脅威の侵略者編
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木暮にフリースタイルフットボールのレクチャーを初めて十数分。
「梅雨せんぱーい!吹雪さん見つかりましたよー!!」
そう叫ぶ春奈ちゃんの声が響いた。
そこで思い出す。迷子探しには時間指定があった事に。
『やべ...』
慌てて頭上に蹴りあげていたボールを両手でキャッチする。
「梅雨せんぱー、あっ!居た!」
廊下の角を曲がって、この園庭が目に入った春奈ちゃんはそう言った後、状況を見てキョトンという顔をしていた。
『ごめん、春奈ちゃん!呼びに来させて悪かったね』
「いえ。けど、木暮くん?と...そちらは...?」
笠で顔を隠したお爺さんを見て春奈ちゃんは首を傾げた。
『漫遊寺の監督さん』
そう言えば、春奈ちゃんは慌ててお爺さんに頭を下げた。
「お邪魔してます」
「よいよい。それよりもお主は探し人をしておったのじゃな。それなのに引き止めて悪かったのう」
『あー、いえ。私も楽しませてもらいましたし。木暮、ボール返すね』
「え、うん」
木暮の手にボールを持たせた後、春奈ちゃんの傍に駆け寄る。
『すみません。これで失礼します!』
「うむ」
ぺこりと、頭を下げれば、春奈ちゃんも同じように軽く会釈をして、そのまま2人でその場を去った。
「梅雨先輩、木暮くんとサッカーしてたんですか?」
『ん?ああ、監督さんに頼まれてね。フリスタちょっと教えてたの』
「...そうなんですね。どう、だったんですか?」
変な間を開けて、そう聞いて来た春奈ちゃんに対して首を傾げる。
ああ。確か、春奈ちゃんは木暮を自分の境遇と重ねて見てるんだっけ。
『結構いい動きするんだよね』
「そうなんですか?」
『うん。フリスタ向いてると思うわ。サッカー部で練習させて貰えないって話だから、普段は1人でボール蹴ってるんだろうし。私も子供頃は男の子がサッカーやってるのに入れて貰えなかったからさ〜』
そういうわけで私も1人でのボール遊び得意になっちゃた口だし、木暮も向いてそう。
「ひとり、かぁ...」
『春奈ちゃん?』
「あ、なんでもないです。それより、梅雨先輩、髪解けてますよ?」
『あー、これは...』
髪ゴム、雑巾に巻き付けたまんまだわ。まあ、どうせ使い捨てだしな。
『まあ、後で括り直すよ』
そんな話をしながら、キャラバンまで戻った。
そこから迷子になっていた吹雪が女の子たちから聞いた情報で近所の河川敷に行き、サッカーの練習をした後、夕飯を食べて、皆それぞれ寝袋に入った。
女子用のテントの中で寝ていたが、はっと目が覚めて、他を起こさないようにそっと身体を起こす。
『...、あぁ』
冴えてしまった目でぐるりとテント内を見渡すと、一つだけ空の寝袋があった。
春奈ちゃんがいない。
そっと、立ち上がって、なるべく静かにテントをでる。
それからキャラバンに近寄って、窓を覗いてみる。
みんなよく眠っているようだ。寝袋の数を数えてみるが...。うーん、窓の外からだとイマイチ分かんないか。
「何をしているんだ?」
『ひゃ、』
いきなり後ろから声をかけられて、ビクリと肩が跳ねた。
振り返って見れば、ゴーグル越しの瞳が不思議そうにこちらを見ていた。
『き、鬼道か...びっくりした...』
「すまない、驚かせたな」
『いや、大丈夫...』
ふぅ、と1つ息を吐いて呼吸を整える。探してた人がいきなり声をかけてきたものだから、マジでびっくりした。
「それで、キャラバンを覗いてなにをしてたんだ?」
『え、ああ。目が覚めて起きたら春奈ちゃんが居ないから』
「そうか、春奈を探してたのか」
探してたというか、話が進んでいるかの確認の為だったんだけど...。とりあえず、そうと頷いておく。
「春奈なら先程までは俺と一緒に居た。もう少ししたら戻ってくると思うぞ」
『そう。ならよかった』
うーん、と伸びをして、空を見上げる。北海道の広く澄んだ空とはまた違う空気感の空だけど、星々が輝いて見えて綺麗だ。
「お前も眠れないのか?」
『も、って事は鬼道も?』
「俺がと言うより春奈がそうだったから...、いや、結果目が冴えてしまったから俺もだな」
そう言って鬼道は、ふっ、と笑う。
『いい、お兄ちゃんしてるわね』
「そう、だろうか...?」
何か考えるように鬼道はそう言う。
「俺よりもお前の方に懐いているように見えるがな」
『え?』
驚いた。そんな風に思ってたの。
『馬鹿ね』
「なっ、...!」
少し怒ったような顔をした鬼道の頭にポンと手を置く。
『私と鬼道じゃ男女の差で春奈ちゃんの距離感が違うだけよ。本当の兄に私が勝てるわけないじゃない』
「だが、その兄のせいで春奈には辛い思いをさせた」
そう言って下を向く鬼道の頭をヨシヨシと撫で付ける。前は怒っていたが、今日はどうやらいいらしい。
『そうかもね。帝国キャプテンがお兄ちゃんだって知ってから春奈ちゃん悩んでたみたいだしね』
「...そうだろうな」
鬼道自身分かっている事だろうし、同じように悩んだ事だろう。
『それでも春奈ちゃんにとってのお兄ちゃんは君で。今、周りが見ていいお兄ちゃんだな、って思えるって事はきっと、春奈ちゃん自身が1番感じてるはずだよ』
「そうだといいが」
そう言う鬼道に、うんと頷いて、もう一度だけその頭を撫でた。
妹と兄
春奈ちゃんは鬼道が心配も甘やかす事もできるから、鬼道は私が甘やかしてやろう。