脅威の侵略者編
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漫遊寺から出発したイナズマキャラバンは、新しく入った木暮によって一段と賑やかになった。が、まあ、イタズラし放題で手に負えない。その度に春奈ちゃんが怒ってはいるものの、木暮が懲りるわけがない。
そんな様子で進むイナズマキャラバンの前方で、ビビビと着信音が鳴り瞳子さんが携帯電話を取り出した。
画面を開いた彼女が、響木さんからだわ、と呟けば、お喋りしていた皆がピタッと話をやめて瞳子さんの方に耳を傾けた。
「脱走した影山が、愛媛に真帝国学園を設立した...?」
「「なっ!!」」
円堂と鬼道がいち早く反応を見せる。
「なんだって!?」
「水津に接触して来たヤツが言ってた事はホントだったって事か」
隣でそう言う染岡に、そうみたいだね、と頷く。
「しかも、"真"帝国学園だって!?」
後ろの席からは、元帝国学園だった土門が怒ったような声を上げる。
そして同じく、元帝国学園、サッカー部キャプテンだった鬼道が通路を挟んだ斜め前の席で、歯を食いしばり拳を握りしめている。
「鬼道?」
鬼道の隣に座った塔子ちゃんは、不思議そうに彼を見つめている。
この旅が始まってから集まった子達は、鬼道と影山の確執を知らないから仕方ない。
「よし、愛媛に行こう!」
「ああ。影山のやろうとしてることぶっ潰そう!」
円堂の言葉に土門が乗っかれば、前の席に座る夏未ちゃんもそうよ!と声を上げた。
鬼道を除けばこの3人も影山に関わりがある子達だから熱が入るのは仕方ない。
「なあ、影山って昨日梅雨の足止めしてきた奴が言ったのと同じ人だよな?」
振り返って尋ねてきた塔子ちゃんに、うん、と頷く。
『中学サッカー協会の副会長だった人だよ』
「ああ。そして帝国学園の総帥だった。俺たちのチームの...」
「なんで、そんな人があたし達の邪魔してくるんだ?」
『あー...一般には捕まった理由詳しく公開されてないんだっけ?』
「世宇子中の選手にドーピング違反があってそれを指揮してたのが、その監督の影山だったってやつじゃないのか?」
「僕も、それならニュースで見たよ」
そう言う塔子ちゃんと吹雪。木暮はまあニュースなんて見てないだろうから、なんのこっちゃって顔してるけど。一般には、そういう理由で逮捕になってる。
『まあ、それもあるんだけどね。影山がやってたのは、それだけじゃないんだよ。脅しから殺人まで何でもごされ』
「勝つためなら手段を選ばない奴だったんだよ」
「それも自分の手は汚さず、人を使って相手チームを蹴落とそうとする」
「なんだそれ、汚ねぇの...!」
塔子ちゃんの顔が険しくなりそういえば、風丸が、ああ、と頷く。
「卑怯が服を着て歩いているような男さ」
「そいつが脱走したんだ。しかも、わざわざ水津に接触を計ってきた」
『まあ、純粋に考えて私にはやられたことの仕返ししようってところだろうけどね』
騙されたこと根に持ってるかなー。
それに、影山からすれば私の先を知っているというチートは欲しいもんなぁ。
『けど、わざわざ真帝国学園なんてものを作るくらいだもの、』
「またサッカーを使って何か企んでるのか...!」
円堂はやり切れない気持ちを拳に乗せ手のひらにぶつける。
「うわぁ!!」
暗い雰囲気になっていた空気をぶち破るかのように1番後ろの席の壁山が大声を上げた。
「壁山!?どうした!?」
皆が一斉に振り返ると、何故だか壁山は鏡を片手に後ろを向いていた。
「木暮くんが酷いんッス...!これ見てくださいよ...!」
そう言って振り返った壁山の顔は、太いマーカーの線で書き殴られていた。
「「「あははははは!!!」」」
キャラバン内が大爆笑に包まれる。
やった本人はケケケと笑いながら、壁山から逃げるように前の席へと走る。
「居眠りした隙に...って!なんでみんな笑うんッスか!!」
大爆笑のみんなを見て壁山は悲しそうな顔をしてる。
可哀想だけど、大事な話をしてる時に居眠りしてたんだ。罰だよ罰。
「った、ハッ、わ、笑ってなんか、ないよ!!」
それは笑ってるよ円堂。ははは!と他のみんなの笑い声も収まらない。
そんな中、前の席の春奈ちゃんが軽く腰を浮かせ後ろ向きに顔を覗かせた。
「小暮くん!!」
みんなと一緒になって笑っていた木暮はビクッと肩を揺らした。
「シートベルトはちゃんとする!席から立たない!守れないなら降りてもらうわよ!」
怒られた木暮は何食わぬ顔をして、土門の隣の席に戻りシートベルトをした。
「しょうがない奴だなぁ」
「もう」
呆れながら春奈ちゃんが席に座りなおす。
すると、キャラバン内に、ブーーーっという音が響いた。
えっ、と静まり返るキャラバン内で、春奈ちゃんが後ろから見ても分かるほど耳まで真っ赤に顔を染めた。
そして春奈ちゃんは自分のおしりの下に手を伸ばし、あるものを掴んだ。
『ブーブークッションかぁ』
実に古典的だが、やられた方は堪らないな。
「こ、木暮くん!!!」
怒鳴る春奈ちゃんなんか気にせず、木暮はクシシシと後ろで笑っている。
『春奈ちゃん、立ち上がったら危ないわよ』
「梅雨先輩〜ッ!だって木暮くんが!!」
立ち膝で座席に反対向きで座った春奈ちゃんは、私達の後ろの席の木暮を睨みつけている。
腕を伸ばしてよしよしと春奈ちゃんの頭を撫でる。
『木暮。壁山と春奈ちゃんに、ごめんなさいは?』
「えー」
首を後ろに向けて見れば木暮は嫌そうな顔をしている。
『嫌なの?』
「だって間抜けなコイツらが悪いんだし」
ケロッとそう言う木暮に、そう、と頷いて頭を前に戻すと、後ろから土門が小声で木暮、木暮!と言うのが聞こえる。
「梅雨ちゃんが怒んない内に謝っといた方がいいって」
『さーて、春奈ちゃん。新しく入った子のトレーニングメニュー考えようと思うんだけど、どうがいいかな〜。とりあえず筋トレ系は100×3セットずつかなぁ』
そう大きな声で言えば、春奈ちゃんがバッと振り返って嬉しそうな顔を見せた。
「いいですね!DFですから体を強固にしてもらわないとですもんね!」
『うん。小柄だからね、ビシバシ鍛えていこうね』
新しく入った小柄なDFなんてただ1人。
ちらりと後ろを見れば、木暮はマジ?といったような青い顔をしていた。
「木暮、水津ならマジでそのメニューで組むぞ」
隣の染岡も振り返ってそう言えば木暮は、うー、と唸った。
「木暮。梅雨ちゃんはトレーニングメニュー構成を監督から一任されているから本当にヤバいぞ」
更に土門が追い打ちをかけるように言えば、木暮は、あーもう!と大声を上げた。
「謝ればいいんだろ!!悪かったよ!!」
『ふむ。どうですかな、春奈ちゃん、壁山くん』
「...本当に反省してるッスか?」
心配そうに壁山が言えば、春奈ちゃんもうんうんと首を縦に振る。
「反省してるって!ごめんって!!」
『本当に?壁山に何して悪いと思ってるの?』
怒ったような口調で言えば、木暮はビクッと肩を揺らした。
「その、...落書きしてごめん」
『春奈ちゃんには?』
「...ブーブークッション置いて、ごめんなさい」
『よし。で、本音は?』
「引っかかったコイツらが悪い。アッ!?」
目をパチクリとさせた木暮に笑う。
『はーい、引っかかった木暮が悪いでーす』
そう言えば、木暮はうわぁ、と情けない声を上げ、他のみんなは笑い声を上げていた。
騙し騙され
とりあえず、身体壊さない程度にキツいメニューにしてやろう。