フットボールフロンティア編
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監視業務報告。1日目。
サッカー部は、皆真面目に練習に取り組んでいる。
マックスこと松野空介の「皆体力無さすぎ」発言により、基礎体力向上を目指し元陸上部の風丸一郎太を筆頭に走り込みを行っている。
元陸上部の風丸、色々な部活動の助っ人に回っていたという松野、元々唯一まともに練習をしていた円堂の三人は、そつなくこなしていたが、他のメンバーはダメダメである。
染岡、半田、少林寺、宍戸、栗松は周回クリア出来てはいるものの何とか付いて行けているといった感じである。
影野、壁山、目金に至っては周回遅れは当たり前で走り込みの途中でリタイアしている。
それでもまだ、影野はこの3人の中では1番距離が走れている。元帰宅部に負けるサッカー部壁山大丈夫なのか。
目金に関してはまあ、ヲタク故の底辺体力だな、といった感じである。
監視員業務報告。2日目。
放課後部室に行けば、木野秋ちゃんが1人で籠を抱えて出てきた所だった。
籠の中にはタオルがたくさん入っていて、昨日の練習で使ったものらしい。
これを学園の部活棟内にある洗濯に放り込んで、洗濯機を回している間に、ドリンクの準備をするんだとの事で、ちょっとだけお手伝い。
粉を入れて水を入れて振るだけだけど、11本ともなれば結構な数。1人でやるには腕パンパンになりそう。
サッカー部のメンバーは走り込みから始めて、その後パス練やシュート練に移って、真面目に活動している。
監視員業務報告。3日目。
今日も今日とて走り込み。その姿を眺めて居たら今日も他のメンバーよりも圧倒的早くに周回クリアした風丸に声をかけられた。
彼のドリブルが中々上手くいかないといった相談で、実際に見せて貰えば蹴ったボールの距離と走るスピードの速度が全くあっていなかった。
これに関して常にボールとの距離感を測ることが大事なので、風丸はランニングも余裕だし、明日からそこにボールを蹴りながら行うという枷を付ければ?と伝えた。
監視員業務報告。4日目。
前日に目金と見ている今期アニメが同じだということで盛り上がって、今日は彼の嫁の画像をスマホに表示して、それを私が手に持って画面を向けながら走るという手段をとった。少しでも遅れを取れば、眼の悪い目金には嫁の姿が映らなくなるので、嫁の姿を映したいヲタクは頑張った。今まで走り着ることが出来なかったのに、(皆よりだいぶ遅れてだが)完走までした。そしてそんな目金に負けじと、影野と壁山も初めて完走できた。少しずつ体力がついてきているのだろう。
それから、どうにも練習中、染岡のラフプレイが目立つ。
日もないことに焦っているのだろうけれど...。一応、突き飛ばされた影野や風丸の様態のチェックしておいたが、擦り傷程度で大丈夫そうだ。
そういえば、途中、新聞部の1年生、音無春奈ちゃんが練習の様子を見に来ていた。
対戦相手が尾刈斗中だと聞いて、妙な噂がある学校ですよと心配していたのだが、彼女が教えてくれた噂のおかげで1年生達(特に壁山がビビりまくってトイレに逃げた)が、豪炎寺さんを呼べないのか、なんて言ってしまったものだから染岡が怒り出してしまう。まあそれも2年生達が上手くフォローして場を収めていたが...。
けどやっぱり余計に闘争心に火が付いたのか、唯一のFWと言うのが彼を焦らせるのか、染岡は1人遅くまで河川敷に残ってシュート練習を行っていた。
オーバーワーク過ぎないだろ...
そこまで文字を打って、頭上にできた影に気づき顔を上げる。
「報告かよ」
『そうだよ』
グッと顔の汗をユニフォームの袖で拭う彼に、座っていたベンチの横に畳んで置いていたタオルを、ほら、と投げる。
無言でそれをキャッチした染岡は、がっとタオルで顔を拭った。
「皆もう帰ったろ。お前いつまでいんだよ」
『そうね。君が終わるまでかな』
「ハッ、お前、サボりの監視だろ。こっちは練習してんだから別に帰りゃいいじゃねぇか」
鼻で笑われハッとする。
『そうだわ』
「んだよ、気づいてなかったのかよ...。ふ、変なやつだな」
小さく笑った染岡に、思わずぽかんとする。
「なんだよ」
『いや、笑えたんだな、と』
「お前ひとをなんだと思ってんだよ」
キレる若者。とか言ったらまた怒りだしそうだから黙っておくけど。
『君はそうやってもう少し気を抜くといいよ。根詰めても上手くいかない事もあるし、さ。っと』
ベンチから立ち上がり風で足元に転がってきたボールをつま先で掬い、その場でリフティングを始める。
「今やんなきゃ意味がねぇだろうが。もう日にちもねぇしよ」
『それで、オーバーワークで身体壊したらどうするの?』
「そんなヘマはしねぇよ」
『そう言って、練習中に怪我して大事な大会に出られなくなった馬鹿を私は知ってる』
次に繋げるために真上にあげたボールは、動きを止めた梅雨の真横にぼとりと落ちた。
染岡が今焦っている気持ちも、根を詰める理由もわかる。自分より凄い選手が現れて対抗心が燃えるのも、後輩達に自分よりも豪炎寺の方がと言われて悔しくない筈がない。
それでも。
『現状、雷門サッカー部のFWは君だけだよ』
一応目金もいるが、彼の希望によりFWになってはいるが戦力にはならない。
染岡は真っ直ぐ梅雨を見つめ、何か言いたげに口を開きかけたが、すぐに閉じた。
『君が試合に出れなかったら誰が点を取るんだ??それを分かって欲しい』
そう言って、先程地に落ちたボールを拾って、手で土を払う。
『まだ、練習する?』
ボールを差し出すように向ければ、染岡はだあー、と言いガシガシと頭の裏を掻いた。
「帰りゃあいいんだろ、帰りゃあ」
そう言って染岡はゴール前に散らばった無数のボールを拾いに行く。
『うん。君が私のような馬鹿でなくてよかったよ』
「何か言ったか?」
ボールを2つ拾って振り返った染岡にいいや、と首を振った。
『やっと帰れるって独り言』
「ハッ、そうかよ」
悪態をつきながら片付ける染岡を見て小さく笑ってサッカーボールをしまうキャスター付きのボール籠を近くに持っていく。
『明日のシュート練の時もう少し力を抜くといい。今は力み過ぎてて狙ってる位置とシュートがだいぶズレてるんじゃない?』
「......チッ」
お、その舌打ちは肯定と取るぞ。
『それに円堂にもいつもシュートコース読まれるでしょう?』
「...」
今度は黙り。図星ですねぇ。
無言でボール籠にボールを入れている様子に、わかりやすいなぁと笑う。
『それ多分シュート直前の動作が力み過ぎててバレてるんだと思うよ。円堂にも聞いてごらん。正面から受けるからこそ見えてるものもあるだろうし』
「......円堂か」
『そう』
きっと私が言うよりも、円堂からの方が言うことを効くだろうし。
「...。おら、全部集まったから帰んぞ」
そう言って染岡は最後のひとつのボールを籠に入れる。
『体育倉庫に持っていけばいいんだよね』
学園まで持って帰ろうと、籠を掴もうとしたら、いい、と言って染岡が先に籠を掴んで歩き出した。
『重くない?』
そう聞けば、別に、と返される。
来る時は秋ちゃんと2人がかりで、えんやさっさと持ってきたのになぁ。流石に男子は違うな。
「お前はベンチの荷物持ってこいよ」
『あ、うん』
急いでベンチの上のタオルやボトルを集めて、先行く彼を追いかけた。
監視業務報告書
染岡は気難しいが悪い奴ではない。