脅威の侵略者編
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試合は一方的だった。誰も止められない、追いつけない。
14点。あっという間に取られた。
ジェネシスとの初戦のようにみんなが大きな怪我を負ってはいないけれど……。
「何とかしないとこのままじゃ円堂が!!」
スピード特化の風丸と吹雪でも全く追いつけない。
風丸と吹雪を振り切った、ジェネシスのコーマとクィールが最前線のグランにパスを出した。
「円堂!」
叫ぶ風丸に、グランは振り返ってひと睨みした。
風丸の足が止まり、後ずさった。
それを見て、彼は何食わぬ顔してシュートを放った。
「くっ……マジン・ザ・ハンド!!」
既にボロボロの円堂は15回目となる魔神を繰り出した。けれど、シュートを受け止めようとボールに触れた途端魔神は粒子となって消えていき、円堂は頭から前に倒れた。
向こうのスピードに翻弄されて、全く気を貯めれていないから魔神が維持出来ていない……。
「もう終わりなの?君の実力はこんなものじゃ無いはずだよ?」
そう言ってグランは、どこか悲しそうに円堂を見下ろした。
「円堂くん……!」
秋ちゃんが口元を両手で覆い、瞳子さんはフィールドから目を背けた。
終わりかな、と言うようにグランは円堂に背を向けた。その時だった。地に突っ伏したまま円堂が何かブツブツ言い出した。
「…まだ、…試合は終わっちゃいない……諦めなきゃ、反撃の、チャンスは来る……」
そう言いながら、円堂はゆっくりと身体を起こし、少しずつ立ち上がった。
「このゴールはオレが守る!!」
そう叫んだ円堂に、グランは後ろを向いたまま、センターラインへと戻って行った。その口元は大きく弧を描いていた。
一方的な試合にお通夜状態だった皆が、彼につられるように円堂!キャプテン!と声を出す。
「よし!まずは1点!」
そう言って鬼道が天高く、人差し指を掲げる。
「何としても奴らから奪うんだ!」
おう!と皆、元気よく返事をしてフィールドに散らばる。
ただ……、風丸だけが放心したように動かなかった。
『心が折れたな……』
「えっ?」
隣に座っている秋ちゃんが、こちらを見た。
『……なんでもないよ』
突然なんだよね。ぷつってなるの。
なんか、どうしたらいいかとか、どうでもいいとか、よく分からなくなる。
頑張っても報われるヴィジョンが浮かばない。
今の私みたいだな。私も自分の関わった先の未来が分からないから、どうでも良くなってしまったんだろうか。
こうやって風丸の事も吹雪の事も見て見ぬふりをするのは……。
みんなの事がどうでもいいわけじゃなかったから、アニメやゲームじゃなくて今ここで生きているのを感じたから、世宇子中の時はみんなに怪我をして欲しくなかった。
だけどジェミニストームの時は、"みんな"よりも"ストーリー"を優先した。
そしてエゴで、ストーリーの最後の部分には関わらないからと帝国学園では余計なことをした。そして結果がアレで、もう何もやる気はしない。
ぼんやりとフィールドを見つめる。
鬼道が何とかボールを奪って、吹雪へとパスを出した。
……アツヤと葛藤している彼は、士郎としてゴール前まで駆けた。だけど、彼は一瞬怯んでしまい、その隙にジェネシスにボールを奪われる。
やっと得たチャンスが失敗に終わり、皆の表情が曇る。
辛いな。結局、彼の葛藤も頑張りも誰も気づいてはくれないし、期待されていた分、絶望も大きい。
見なければいいのに、吹雪はみんなの顔を見てしまう。
傷つかないはずがない。それでも彼は、もう一度立ち上がった。
「吹雪!」
どうにかこうにか、鬼道がボールを取り返して、また吹雪にパスを出した。
吹雪は、アツヤと士郎の人格がせめぎ合いながらゴール前にかける。
押し勝ったのは士郎で、彼はエターナルブリザードを放った。
しかし、その必殺シュートは、キーパーのネロにあっさり簡単に止められてしまった。
「えっ、」
吹雪は膝から崩れ、ケホケホと苦しそうに咳き込んでいる。
『………』
私は1度忠告したよ、と瞳子さんを見る。
いや、今見て見ぬふりしてるから結局、私もこの人と同罪……いやこの展開を知っててもなお無視してるんだから、私の方が重罪か。
小さくため息を吐いて、フィールドの方に顔を向ければ、鬼道と目が合った。
「………」
彼はこちらを見て怪訝そうな顔をしている。
昨日も何か言いたげだったな……。
知っていたんじゃないのか。そう言ってたな……。
賢い子だし、私も鬼道もいた影山の前で割とペラペラ喋ったし、気づいたのかな。
幻滅するだろうな。
「大丈夫か?吹雪」
フィールドでは一之瀬が心配そうに吹雪に駆け寄っていた。
「ごめんね、タイミングが合わなくて……」
「気にするな、吹雪!次は決めていこうぜ!」
謝る吹雪にゴールから円堂が叫んだ。
けど、
次はない
ジェネシスが更にスピードを上げていき、得点差は20点になった。