脅威の侵略者編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
大会前で焦っていた。
だから自分がオーバーワークなってるの気づかずに、ひたすらにアクロバットの練習していた。
そして、
失敗した。
そう思って頭から落ちた次には、目が覚めたら病院のベットで、動かない身体に呆然とした。
それから医師から伝えられた言葉に、絶望した。
ただ足が折れているだけなら、治るまで我慢すればいい。今大会は諦めても、リハビリを頑張って次の大会へ向けて、プロになるために頑張ろう。そう思っていたのに、それすらも打ち砕かれた。
頭から落ちた衝撃で脳震盪を起こし、1人で練習していた私は発見されるのが遅かった。
それ故に、骨折が治っても脳震盪による麻痺が残るだろう、と。
リハビリをしても1人で暮らせる程度に動けるようにはなるだろうけど、運動は難しいだろう。だから、もうプロにはなれないと。
それを聞かされてからは、もう何もやる気が起きなかった。
食事すらまともに取れなかった。
リハビリなんて、論外で、1歩も歩けなかった。
もうこのまま死んでしまいたい。
二度とボールを蹴れないなら、落ちた衝撃で死ねば良かったのに。
そう思いながら、虚空を見つめベットに横になるだけの毎日。
そんなある日、私の部屋に来訪者があった。
家族でも、お見舞いに来た友人でもない。
同じ病院に入院している小学生の男の子だった。
「お姉ちゃん、ちょっとだけここに隠れさせて」
ひそひそ声でそう言った彼は同じように入院している子供たちとかくれんぼをしているようで、たまたま隠れるのに私の部屋に入ってきたらしい。
『え、』
良いも悪いも言う前に男の子は中に入って、扉を閉めた。それからそっーと隙間を作って廊下を覗き見ている。
隠れているのなら騒ぎ立てるわけでもないし、まあいいか、とそのまま私はベットに寝続けた。
男の子は時々廊下の向こうを見ては、小さくくすくすと笑っていた。多分近くを通ったのに過ぎていったんだろうな。
その日は鬼役の子供にはバレなかったが、巡回に来た看護師さんに見つかってしまい怒られ無理やり小児病棟に連れ帰えられた。
そして、男の子は次の日も私の病棟に来た。
昨日見つからなかったから、隠れるのに最適だと思ったのだろうか。子供は単純だからなぁ。
だが、この日はかくれんぼじゃなかった。
男の子は片手にDSを持ってやってきた。
「貸したげる!」
『は?』
ポカン、と口を開ける私のベットの上のテーブルに彼はDSを置き、部屋の隅に畳んであったパイプ椅子を持ってきて勝手にベット横に座った。
「お姉ちゃん足の骨が折れてて動けないんでしょ?」
看護師さんから聞いた、と男の子は言う。
そういえば昨日、ここは整形外科病棟で子供は小児病棟に居るの、と看護師さんに怒られて整形外科ってなーに?と連れ去られながら聞いていたな。
その時にでも、わかりやすい例として看護師さんが教えたのだろう。
それで、なんでゲーム機?
ベットに寝たまま不思議がっていれば、男の子は私の顔を覗き込んだ。
「お姉ちゃん起きれないの?じゃあ僕がやろ〜」
なんだ自由かよ。有無も言わさず、男の子はテーブルの上に置いたDSを取り戻して、電源を入れた。
テテテン、とロゴが表示される時の甲高い音がなる。
音量調整とかの概念がないのか、最大音量で男の子はゲームを始めた。
OP曲が流れ始める。
リーヨ、リーヨ
謎の語源から始まったそれが、私とイナズマイレブンとの出会いだった。
『リーヨ、リーヨ…がんばりーよ』
「はい、頑張ります!」
元気に返事をした立向居を見て、自分が口に出していたことに気がついた。
『そうか、立向居は福岡人だから意味が通じるのか』
どういう事?と立向居は首を傾げた後、あっ
、と呟いた。
「方言、ですもんね。むしろ水津さんはよく博多弁知ってましたね」
『うん、まあね』
そう言って小さく笑った。
ボールを蹴ることが出来なくなった私の前で、サッカーのゲームとか最悪じゃん。最初はそう思った。
でも、男の子のやるDSから漏れ出す音から聞こえる話が、熱くて、面白くて、引き込まれるのは簡単だった。リーヨの意味を調べだすくらいには。