円堂が止めれば、デザームも止める。0-0のまま試合が進む。


「そうだ！この血の沸き立つような感覚これこそが私の求めていたものだ！」

そう言ってデザームは仲間に向かってボールを投げた。

『なんか、楽しそうだよね』

「イプシロンのキーパー？」

聞いてきた秋ちゃんに、うん、と返事をする。

やっぱり元々サッカーが大好きなんだろうな。それをアイツは……。

「確かになんか、ジェミニストームのキャプテンとはちょっと違いますよね」

春奈ちゃんがそう言えば、そうね、と夏未ちゃんが頷いた。

「ジェミニストームはサッカーは侵略の為の手段で1度敗北した者には興味がない、と言った感じだったけど、イプシロンはあれほどの強さを見せておきながら、わざわざ再戦を選んだわ。同じエイリア学園で何が違うのかしら」

難しい顔をして夏未ちゃんは考察をしている。

「あっ、吹雪先輩が…！」

春奈ちゃんの言葉に、フィールドの雷門ゴール前を見た。

いない。

「いつまで守ってんだよ！！」

毛先を逆立てた吹雪はボールを奪って、DFのポジションからいつの間にか中盤まで上がっていた。

「吹雪！こっちだ！」

パスしろ、と鬼道が合図を出すが、それを無視して吹雪は攻め上がって行った。

「吹雪！！」

「完璧じゃなきゃ、俺はいる意味がねぇー！！」

そう叫びながら吹雪はゴール前まで1人で突っ走る。
その前にイプシロンのDFが2人立ち塞がる。


「打たせろ！こいつが今日のメインディッシュだ！」

デザームの命令にDF2人は従って道を開けた。

「ふざけんな！喰らえ！」

そう言って吹雪はボールを両足で挟み擦るようにして回転させた。

「エターナルブリザード！！」

「待っていたぞ、このシュート！あの時は遠距離で打っておいてあれだけのパワー。この距離ならどれだけ強烈か！」

そう言いながらデザームは両腕で大きな円を描くように回した。

「ワームホール！」

デザームの目の前にワープゲートのようなものか現れて、エターナルブリザードか吸い込まれていく。
吸い込まれて消えたエターナルブリザードは、デザームの横に新たなワープゲートが開いて直下にボールが落ち地面にめり込んだ。


皆が壮絶と息を飲む。

「あの距離でエターナルブリザードを完璧に止めた…！なんてキーパーだ」

「もっと打ってこい！私を楽しませろ！」


そこからまた一進一退、攻防戦が続く。


「チャンスだ！攻めろ！」

円堂の指揮に、ボールを持った鬼道が責め上がり、合わせて一之瀬が横から並走する。

「「ツインブースト！」」

2人の放ったシュートはデザームの片手に簡単に弾かれた。そのボールをイプシロンの4番、ケイソンが拾おうとした間に飛び出した吹雪が割って入りボールを奪った。

「エターナルブリザード！」

そのまま間髪入れず吹雪はシュートを打った。

「ワームホール！」

先程と同じようにボールは吸い込まれ、デザームの横に落ちた。


「この程度では物足りないぞ。もっと魂が熱くなるシュートを叩き込め！」

「何っ！？」

怒る吹雪をおいて、デザームは大きくボールを投げた。

「攻撃せよ。戦術時間は７，4秒だ！」

ラジャー！とイプシロン達が声を揃えて返事をし、猛スピードでカウンター攻撃を仕掛ける。

「ディフェンス！6番チェックだ！」

「ここは通さないッス！」

ボールを持ったファドラの前に壁山が立ち塞がる。しかしお構い無しと言った様子で、ファドラはボールを正面に蹴った。

「ザ・ウォール！！」

壁山が必殺技を発動させる。現れた壁にボールが当たり、砕かれる。そして壁に当てることで跳ね返ってきたボールをフォドラは上手くトラップして、ゼルにパスを出した。

「うわ、き、きた…！来たよ…！！」

ゼルは守りの薄い木暮の方に進んだ。
未だ宇宙人に怯えている木暮は、じり、と1歩足を後ろに引く。

『木暮！』
「木暮くん！」

春奈ちゃんと2人で叫ぶ。
視線のあった木暮は、意を決したように、両手を地面に着く。

「旋風じ、うわあっ！！」

逆立ちして回転する間もなく、木暮はゼルにぶつかられ、転けさせられてしまう。
その横をゼルは颯爽と抜けゴール前でシュートを打った。

「ガニメデプロトン！」

「マジン・ザ・ハンド！！」

がっちりと、ボールを掴み円堂はシュートを止めた。

「くそっ！」

「ナイスセーブ！いい反応だったぞ！」

土門が円堂にガッツポーズを掲げる。
円堂は、そういえば…と自分の手を見つめた。
そんな中、タイミング良くピッピッピーと前半終了を知らせるホイッスルが鳴った。


拮抗
前回とは圧倒的に違う。