脅威の侵略者編
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「そこの門から入ってくれよ」
不動の案内の元工場地帯を進んで、門を潜れば、貨物船の荷物を保管する倉庫地帯でその先は海になっていた。
「どこにも学校なんかないじゃないか」
キャラバンを降りて、辺りを見渡すが、やはり正面にあるのは海で、後ろに並んでいる建物は貨物倉庫だ。
「てめぇっ!やっぱ、俺たちを騙したのか!」
染岡が噛み付けば、不動はやれやれと言ったように腰に手を当てた。
「短気な奴だなぁ。真・帝国学園だったら、ほら」
そう言って不動は何も無い海の方を指さした。
それに一同は困惑したような声を上げながら、海を見た。
ドンッ。
地鳴りのような音がしたかと思えば、ザパーンと海面を突き破り潜水艦が現れた。
「これは……!」
一同騒然とその艦を見上げていれば、潜水艦の上部が、ギギギ、と重そうな音を立てながら2つに割れて、開閉式のドームの天井のように開いて潜水艦の中身を露出させた。
どういう構造だよ、と思わずツッコミたくなる潜水艦の中身は、サッカースタジアムになっていた。いやまあ、世宇子の空飛ぶスタジアムよりかは現実味あるけど。
潜水艦の側面にあった、長方形の切れ込み。その部分が機械音と共に上にスライドして、長方形の空洞ができた。すると直ぐにその空洞から、タラップが降りてきて潜水艦と港を結んだ。
そのタラップの1番上に、サングラスをかけた細身の男が現れた。
「影山!」
円堂がいち早く気づき叫べば、上に立ったままの影山はニヤリと口元を歪ませた。
「久しぶりだな、円堂。そして鬼道に水津」
私の名もそこで呼ぶって事は、やっぱり騙したこと根に持ってんね。
「影山ァ!!!」
怒りを含む鬼道の叫びに、影山は残念そうな顔を見せた。
「もう総帥とは呼んでくれんのか」
「ッ!今度は何を企んでるんだ!!」
「私の計画はお前たちには理解出来ん。この真・帝国学園の意味さえもな」
ぎり、と歯を食いしばり怒りに震える鬼道を影山は蔑むように見た。
「私から逃げ出したりしなければお前には分かったはずだ」
「……!!俺は逃げたんじゃない!!アンタと決別したんだ!!」
ビシッと指を突き刺して叫ぶ鬼道に影山は、どこか満足そうに笑っていた。
「影山零治!貴方はエイリア学園と何か関係があるの?」
「吉良、瞳子監督だね」
影山はわざと、吉良の部分を強く発した。それに気づいた瞳子さんは表情を曇らせた。
「さて、どうかな?ただ、エイリア皇帝陛下のお力を借りているのは事実だ」
「エイリア皇帝陛下?」
「誰だよ、そいつは」
「宇宙人の親玉ッスかね……!」
皆が、新しい人物の名に困惑と推測を立てる中、瞳子さんの表情は益々と曇っていく。
「そうか、お前たちは知らないのか」
そう言った影山は、私の方を見て口元に弧を描いて見せた。
「水津梅雨。2人で話をしようじゃないか」
『え...?』
思わず口をぽかんと開く。ここに来るまでの不動の感じからしても、影山は知っている筈だし、私が異世界人だと言うのを暴露するつもりだろうと身構えていた。異世界人も宇宙人も別の所から来たと言う点で、皆にとっては同じようなもので混乱を引き起こし、先の未来がどうなるか知っていたのに黙っていたという情報は、私と皆を仲違いさせるにうってつけの材料の筈だ。
それなのに、それを手札として使わない理由はなんだ?
皆が既に知っていると思っている……というのは不動の感じからしてない。とすればだ、私が皆にとって利益になるはずの情報開示をしない理由がわからないから、迂闊なことはしない、といったところだろうか。
「お前の望みだっただろう。私のエスコートを」
『......?』
ああ!もしかして結構前...、御影専農の時だっけ?に鬼道に伝言お願いしたやつのことか。
『なるほど。水上デート悪くないですね。いいですよ』
そう言って前に踏み出せば、後ろからガシッと腕を掴まれた。
「馬鹿ッ!お前!!何考えてんだよ!!」
頭だけ振り返れば、私の腕を掴んだ染岡が眉間に皺を寄せ眉を吊り上げていた。
「あんな奴にホイホイ付いて行くな!
!」
「そうだぜ。何されるか分かったもんじゃねぇんだから!」
染岡に続いて土門がそう言い、周りの皆もうんうん、と頷いている。
『あー』
まあ、そりゃあそう。私がみんなの立場なら止めてる。
「フッ、そんなに心配なら仕方あるまい。1人、ついてくるといい。そして、鬼道も。昔の仲間に合わせてあげよう」
そう言って影山は踵を返し、潜水艦の中へと消えていった。
「くっ……!」
「それじゃあ、水津チャンと鬼道クンともう1人をご招待。誰が来るよ」
「「俺が行く!」」
円堂と染岡の声が被る。
「アタシも行く!梅雨が心配だ!!」
ハイッと塔子ちゃんまで手を挙げれば、他の子達も、俺も、と手を挙げた。
「おいおい、1人だって言ったろ。それに、これから鬼道クンは感動の再会だしゾロゾロと着いてくのは野暮ってもんだろ?だから1人だけだ。水津チャンが好きに選んでいいぜ」
『好きにって......』
もう決まってるようなもんだけど...。
ふと、染岡と目が合った。
ここのところずっと心配してくれてるのは分かっているが......。
『円堂で』
そう答える。
最初から一択だ。元々円堂が着いてく所と言うのもあるが、影山との話の内容によっては円堂の方が難しい話は分かんないだろうから、後が楽だ。
「そう、かよ...」
少し悲しそうな顔をした染岡に、申し訳なくなる。
「染岡。水津は俺たちが守るから心配するな。影山には指1本触れさせん」
「ああ!任せてくれ!」
不動にあってからずっと怖い顔したままの鬼道と、頼もしい円堂がそう言って染岡は頷いた。
「...、頼むぞ鬼道、円堂。水津、危ないことすんなよ」
『うーん、それは影山の態度によるかなぁ』
「お前なぁ...」
『最近じゃあすっかり逆だね』
私の方が、危ないことするなって怒ってたはずなんだけどなぁ。
「分かってんなら、無茶すんなよ。マジで」
『...ん。わかった。とりあえず、すぐに試合になるだろうから、みんなのアップさせといてね』
頼んだよと、トントンと染岡の肩を叩く。
そうして、不動を見れば彼は、んじゃあ、と口を開いた。
3名様ご案内
そう言った不動のガイドの元、潜水艦入口までの長いタラップを駆け上がった。