脅威の侵略者編
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ゴーンと鐘の音が鳴る中、イプシロンの襲撃予告のボールで校庭に大穴を開けられた漫遊寺中学校は生徒達がのほほんと日常を送っていた。
「なんかのんびりしてる、よな」
「襲撃予告なんて全く気にしてない感じ」
男の子達は、太極拳か功夫かなんか分からないけど、そういう修行っぽい事してる子達がいるし、女の子達は、はんなりとお喋りしてるし。
「とにかくサッカー部を探そうぜ」
「サッカー部なら奥の道場みたいだよ」
円堂の言葉に直ぐにそう答えた吹雪に、え?と一同が振り返れば、彼の両脇には女の子がそれぞれ立っていた。
「どうもありがとう」
吹雪がそう言えば、女の子たちは、どういたしましてと笑って頬を少し染めた。
「また何かあったらよろしくね」
「「はーい」」
語尾にハートマーク付いてそうな女の子達の返事を聞いて、みんなが白い目で吹雪を見る。
『流石の色男だね』
「ふふ、そんな事ないよ」
そう言って女の子達と別れた吹雪が隣に並んだ。
「あの子達が優しかっただけだよ」
そうサラリと言いのけた吹雪に、そういうとこやぞ、と返せば、え?と彼は首を傾げた。天然かよ。怖ぇな。
「道場...道場...」
吹雪が得た情報を元に、奥の方に向かって校内を進む。
校舎自体が大きなお寺になっているみたいで、漆喰の壁や、木製の廊下で出来ている。
ギシギシと軋む廊下を歩いて居れば、先に蹴球道場と看板が掛かった離れが見えた。
「あ!あれじゃないかしら?」
秋ちゃんが気づいてそう言えば、鬼道が、みたいだなと頷いた。
「間違いない!よし、行くぞみんな!」
円堂がいの一番に駆け出せば、他のみんなも、おー!と後から続く。
『あっ、コラ!廊下は走らない!』
叱るも間もなく、先頭の円堂から順に廊下で足を滑らせて転んで行った。
「「あ...」」
秋ちゃんと鬼道が声を揃えて、呆れたようなため息のような言葉を発した。
それも仕方がない。円堂、染岡、塔子ちゃん、土門、栗松、目金、壁山、風丸の8人もが順に転びぶつかりそれぞれが押し潰すように廊下に倒れたのだから。
『だから言ったじゃない...』
はあ、とため息を吐いていると巨漢壁山に押しつぶされて重い...と死にそうな声を上げる目金がいた。慌てて、残ったみんなでそれぞれを助け起こす。
「大丈夫?」
「大丈夫じゃないですよ!!」
春奈ちゃんが助け出された目金に声をかければ、彼はプンプンと怒った様子で手をバタつかせた。
「デスヨネー...」
「グキって言いましたよ!グキって!」
『ハイハイ。それなら暴れないで大人しくしてなさい』
「スイマセンッス...」
肩身を狭くして壁山は目金に謝る。
「でもなんでここだけツルツルしてんだよ」
見事に滑った塔子ちゃんが、そう言えば、秋ちゃんが確かめる様に床を触って見た。そうすればキュッキュッといい音が鳴る。
「これってワックスじゃないかしら?」
ワックス?と皆が声を揃える。
その横で、ウッシッシ!と聞いた事のない(ことは私はないんだけど)声がして、一同声のした園庭の方を向いた。
生垣の後ろに、青い髪の両サイドがカニの様にツンツンした小柄な少年がいた。笑う彼のその手にはつるピカールと書かれた明らかにワックス剤っぽいボトル容器。
「ざまあみろ!フットボールフロンティアで優勝したからっていい気になって!」
「お前!よくもやったな!」
塔子ちゃんが廊下の手摺に掴まってそう叫べば、少年は逃げ出した。
「待て!」
それを逃がすか、と塔子ちゃん、は手摺を乗り越えて園庭に降りた。その瞬間、彼女はうわぁ!と悲鳴を上げた。
『塔子ちゃん!?大丈夫!?』
上から覗き見れば、浅い落とし穴に塔子ちゃんは引っかかっていた。
「ウッシッシッシ!引っかかってやんの〜!」
穴の前まで戻ってきた少年はお尻を突き出してフリフリとして塔子ちゃんを煽る。
「なんなんだアイツ...」
そう言って呆然と少年を見つめる男子達を押し退けて、手摺を跨り、園庭に降りる。
じっと地面を見る。うん、この辺は落とし穴なさそう。さっき少年が歩いた足跡が残ってる。
まだ尻をを突き出して煽っている少年の事を一旦無視して、穴に倒れている塔子ちゃんに手を貸す。
「いたたた...」
『塔子ちゃん。怪我は?』
「大丈夫。アタシ丈夫なのが取り柄なんだ」
『そう。なら、よかった。...で、終わると思ってんの?』
そう言って自分よりも低い位置にあり掴みやすい少年の頭をガシッと掌で押さえる。
「うわっ、何するんだよ!!」
『君のせいでうちの選手が怪我するところだったんだけど?』
「は?んな事知らねーよ!引っかかる方が悪いだろ!!」
手を押し退けてようと両手で腕を掴んできた少年に対抗して、負けじと少年の頭を押さえる。
「木暮!!」
後ろからそんな怒鳴り声が聞こえて、一瞬驚いた隙に少年は私の腕を押しのけた。
『あっ、ちょっと...!』
少年は、すばしっこい動きで駆けて、園庭の柵を飛び越え、生垣に隠れ姿を消した。
「全く...しょうがない奴だ」
先程の怒声の主が、少年の消えた方とは反対側から歩いてやって来た。
「ちょっと目を離したら、直ぐにサボって...」
はあ、とため息を吐くオレンジのバンダナを頭に巻いた男子生徒は、小脇にサッカーボールを抱えている。
どこに行ったんだというようにキョロキョロと当たりを見渡した彼は、靴下のまま地面に立つ私と塔子ちゃんを見て、えっ、と固まった。
それからその傍にあった落とし穴に気がついたのか、慌ててこちらに駆け寄ってきた。
「すみません。大丈夫ですか?」
「え、あ!大丈夫大丈夫!このくらい!」
塔子ちゃんがそう返せば、彼はサッカーボールを一同地においてから左の手のひらに右の拳を打ち付けて、深々と一礼した。
「申し訳ございませんでした。うちの部員がとんでもない事を致しまして」
そう言ってもう一度頭を下げた。
「うちの部員...?」
「って事はアイツ...」
みんなが、先程彼が地面に置いたサッカーボールに視線をやった。
「「「サッカー部!?」」」
「アイツがかよ!?」
「ええ。木暮と言うんですが、それが困ったやつでして...。周りは全て敵だと思っているというか...」
敵?と秋が首を傾げれば、彼はええと頷いた。
「それで私たちも練習させるより先ずは精神を鍛え直す事の方が良いのではと、1から修行させているのですが...いくら説明しても木暮は自分だけが虐められていると決めつけて...。あいつにとっては仕返しのつもりなんでしょう」
そう言って、彼はこれまでの木暮のイタズラを説明する。
「かなり性格歪んでんなぁ...」
あははは、と乾いた笑いを土門と一之瀬が上げる。
「同じサッカーをする者として恥ずかしい限りですねぇ」
そう言って眼鏡を持ち上げる目金は、壁山に肩もみをさせている。
『どの口がいってんの...?』
「あー!壁山くんもう少し右です」
「あ、ハイ...」
渋々と言った様子で肩もみしている壁山に同情しつつ、もう一度バンダナの少年を見る。
「でも、どうしてそんなにみんなの事が信じられないのかしら?」
「木暮は小さい頃、親に裏切られた様で...」
その答えに、春奈ちゃんが、えっ、と零す。
「親に...?」
「ええ。それ以来人を信じることが出来なくなったようなんです」
理由が理由だった為、みんなが押し黙れば、彼はあっ、と呟いて話題を逸らした。
「それで、私たちに何か御用でも?」
「あ、そうそう」
「実はこちらにエイリア学園から襲撃予告が来たと聞きまして」
瞳子さんが割って入ってきてそう言えば、彼はキョトンとした。
「襲撃予告...?ああ。その事ですか」
「俺達も一緒に戦おうと思ってさ!」
円堂かそう言えば、彼は淡々とそうですか、と言った。
「では、どうぞご案内致します」
拍子抜け
あまりにも淡白な彼の反応に、一緒に戦う喜びや情熱を期待していた雷門イレブンは、あまりにも間抜けに、はあ、と返事をした。