の様子を見てモヤはくすくすと笑い声を上げて、そして何事もなかったかのように溶けて消えてなくなった。
「なんだったんだ今のは...」
「わからない...けどこの世のものではないね」
15番の彼女を見れば、彼女の周りにももうモヤは居なかった。
じっと見ていたせいか、彼女はこちらに気がついて不思議そうに首を傾げた。
先程のモヤの件があるし、なるべく関わらない方がいい。
ぺこり、と会釈をして、わたしと八墓先輩は帰りのバスへと飛び乗った。
憑き物
触らぬ神に祟りなし。