脅威の侵略者編
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皆が練習を終えて、夕食を終えて、それからテントの中で眠りにつく。
だが、目が冴えて眠れやしない。
目を閉じれば、自らヒロトのシュートに突っ込んでいく吹雪の姿が思い返されて……。
そっと寝袋から抜け出して、テントの外に出た。
陽花戸中のグラウンドから見上げた夜空は、星がよく見えた。
「水津…?」
名前を呼ばれて振り返れば、後ろに風丸が立っていた。
こんな時間に出かけるのか、彼はスポーツバッグを肩にかけていた。
『風丸』
「お前も立ち止まってるんだろ」
『え…?』
夜の闇のせいなのか風丸の目には光がないように見えた。
北海道で話をしたあの夜の時よりも彼の表情は暗い。
「俺はもう進めない。どう頑張ったってこの先は壁じゃないか……」
『そっか……』
そうだよね。ここはちゃんと離脱してくんだろう。シナリオ通りに。
『引き止めはしないよ』
そう言えば風丸は黙った。
彼自身引き止めて欲しくて私に声をかけたわけじゃあるまいに。
私が言って止めるなら、円堂の言葉で止まってる。
『…今までよく頑張ったよ。お疲れ様』
風丸は静かに目を瞑ったあと、ああ、と頷いて目を開けた。
「お前はまだ、残るんだな」
『逃げる勇気すらないんだよ』
「……そうか。……俺は、もう行くな」
『うん。夜遅いから気をつけてね』
背を向けて陽花戸中の門の方へ歩いていく風丸をただただ、黙って見送った。
翌朝。
「そんな……」
「信じられないッス……!」
瞳子さんに集合を掛けられ、風丸がイナズマキャラバンを降りたことを伝えられた。
「監督、本当なんですか」
鬼道の問に瞳子さんは、ええ、と頷いた。
「既に東京へ戻ったわ」
「どうして止めなかったんですか!?ここまで一緒に戦ってきた仲間なんですよ!」
声を荒らげる秋ちゃんを見て、胸が痛む。
どうして止めなかったのか、か……。
「サッカーへの意欲を無くした人を引き止めるつもりはないわ。私はエイリア学園を倒すため、このチームの監督になったの。戦力にならなければ出て行ってもらって結構」
私が言えた話じゃないが、どうしてこの人はこういう言い方しか出来ないんだろうね。
「ああ!そうだったな!アンタは勝つためならどんなことでもする奴だもんな!!」
案の定、土門がキレた。
「吹雪が2つの人格に悩んでるのを知りながら試合に使い続けるくらいな!!」
……これまた痛いことを言ってくれる。
「…練習を始めなさい。空いたポジションをどうするか考えるのよ」
瞳子さんは土門の言葉を無視してそう言って去っていく。
「ハイハイ女王様」
土門が悪態を付いても、彼女は振り向きもしなかった。
「こんなんじゃ練習できっこないッスよ……」
皆が、しん、とする中、秋ちゃんだけはキリッと眉を釣り上げた。
「私、風丸くんは帰ってくるって信じてる!」
それに釣られるように、春奈ちゃんも私もですと声を上げる。
それを見て静かに頷いた鬼道は、1人その場から歩み始める。
「お兄ちゃん?」
「始めるぞ、練習」
「え、でも……」
「俺たちがサッカーをするのは監督の為じゃない。円堂がいつも言ってるだろう」
鬼道のその言葉に、暗かった皆の表情が変わる。円堂が言うことなんてみんな知ってる。これまでずっと彼の言葉に支えられて来たのだから。
「サッカーが好きだからだ。サッカーを守る為にもエイリア学園に勝たないとな」
「お兄ちゃん…!」
先頭に立ち歩く鬼道を春奈ちゃんが追いかければ、他の皆も釣られるように、行くかとグラウンドに向かって歩み始めた。
ただ、1人を覗いて。
立ち止まったままの円堂に、秋ちゃんがボールを持って近づく。
円堂くん、とそのボールを彼の目の前に持っていけば、円堂はやんわりとボールを押し返した。
「練習…できない……」
小さくそう言った円堂の言葉に、皆、えっ?と足を止めて振り返った。
「どういうこと…?」
「今の俺は、サッカーと真正面から向き合えない……。ボールを蹴る、資格がないんだ……」
いつものような元気はそこにない。
「だから……、ボールは、それまで預かっといてくれ………」
そう言って、円堂はとぼとぼと皆の前から去っていった。
鬼道がかけ戻ってきて、去る円堂の背中を見つめる。
「アイツ……」
「円堂くん……」
暗転
かける言葉もない。