脅威の侵略者編
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「水津!」
ドンッ、という衝撃に、えっ?と目を見開いた。
衝撃を受けたのは脚ではなく肩。
私の名を呼んだ染岡が、肩からぶつかり横へと飛ばした。
一緒に染岡もフィールドに倒れ、審判がピッピッーとけたたましくホイッスルを鳴らした。ラフプレーとして、不動と染岡、2人に1枚ずつイエロカードが突きつけられる。
「梅雨!染岡!」
「大丈夫!?」
心配して塔子ちゃんと一之瀬が駆け寄ってくる。
『…私は、大丈夫、だけど…』
「ッ…」
呻き声にもしかして、と倒れたままの染岡に視線を動かす。私の代わりに不動の蹴りを喰らった…?
「染岡!」
「大丈夫だ……。ちょっと掠ったが問題ねぇよ」
そう言って染岡は体を起こして立ち上がる。
「それよりも!!水津!今の避ける気なかっただろ!!」
ふざけんなよ!!と怒鳴りながら近づいてきた染岡から思わず目を逸らす。
『いやぁ……その、ね…』
「わざとヘイト買うようなことしやがって!!」
「へぇ。水津、もしかしてさっきのパスカットもその為かな」
染岡だけじゃなくて、一之瀬も怒った表情に変わった。
『いや、あの……不動がシュートを打たせないために足を狙って来るだろうな…と思いまして。その…、それなら犠牲になるのはすでにダメージを追ってる私が適任かな、と…』
「梅雨〜?」
じとぉと塔子ちゃんの目も怒ったように変わる。
「無茶すんなって言ったよな」
『それは……、うん、言われたね』
「お前、世宇子中の後から何も変わんねぇな……。俺たちはそんなに信用ねえのかよ!」
吐き捨てるようにそう言われ、思わず顔を向ける。
試合前に鬼道にも同じことを言われた。
『違ッ、「違わねえよ!!無茶せず任せろって、俺も吹雪も言ったよな。なんで、お前はいつも1人で解決しようとすんだよ!!」
『それは……』
そんなの、みんなには言えないからに決まってるじゃないか……。
みんなが信用出来ないから言えないんじゃない。きっと私が未来を教えたところで楽を選ぶかもしれないが、悪用はしないと思うし。
だけど、私が教えたせいで万が一、事の顛末が変わったら?どう責任を取れと…?
佐久間と源田を助ける為とか言いながら、結局大きく変わることが怖いから雷門が真・帝国と戦う道を選んだ。
自分でも矛盾してると思う。
それでも、今回変えようとした事に意味がなかったとは思わない。現に、源田は2回ビーストファングを使うはずだった所を1回だけで抑えられている。本当は1回も使わせたくはなかったけど。
「染岡、ちょっと怒り過ぎだって」
私が黙りを決め込んだせいか、塔子ちゃんがどうどうと染岡をなだめ始めた。だけど、染岡はそれを振りほどいて私の手首を掴んで、そのままズンズンと大股で歩き出す。
『え、』
「染岡!?」
染岡に引っ張られる形でサイドラインを超え、フィールドの外に出され、そのまま監督とマネージャーがいるベンチまで連れていかれた。
「木野、コイツの腹見てくれ」
そう言って秋ちゃんの前に押し出される。
「え?お腹…って、まさか……!」
青い顔した後、秋ちゃんは捲るよと言って、私のユニフォームをペラと捲って見せた。
「梅雨ちゃん、この痣。もしかしてさっきの…!」
『えっーと…、』
「梅雨先輩こんな状態でプレーしてたんですか!?」
慌てた様子で、春奈ちゃんがベンチの上の救急箱を取る。
「そういうわけだ。監督、コイツと木暮交代させてくれ」
『待って、大丈夫だから、「大丈夫なわけねぇだろ!!」
怒鳴られて、びくりと肩を揺らす。
染岡がキレやすいとは言え、こんなに怒ってんのは初めてかもしれない。
「お前が、誰かが怪我すんの見たくないように、俺だってなぁ!お前が怪我すんのは見たくねぇんだよ!!」
『…、染岡……』
言われた言葉が、すん、と胸に落ちた。
ああ、そうか。そうだよね。
染岡はずっと心配してくれてた。それなのに、私は……。
『ごめん』
「分かったんなら、大人しくベンチにいろ」
『うん…』
コクリ、と頷けば、染岡は大人しくしとけと、もう一度言って踵を返してフィールドに帰っていく。
「木暮くん、水津さんと交代よ。行って」
「え、お、おう……!」
怒ってる染岡の様子にビクビクとしていた木暮が、瞳子さんの指示でピューっと駆け抜けて私の横を過ぎて行く。
「水津ちゃん、大丈夫?」
『…うん。痛いな』
心が。
「そりゃあ、こんな状態で試合続けてたら痛いに決まってるじゃないですか!!」
『ひゃっ、』
プンプンと怒る春奈ちゃんによって患部に氷嚢が当てられた。
「冷たくても我慢して下さいね。腫れが酷いんですから!」
『うっ。はい…』
こればっかりは放置した自分が悪いしな、と受け入れて試合が再開したフィールドを見つめる。
試合は接戦、いや、私が抜けた分、中盤が薄くなっているのと、不動のラフプレーを警戒して、ボールキープがキツくなってきていて若干、真・帝国側が押している状況だ。
「オラァーー!!」
「ヒェッ!!」
不動がボールをトラップした木暮にすかさず、スライディングを仕掛ければ、反射神経のいい木暮は悲鳴を上げつつ、ボールを置いて体は横に避けた。
「佐久間!」
不動はそのボールを蹴りあげ、速攻で佐久間にパスを出した。
「しまった!」
「これで、決める!!」
「やめろ佐久間ー!!」
鬼道が叫び佐久間に駆け寄ろうとすれば、横から不動が鬼道にタックルし足を止める。
その間にボコボコと地中から飛び出したペンギン達が次々に佐久間の足に突き刺さる。
『くそ、』
フィールドに居たら、止めれたかもしれないのに…。
「ウッアアアア!!」
佐久間がボールに大きく足を振り下ろした。
足がボールにぶつかったが、ボールは飛んで行かない。
「させねぇ!!…ぐっ!!」
いつの間にかディフェンスラインに下がってた染岡が、思い切りボールを蹴り返す事で、ボールが2人の間に挟まり動きが止まっていた。
「ッ、邪魔だ!どけ、…ッぐああああああああ!」
蹴り返す力を込めようとしたであろう佐久間が、ぴきりと、背を反らし悲鳴を上げた。
それにより、支えを失ったボールがポロンと転がった。
「ッ、くっ。おい、佐久間!?」
皇帝ペンギン1号を打ちかけていたボールに触れていたからか、染岡も痛みがあるのか顔を歪めながら、急に動かなくなった佐久間を見た。
「佐久間!?」
佐久間ははくはく、と金魚のように口を開いたり閉じたりしている。
そして、そのままどさりと音を立てて後ろに倒れた。
「佐久間…?」
ピッピッピーッとホイッスルが鳴る。
「試合終了!2-2、引き分けだぁ!」
『瞳子さん!!!』
早く、と彼女を見れば、分かっていますと携帯電話を取り出した。
結局
佐久間は救えなかった。
あのままフィールドに居たら何か違っただろうか。
けど、心配してくれた彼を2回も無視してまで、あのままフィールドに居続けれるほど、私の神経は図太くなかった。