脅威の侵略者編
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基本的には私がボールをキープしつつ、危なくなったらパスを回し回避する。この戦法で何とか前半は彼らを傷付けることなく終わりそうだが……。
「ちょこまかと……!」
「クソうぜぇ…!!」
真・帝国イレブンは、振り回されてイライラが募っているようで、ラフプレーが多くなってきた。そんな中、
「おい、佐久間」
不動が佐久間に声をかけてコチラに聞こえないように何かの作戦を伝えている。
ちらりと後ろの鬼道を見れば、彼は頷いた。要警戒、といったところだ。
そしてその更に後ろで、ボールを奪いに来た青い布で顔を隠した小柄な少年、日柄を疾風ダッシュで抜き去る風丸がいた。
「水津!」
その勢いのまま風丸からボールが飛んできて、トラップした所で両サイドからスライディングを仕掛けてくる佐久間と不動が目に入った。挟み撃ちか。
ボールをふくらはぎの間に挟んで上に跳ぶ。
『!?』
ヤバい。跳んでから気がついた。
実際に跳び上がった足元までスライディングで到着しているのは佐久間だけで、不動はスライディング距離を短くして、そこから彼は助走をつけて跳び上がった。
やられた。わざと、佐久間と作戦会議してる所を見せつけて、同タイミングでスライディングを初めたとコチラに思わせる……。
「水津チャン昔、足怪我してたんだっけ!!」
『ま、さか』
ニヤッと笑った不動は、ボールではなく私の足を目掛けて、回し蹴りのように足を振った。
空中では、避けられない。
思わず恐怖で目を瞑る。
どさり、と地に落ちて、背中が痛い。
「「水津!!」」
何人かが名を呼ぶ。
あれ……?
足の痛みは、ない。
何故だと目を開けて、不動を見る。
「は……?」
足を狙うというこれもブラフだったのか、と彼を見たが、地に立った状態で着地した不動も怪訝そうな顔をしていた所を見ると、彼は足目掛けて蹴ったはずだ。
「やめろ佐久間!!」
鬼道の叫び声の後に聞こえたピュィという指笛の音で、ハッと意識をそちらに向ける。
そうだ、ボール!!
落ちる時に離れたであろうサッカーボールは、佐久間の足元にあり彼の周りに赤い色のペンギンが舞う。
「皇帝ペンギン、…ぐっ!」
左足だけで曲げた体を支え、後ろに振り上げた右足にペンギン達が突き刺さっていく。
「やめろー!!!」
「ッ…1号!!!」
足の振り下ろし共に、ボールとペンギン達がゴール目掛けて飛んで行ってしまった。
「うわっ…!!」
『くそっ!!』
起き上がりながら、ギリッ、と唇を噛む。
結局打たせてしまった。
佐久間は全身の痛みから体を両手で抑え悶えるている。
「ゴッドハンド!!」
円堂がゴッドハンドの5本の指でペンギン達を抑える。だが、ピキピキとゴッドハンドに亀裂が入り、ガラスのようにパリンと割れて、円堂ごとボールがゴールに突き刺さった。
「ゴーーール!!真・帝国学園先制!佐久間のシュートが円堂を吹き飛ばした!」
「おおー!素晴らしい!!」
不動が瞳孔を開いて、喜びの声を上げる。
素晴らしいものか…!!
「体中が痛い…こんなシュート初めてだ…!」
シュートを受けた円堂は、地に座ったまま、ビリビリと痺れる手を見つめている。
そんなシュートを打った佐久間は、ゼェゼェと肩で息をし、頭を垂れるように地に伏している。
「佐久間……なぜ!」
悲しそうに鬼道が問えば、佐久間はフッと鼻で笑って起き上がった。
「見たか!鬼道!これが皇帝ペンギン1号!」
「二度と打つな!!あれは禁断の技だ!!分からないのか?このままではお前の身体は…!!」
「…敗北に価値はない。勝利の為なら、俺は何度でも打つ」
そう言って、佐久間は明らかに思い足取りで鬼道の横を通り過ぎ、真・帝国側のフィールドに戻っていく。
「佐久間……」
鬼道は苦しそうな顔をして、恐らく影山がいるであろう、高い所を睨みつけた。
『……、馬鹿ね。身体を壊した後に、勝利なんて何の役にも立たないのに…』
「水津!」
名を呼んで染岡が駆け寄ってきた。
「お前、大丈夫か?」
「アイツ、わざと足狙ったでしょ」
怒った様子の、一之瀬も寄ってきた。
同じ怪我組としては、わざと足を狙うのも、佐久間達にあの技を使わせるのも許せないだろうね。
『大丈夫。上手いこと当たらなかった』
…不動のミスかは分からないが、当たってはいない。
『けど、ごめん。ボール離しちゃった』
「いや、あれは仕方ないよ。俺でも怪我した所狙われたら、と思うとゾッとする」
『うん。一之瀬も気をつけて。ユース代表に選ばれてるから、怪我の事も調べられてるはず』
アメリカのユース代表に選ばれた日本人選手なんて、記事にされまくってるだろうし。
その辺、影山さんなら抜かりないだろうしね。
「うわ、」
ぶるり、と一之瀬が身震いした。
「お前ら2人とも気をつけろよ」
「うん。でもこれ以上、佐久間にボール回させない為に頑張るよ。怪我の苦しみは俺らが1番わかるからね」
『ええ。これ以上は死んでも打たせない』
一之瀬の言葉に頷いて真顔でそう言えば、
「いや、気をつけろって言ってんだから死ぬなよ」
と染岡から真面目なツッコミが帰ってきた。
不首尾
結局やっぱり何をしても何も変わらないのかもしれない。それでも、最悪は避けたいから。