脅威の侵略者編
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源田からの突然の連絡。
何かあったか、と慌てて出れば、源田も佐久間も愛媛から東京へと病院を移すと言う連絡だった。
《あ、そうだ鬼道。水津に謝っといてくれ。手を貸そうとしてくれたのに、酷いことを言ってしまって悪かった、と》
そういえば、水津がゴールを決めた後、倒れた源田に合わせてしゃがんでいたな…。その時に何か言ったのか。
「水津か……」
《どうかしたのか?》
「え、ああ、いや……」
真・帝国の後から、水津とはほとんど会話をしていない。
佐久間達の怪我に、染岡の離脱で水津が目に見えて気落ちしてるから、話しかけ辛い。俺は人励ましたりは得意な方ではないからな。春奈たちマネージャーや、親しい土門なんかが気にかけてやっているし俺からどうこうことは無い。
《…え、あっ、おい、……鬼道》
源田の慌てるような声が耳元で聞こえたかと思えば、声が変わった。
「その声は佐久間か」
電話口でああ、と応えた佐久間の声は、救急車で運ばれる前とは違い覇気がある。
《今、あの女の話をしてた、だろ》
「あの女……。水津の事か?」
《ああ。そいつの事だが、あの場じゃ伝えられなかったからな》
確かに話ができる状態ではなかったが、わざわざ源田の電話を奪ってまで伝えたい事とは…?
少し嫌な予感がする。
《鬼道、お前たちは、アイツのこと何処まで知ってるんだ?》
「お節介で誰かが怪我しないか人一倍心配している奴、と言うこと以外は何も知らないな」
帝国にいた頃、スパイとして送った土門に調べさせたが水津の素性に関して何の情報も出てこなかった。
「ただ、水津が何かを隠しているのはみんな分かっている上で、アイツを信頼している」
《それは、本当に信頼して大丈夫なのか》
「怪しいのは確かだが、アイツの人となりを知ってるとな」
真・帝国戦だって、佐久間達を救うため尽力してくれた。
《……佐久間はあの子を疑っているのか?あの子、地区大会で敵だった俺たちを心配して、ロッカールームまで来てくれたって、お前ら言ってただろう》
少し離れた所からそう言う源田の声が聞こえる。
確かに、俺と源田と寺門が影山の所に話をしに向かってる間に、土門と共に、怪我がないかと帝国のみんなを心配しに来たと聞いた。
そういうところは、ずっとブレずに一緒なやつだ。
《それを知ってるからこそ俺は、雷門中の奴らに信用を得るための演技をしてるんじゃないかと思っている》
どういうことだ?と俺が聞く前に電話の向こうで源田が訊ねた。
佐久間の口振りは、確実な何かを知ってる、そんな感じだった。
《源田、お前も不動から聞いただろ。影山が水津を引き入れようとした理由──》
確かに水津の能力は優れていると思うが影山があそこまで固執する理由は分からない。
引っかかる点があるとするなら、初めて影山と水津を引き合わせたあの日、水津自身が言っていたチート能力というやつだ。そう、あの時水津が言っていたのは…
《水津がなんでも知ってる本物の宇宙人だから、だと不動は言っていた》
単純に私がこの世界の人間じゃないって事ですね。…そう水津は言っていた。
てっきり冗談だと思っていたが、そうだ、アイツの家に邪魔した時も、チートだと称して……。
「…水津が、宇宙人…?」
その線はまったく考えていなかった。
《お前たちが戦っているエイリア学園。その宇宙人たちもほとんど俺たち地球人と見た目が変わらないだろ》
確かに、今まで戦ってきたジェミニストームも、イプシロンも、動きこそ超人的なれど、見た目はさほど俺たちと変わらなかった。
あのユニホームを脱ぎ地球人に扮して紛れ込んでしまえば、見分けがつかない者もいるだろう。
「……唐突に雷門に現れたように、それ以前の情報がまったく出てこない女。言われてみれば宇宙人でもおかしくない。何より本人の口から、この世界の人間じゃないという、その発言を俺は聞いている」
《!?当たりじゃないか!》
「…そうだな」
そこだけ見ればそう、思える。
影山にエイリア学園との繋がりがあるなら、水津のあの態度で影山と接して何も無い事にも納得がいく。
フットボールフロンティア前から突如現れたのは、地球の戦力を調べる為の偵察部隊だったのかもしれない。
「しかし、不動の言い方が気になるな。なんでも知ってる本物の宇宙人、とはどういう事だ?」
なんでも知ってる、と言うのはあの試合の前に水津自身も、影山が自分をチームに入れたい理由として上げていた。
そして、本物の宇宙人とは?まるで本物じゃない宇宙人もいるような発言だ。
《その辺は俺もよく分からないが、勧誘失敗した不動が、未来が分かってる上で雷門に付くなんてアホって言いながらキレてたな》
「…未来?」
《ああ。実際、アイツは知ってただろ?俺たちがあの技を使うのを……。それでお前たちは止めようとしていたんじゃないのか?》
知っていた?水津は影山から聞いたと言っていたが、確かに、雷門を潰そうとしている影山が教えている方がおかしい。
水津は、雷門が戦いを拒否しないためだの言っていたが、あれは全部嘘だったと言うことか…?
《でも、宇宙人ならなんで俺たちを助けようとしてくれたんだろうな?》
源田の声でそう聞こえる。
《エイリア学園の宇宙人なら、こっちについて雷門を倒そうとするんじゃないか?》
源田の言う通り、水津の行動はおかしい。
「……、宇宙人はエイリア学園だけはない……?」
エイリア学園の中にもジェミニストームとイプシロンとあったくらいだ。
広い宇宙で、宇宙人がエイリア学園の宇宙人だけとは限らないたろう。
不動の本物の宇宙人と言うのも、そういう事かもしれない。
「エイリア学園に対抗しようとする他の宇宙人が居てもおかしくは、ない」
《有り得なくはないが…》
戦争でもよくある話だ。敵国の敵は味方というやつ。侵略で土地を増やし国力強化されては困るから、侵略されそうな土地を守る為に同盟を組共闘する。俺たちの知らない宇宙で、宇宙戦争が起こっているなら有り得なくはない。
《とにかく、宇宙人って事に変わりはないだろ?気をつけろよ》
ああ、と返事をすれば、そろそろ検診の時間だからと、そう言って佐久間は電話を切った。
修練場に戻る前に、変えのタオルを持って行こうと、なにわランド駐車場に停めてあるイナズマキャラバンに向かった。
外からキャラバンの中に人影が見える。
水津と木暮だった。
2人は何か話をしているようで、隣に並んで座っている。木暮に何かを言われた後、水津がその頭を優しく撫でるのが見えた。
「…宇宙人か」
とてもそうは見えない。
それにしてもあいつは人の頭を撫でるのが好きだな。よく後輩達にもしているのを見るし、やめろと言っても俺の頭も撫でてくる。 宇宙人の威圧行動だったりするのか?
とりあえず、用事を済ませようとキャラバンの扉を開ければ、入り口を見た木暮が、やべっ、という顔をした。
「なんだお前たち、サボりか?」
そう言えば木暮は違います、休憩です!と慌てた。
それを見て水津はくすくすと笑っている。
『もう戻るって言ってたところだよ』
「そうそう!じゃあ、オレは練習戻るから!」
じゃあね、と水津に言って木暮は、俺の横をヒューッと駆け抜けて逃げて行った。
「まったく……。しょうがない奴だな」
呆れて居れば、水津はまだ笑っている。木暮を見る水津の目は小さい兄弟を見ているようだな。
しかし、タイミングがいいのか悪いのか、2人だけになってしまった。
聞く、なら今か?
「……、それで。水津は、吹雪の様子を見てるんじゃなかったのか?」
とりあえず、普通の会話で様子見しよう。
『あー、うん。ちょっとね、どうしたらいいのか分かんなくて』
ずいぶんと歯切れの悪い返しだ。
なにがあった?と聞けば、いや、と水津は呟いた。
『何でもないよ。私が余計な事しちゃっただけ』
「余計な事?」
そう聞いて、黙って待っていれば、言っていいものか、というように悩んでいた水津はゆっくりと口を開いた。
『……吹雪、ずっとあの感じで動いてるから、水分補給してって声かけたんだけど……余計な事すんなって言われちゃった』
吹雪の様子がおかしいのは分かっていたが、そうか、そこまでか。しかし、
「………。円堂がああだった時は、何を言われても構い倒していただろう」
マジン・ザ・ハンドの練習に躍起になっていた円堂を唯一叱り飛ばしていた水津が、この調子とは……。
染岡の事もあって水津自身に元気がないのもあるんだろうが……。
『そう、だっけ……。もう何が正しいのかわかんないんだもん』
水津は、はああ、と長いため息を吐いて、手に持っていたテキストに顔を埋めた。
ふと、そのテキストの表紙を見る。
アスレティックリハビリテーション。
……リハビリに関する本か。気にしているんだろうな。染岡の事も、佐久間たちの事も。
Are you an alien?
なんて。
気落ちしている水津の様子を見たら、とても聞けはしなかった。