脅威の侵略者編
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漫遊寺中で、影山の名を出てきた奴に会った、そう言った後から、水津の雰囲気が何となく世宇子中との試合の日の水津と同じなような気がしていた。
また、こいつは1人で思い詰めて何かやろうとしている。だから1人で影山について行こうとしたのも止めた。
けど、こいつは人の言うことなんか聞かないで、真っ先に心配した俺よりも円堂を選んで連れてったってのに、結局1人で影山と話をしたと言う。
水津が影山につくことは無いと思ってはいたけど、影山側が何をするか分かったもんじゃねぇから、ちゃんと戻ってきてホッとしたと同時に、いつもと違い、自ら試合に出たいと言う水津に一抹の不安を覚えた。
影山から、佐久間と源田の使用する技がどんなものか聞かされた、と言う話から、誰かの怪我を人一倍心配する水津がそんなもの無視出来るはずないのも分かる。だけど、それを聞いた水津が、今までの経験則から言えば無茶しないわけがなかった。
だから、注視していた。
「さっき、どうやって避けた」
『え?』
後半戦キックオフで、ボールを持った不動がドリブルしながら近づいて、そう言われた水津の方は心底驚いたような顔をしていた。
「まあいい」
そう言って不動は、水津の前で一瞬止まって、水津の身体にボールをパスした。
『え?……あっ、』
突然パスされ驚いたような顔をした水津はボールをトラップした後、直ぐに青ざめた。
「もう1回試して見りゃあ分かるよなァ!」
目をかっぴらいて口角を吊り上げた不動を見て、嫌な予感がして慌てて駆ける。
「ジャッジスルー2!」
そう言って不動は、水津がトラップしたボールに連続蹴りを入れ、最後にボールごと水津の身体をを蹴り飛ばした。
『う、ぐっ、』
「水津!」
ジャッジスルー2、その名の通り審判は気づかなかったのか、イエローカードは切られないで、皆が吹っ飛ばされた水津に気を取られる中、試合は止まらない。
「行け、佐久間!」
「しまった、ボールが!!」
コロコロと転がったボールを佐久間が踏みつけた。
「皇帝ペンギン…」
「やめろー!」
鬼道の叫び虚しく、佐久間の指笛と共に飛び出したペンギンが、足に食らいつき身体にダメージを与える。
「…1号!!」
シュートを放った後、佐久間は背を反らしながら、うわぁあああと悲鳴を上げる。
「逃げるわけにはいかない!マジン・ザ……」
円堂くん!やめて!とベンチからマネージャーたちの悲鳴が聞こえる中、ゴール前に鬼道が駆けつける。
「ぐああああああっ!!!」
鬼道が蹴り返そうと、円堂とボールの間に入ったが、シュートの威力と激痛によって弾き飛ばされる。
「お兄ちゃん!」
「マジン・ザ・ハンド!!」
鬼道の作った時間で、力を貯めたマンジン・ザ・ハンドで円堂が迎え打つ。
だが、ボールは魔人の手をすり抜けてゴールに突き刺さった。
ピピッーとホイッスルがなり、角馬がゴォーーーール!!と実況で叫ぶ。
最悪だった。皇帝ペンギン1号に触れた円堂は痛むのか手を押え、鬼道も地に膝をついて肩で息をしている。
シュートを打った本人は、依然として呻き声を上げ、全身の痛みに耐えている。
そして、
「水津!」
ジャッジスルー2を食らった水津は、ぐったりとフィールドに倒れ込んだままだ。
しゃがみこんで見れば、水津は痛むのか腹を押さえ込み、小さく呻き声を上げている。
「てめぇ、わざとやったな!!」
そう言って吹雪も駆け寄ってきて不動を怒鳴りつける。
吹雪と同じように不動を睨みあげれば、奴はニヤリと笑った。
「いやいや、水津チャンなら避けると思ったんだぜ?さっきみたいに」
「てめぇ!!」
「ふざけんな!!」
1発殴ってやる、と立ち上がれば、グンとしたからユニフォームの裾を引っ張られた。
『やめ、な……。染岡も、吹雪、も……っ』
上半身を起こし、左手で胸を押さえ咳き込みながら、水津の右手が、がっしりと俺のユニフォームを掴んで離さない。
『……っ、乱闘は、1発退場、になる。ケホッ、それ、狙ってん、でしょ…』
ぎろり、と不動を睨みつけながら言う水津を見て、握った拳を下に降ろす。
「チッ。…流石元レッドカード退場者は違うねぇ〜」
『…、うるせぇ、ハゲ…』
嫌味を言いながら自分のポジションに戻っていく不動の背中にそう吐き捨てて立ち上がった水津が、ぐらりと前に倒れかかり慌てて受け止める。
「水津!」
『ごめ、…ありが、とう』
青い顔でそう言う水津を見て、ベンチの方へ顔を向ける。
「監督、『待って、』
交代を、と思い呼べば、支えていた俺の腕を押し返し、1人で立ち直した。
『大丈夫です!』
そう言って水津は監督に向かってブンブンと右手を大きく振った。
けど、左手は腹部に添えるように置いてある。
「あ、おい」
「馬鹿かお前!大丈夫なわけねえだろ!!」
吹雪が言うのが本当だと頷けば、水津は困ったように笑って見せた。
『…足じゃなかったから、大丈夫。まだ、ボール蹴れるから』
「そういう問題じゃ…」
『お願い。……二度と動けなくなる辛さ、誰よりも分かっ、てるの。あの子たちを、助けなきゃ』
そう、泣きそうな顔で水津が言って思わず黙った。
「……無理すんなよ」
「いいのかよ染岡!」
「俺と吹雪なら、水津が前半1人で動いてた分カバーできるだろ」
「…まあな。俺1人でも水津分くらい余裕だけどな」
正直、前半戦ほぼ1人でボールキープしてた時間が試合の3分の2はある水津ほど、動くってなると相当キツいだろうけどな。
水津が飛んだり跳ねたり、突拍子もない動きをするから、出来ていた事であって……。
しかも、取られた分の点を取り返さないといけない。
「しょうがねぇ。点も俺が決めてやるから無茶すんじゃねーぞ」
そう言って吹雪が一足先に最前線へ戻っていく。
『ありがと、ね』
「…まあ、俺も同じ状況なら同じこと言うだろうしな」
俺が怪我をしたとして、目の前の佐久間と源田の状況を見たら、俺でも無茶を通してアイツらを影山から救わねぇとと思うだろう。
『これ以上の、最悪は、避けないと…』
「っても、点を決めねえと負けになるし…。レインドロップでも反応した源田をどうやって、必殺技使わせないか、だよな」
『それ、なんだけど、』
ヒソヒソと、水津に耳打ちされる。
苦しそうな声で、一つ一つゆっくりと説明される。
『でき、そう?』
君じゃないと、多分出来ない。そう言われたら、
やるしかねぇだろ
これ以上、水津に無茶させない為にも。