脅威の侵略者編
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「ダーリン、ええか?バタフライドリームやるで!」
ボールを取って駆け上がる一之瀬に寄ってリカがそう言うが、練習してない技をやると言われて一之瀬は、え?と困惑していた。
そんな2人の間を引き裂くように吹雪が割って入り、一之瀬の足元のボールを奪って行った。
「コラー!なにすんねん!ウチらのラブラブボール!!」
怒るリカちゃんと唖然とする一之瀬を置いて吹雪はどんどんと1人でイプシロンゴールへ向かっていく。
「吹雪、無茶だ!!」
鬼道が静止をかけるが、聞く耳を持たない吹雪は1人で、向かってきたモールとメトロンを強引に突破してしまう。
「これじゃ、最初の頃と一緒ね」
「そうね。最近やっと、みんなと連携出来るようになってきてたのに…」
夏未ちゃんが、参ったわねと言えば、どうしちゃったんだろう、と秋ちゃんが首を傾げる。
『正直なところ、吹雪自体は何も変わってなかったんじゃないかな…。連携出来てたのも、染岡が合わせてたからだし』
あの染岡が折れてやって初めて連携出来ていた。ここまでだって、吹雪の方から合わせようと言うのはなかった。
「梅雨先輩言ってましたよね。根本的な本質は、そう簡単には変わらない、でしたっけ」
『そんな事言ったっけ?』
「お兄ちゃんの事で悩んでた時に」
ああ、なんかそれっぽい話した気がする。
「本質は簡単には変わらない、ね…。染岡くんのおかげで変わりかけてたのに、それがいなくなったっていうのが彼の中では大きいのかもしれないわね」
そう言って夏未ちゃんが吹雪に視線を移動させたのにつられ皆、フィールドを見た。
「さあ来い!」
「デザーム!今度こそ吹き飛ばす!」
ハハハ!と笑いながら待ち構えるデザームを前に吹雪はボールを蹴りあげた。
吹雪の目が一瞬だけ金からグレーに戻った気がした。けれども直ぐに、怒ったように眉を吊り上げた彼は金の瞳になっていた。
吹雪は、雄叫びと共にエターナルブリザードを打つ。
「ワームホール」
真正面からワープゲートがエターナルブリザードを吸い込もうとする。しかし、
「なっ!?」
先程のシュートよりも更に勢いを増しており、エターナルブリザードはワープゲートの引力を振り切り、デザームの顔の横を過ぎ去ってゴールに突き刺さった。
「い、やったーー!!」
ゴール!同点ゴール!と実況の角馬くんも声を張る。
「うおおおおぉー!!」
雄叫びを上げた吹雪の周りに皆がやったな!と駆け寄る。
「やりましたね!」
「うん!」
キャッキャッとベンチでも春奈ちゃんと秋ちゃんが手を取り合って喜んでいる。
「…あまり、嬉しくなさそうね?」
夏未ちゃんに小声で聞かれた。
『えっ、いや、点が取れたのは嬉しいよ』
「点が取れた事はね。貴女が気にしているのは吹雪くんのことでしょう?……彼が、1人で決めてしまった。これは下手をすれば彼は更に連携を必要としなくなる」
流石夏未ちゃん、ご名答。
『うん。それがネック、だよね……。点を決めたのは喜ばしいんだけどなぁ……』
全て自分で出来ると自ら孤立して結局、辛い時に助けを呼べなくなる……。
まあ、私もあまりその点は吹雪の事をどうとか言える立場ではないが。
「こちらからはどうする事も出来ないわね」
『まあ、見守るしかないよね』
それが正解かもわからないけど。
試合時間も残りわずか。
これが最後だ、と吹雪が攻め上がる。
「吹き飛ばせ!…っ……。エターナルブリザード!!」
「来るか!ならば私も応えよう!」
そう言ってデザームは右手を高く上に掲げた。
「ドリルスマッシャー!」
ここに来ての新技。大きなドリルとなった手を正面に向けて飛んできたボールにぶつけて、弾いた。
「ふん」
「なっ……!?」
弾いたボールを手のひらに納めたデザームを見て、一同騒然とした。
「私にドリルスマッシャーまで使わせるとはな。ここまで楽しませてくれたヤツらは初めてだ」
デザームは、ハーッハッハッハッ、と高笑いした後、すん、と笑うのを辞めて、ゴールラインの外にボールを放り投げた。
「試合終了だ」
「なんだとっ!!」
円堂がわざわざ雷門ゴールからイプシロンゴールまで駆け上がってそう言った。
「確かに…時間は残っていないが……」
審判をしてくれていた古株さんが腕時計を確認している合間に、デザームはイプシロンの面々に引き上げるぞ、と号令をかけた。
ハッ、デザーム様!と揃えて返事をした10人はゴール前のデザームの元に一斉に駆け寄った。そしてその頭上に赤と黒のサッカーボールが飛んでくる。
「ふざけんなっ!!」
「吹雪、よせ!」
飛びかかろうとした吹雪を円堂が羽交い締めにして止める。
「まだ勝負はついてねぇぞ!!!逃げるな!!」
叫ぶ吹雪に、デザームは赤と黒のボールが放つ紫色の光に包まれながら、ふっ、と鼻で笑った。
「再び戦う時は遠くない。我等は真の力を示しに現れる」
それだけ言って、強い光に包まれた彼らは一瞬にしてその場から消え去った。
「くっ、うおおあっ、…っ、!、」
「おい?大丈夫か?」
悔しそうに叫びかけていたのに、急に止めるなんておかしな吹雪に円堂が声をかける。
「…なんでもないよ。もう一点が取れなくてごめんね」
暗いトーンでそう言って、吹雪は円堂に背を向けベンチの方に歩いてくる。
「でも!負けなかったのはお前のお陰だ!ありがとな!」
円堂が後ろから声かければ、吹雪は弱々しく片手を上げた。
『吹雪』
こちら側に俯いたまま歩いてくる吹雪に声をかけた。けれど、反応がない。
『士郎!』
「っ、」
大きな声で名を呼べば、吹雪はビクリと肩を揺らし、ハッとした様子でこちらに顔を上げてみせた。
『お疲れ』
そう言って、ドリンクボトルを差し出す。
「…ありがとう。でもボク、トイレに行ってくるから、後で貰うね」
いつもなら、弱々しい笑顔を見せてくれるところだが、今日はそれもなく、淡々とそう言って吹雪はトイレの方へ向かってしまった。
また受け取って貰えなかった
どんどん距離が空いていく。
私では繋ぎ止める事しか出来ない。