脅威の侵略者編
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「染岡、お前……!」
「う、……なん、だよ…」
円堂が声をかければ、呻き声を上げた後、何でもないような顔して染岡は腕と肘を支えに膝を曲げ、身体を起き上がらせようとした。
「くっ、」
「染岡くん!」
慌てて吹雪が、しゃがんで染岡の身体を起こすのに手を貸した。
「へっ、お前ら、大袈裟なんだよ……っ!」
その場に立ち上がろうとした染岡は、足に走った痛みに表情を歪ませた。
「無理すんなって!」
「無理なんかしてねぇよ!」
そう言って、真っ直ぐ立ち上がって見せた。
「な、大丈夫だろ?だから、この事、水津には言うなよ」
『誰に、何を言うなって……?』
後ろから、春奈ちゃんと木暮を引き連れて声をかける。
「「「水津!?」」」
みんなが驚いたような顔をする中、染岡は驚きとともにバツの悪そうな顔をした。
「もう帰ってきてたのか」
『とりあえず、1度座りなさい』
怒ったようにそう言って、支えていた吹雪に肩を貸すよう言って、ベンチに移動させる。
『……、私のせいでしょ』
「なんでお前のせいになるんだよ」
『だって、不動の、』
ワザとラフプレーを誘った時に、染岡は私を突き飛ばした。そして、その場で染岡も倒れてたのは、不動の足が当たって転ばされたから。
「アレは擦り傷だって、言ったろ。試合の後にマネージャーにも診てもらったし」
その言葉に秋ちゃんの方を見る。
「確かにあの時は擦り傷しかなかったけど……」
『じゃあ、さっきのあの痛がり方は何。まるで、佐久間のようだった!』
染岡の方を見直すと、それは…と目を逸らされた。
「染岡、いつから痛むんだ?水津の言うようにさっきのはまるで……」
佐久間達の事で心を傷めたばかりの鬼道が悲しそうな声色で詰めよれば、染岡は観念したように大きくため息を吐いた。
「昨日の移動の間だ」
「もしかして、あの時…、反応が悪かったのって…」
吹雪がサッと青い顔になる。
「ごめん。ボク、隣に座ってたのに気づかなくて」
「いや、俺も1日寝れば、良くなると思ったんだよ。同じようにシュートを受けた円堂も鬼道も大丈夫そうだったしな」
確かに、皇帝ペンギン1号を受けた直後は円堂も鬼道もダメージがあったようだけど。
2人ともは何ともなさそうだ。
『なんで染岡だけ……』
「とにかく2人も何ともねぇんだし、俺だって数日経てば…!」
「無理よ」
キッパリと吐き捨てるように言う声が、後ろから聞こえた。
「監督!」
いつの間にやらやって来ていた瞳子さんが近づいてくる。
「なんで無理って言えんだよ!」
「円堂くんと鬼道くんが受けた皇帝ペンギン1号はほんの一瞬だったけれど、直接、佐久間くんが蹴ろうとした皇帝ペンギン1号を蹴り返そうとした貴方はボールに触れていた時間が長く、ダメージ蓄積が多いんじゃないかしら。だから、他2人にない痛みが今も体を走ってる」
そう言われれば、そうだ。
そして、それは私が知っていた状況と若干違う事になった所で……。
私が、あの場で変わらなければ……。
「けど、1週間もあれば…!」
「いいえ。響木さんから聞いたけれど、佐久間くんの容態は数週間で治るようなものじゃないそうだわ」
佐久間……と呟いて、鬼道が顔を歪ませる。
『たしか、横紋…筋融解症?とかいう症状が出るって……』
「ええ。だから、染岡くん貴方もちゃんと検査するべきだわ」
「けどよ、それで入院になったら…、次のイプシロン戦まで1週間しかねぇんだ!せっかく完璧になったワイバーンブリザードはどうなるんだよ!!なぁ、吹雪!!」
「ごめんね。気づけなかったボクのせいだ」
「前半戦だけでもいい!試合に出してくれよ!」
「いいえ。染岡くん、貴方にはチームを抜けてもらいます」
えっ、とみんなが驚きの声を上げる。
検査して症状が分かったわけでもないのに、って所だろう。
「そんな、染岡は…!」
「本人がやると言ってるんです!!やらせてやってもいいじゃありませんか!今の俺たちに必要なのは、自分の体がどうなろうと勝つという気迫です!」
珍しく、風丸が反発し大声を上げた。
それじゃあ佐久間たちの二の舞じゃん、とは私の口からは言えないか。このお腹の怪我は似たような事をしようとした結果だし。
「風丸…」
「円堂、お前だって分かるだろ!染岡は最初から雷門サッカー部を支えてきた仲間なんだ!」
「仲間だからこそよ」
またもキッパリと言い切る瞳子さんを風丸が睨むように見た。
「彼はきっとチームの為に無理をする。そうなれば、みんなが彼を気遣って満足に戦えなくなるわ」
「でも!!」
風丸が反論しようとした所で、ベンチからバシッと叩きつけるような音がした。
「もういい、風丸…。悔しいけど監督の言う通りだ。仕方ねぇよ」
そう言って悔しそうにした染岡は、バっと顔を上げて吹雪を見た。
「吹雪!雷門のストライカー任せたぜ」
「……、あぁ…」
困ったように、吹雪が頷く。
「なんだよみんな、そんな顔すんな!1次撤退ってやつだ」
染岡が空元気に笑って見せるのが辛くて唇を噛む。
「また、直ぐに戻ってくる!」
「必ず、戻ってこいよ」
そう言って円堂が、ポンと染岡の肩に手を置いた。
戦線離脱
「お前に散々言っときながらこのザマで、怒ってるだろ」
『……怒れるわけないじゃん。私も同じことしたし』
隣に座った染岡がそうかと呟きフィールドを見つめる。
お通夜状態の空気を変えるように、春奈ちゃんが提案し、木暮の完成した技をみんなに見てもらっている。
四方八方からシュートを打ってもらって、それを逆立ちした木暮が回転しながら跳ね返していく。
『…ごめんね、私が余計なことしなければ』
ただの足の怪我で済んだかもしれない。
「別にお前のせいじゃねぇって……。はあ、もう。だからお前には知られたくなかったんだよ」
そう言って染岡は、ポンと私の頭の上に手を置いた。
それは染岡の優しさなんだろうけど、違うんだよ。私のせいで余計な痛みを味合わせてるんだよ。
「あんま気にすんなよ」
『……うん』
優しくなんかしないでくれ。
「みんなのこと頼むな」
『うん…』
「泣くなよ」
『……泣いてない』
すん、と鼻をすすれば染岡はまた、そうかと言った後、不器用に私の頭を撫でるのだった。