脅威の侵略者編
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「ちっくしょー!あのシュート止められなかった」
ベンチに戻るなり心底悔しそうに塔子ちゃんは両拳を点に突き上げた。
それに一緒にディフェンスした壁山が悔しいっスと同意する。
「でも、あの2重のディフェンスとマジン・ザ・ハンドなら防げるはずだ!3重なら鬼に金棒だろ!」
おお、円堂がことわざ知ってる。
ニッと何処か自信に溢れた円堂の笑みにみんなの表情も和らいでいる。流石メンタルキーパーでもあるな。
「吹雪くん、シュートは解禁よ。後半はFWに上がって」
瞳子さんがそう言えば、吹雪はふえ?と間抜けな返事をする。
『じゃあ、私とポジションチェンジですか?』
雷門は今まで2トップ制だったしな。私がMFかDFに下げられるだろう。
そう思っていれば、いいえと瞳子さんは首を振った。
「3トップで点を取りに行くわ」
ハッキリとそう宣言した瞳子さんに、皆がどよめいた。
「3-4-3か」
そう言って鬼道はふむ、と顎に手を置いて何やら考え出した。ゲームメイカーさんは新たな戦略を練っているのだろうか。
以前、千羽山中戦で半田が雷門は豪炎寺と染岡2トップ制だ!って怒ってた時以来じゃないか?トップのフォーメーションが違うのは。
「前線で数的優位が作りやすくなるのは、悪くないな」
3-4-3はシュートまでのパスラインが繋げやすいって利点が大きいよね。
ジェミニストームは4-3-2のフォーメーションだし、FWへのDFのマークが1人に2人ずつだったのが、3人FWになることで1、1、2に分ける事が出来るのも強い。
「でも吹雪さんが上がったら、ディフェンスはどうするでヤンス?」
「心配するな。みんな奴らの動きに対応出来ている」
栗松の質問に鬼道がそう言えば、その顔を見た円堂が笑って頷く。
「俺ももう大丈夫です!」
鬼道と円堂を見て、瞳子さんは分かったようね、と頷いた。
それに鬼道が、ええ、と頷き返す。
「どういうこと?お兄ちゃん」
「俺たちはスピードに対抗する特訓をしたが、実際に奴らのスピードに慣れるには時間が掛かる。だから前半は守備の人数を増やしたんだ」
「なるほど!失点のリスクを減らして...」
「奴らのスピードを把握するためか!」
風丸と、土門がなるほど、と呟く。
「それじゃあ、吹雪くんをディフェンスに専念させたのは...」
「中盤が突破されたらあのスピードじゃなきゃ止められなかったからでヤンスね!」
「最初から説明してくれればいいのに...」
ぼそり、と春奈ちゃんが言えば、瞳子さんは何食わぬ顔で、その言葉を無視した。
「でも、自分たちで気づいた方が絶対に力になるわ!」
秋ちゃんは流石のフォロー力である。
「そうさ!答えを知りたければ汗をかけばいいんだ!」
そう言って円堂はグッと拳を握った。
「吹雪!どんどんゴールを狙っていけ!」
「うん、やってみるよ」
頷く吹雪を、染岡が相変わらず睨む。
この子のフォローは私がしとくか。
そう思って、ぽんぽんと染岡の背を叩く。
『染岡もガンガン攻めていいわよ』
「フン。お前もせいぜい頑張れよな」
ツンケンした様子でそう返されて、あはは...と乾いた笑い声をあげる。
いやぁ、ここは染岡と吹雪の見せ場だからなぁ。私より2人に頑張ってもらいたいんだけどね。
後半戦が開始するなり、吹雪がアイスグラウンドで相手の動きを止め、早々に最前線へと攻めあがった。
私は右から染岡は左からその後を追いかける。
「俺の出番だァ!!」
マフラーに手をかけた後、うおおおおぉっと雄叫びを上げて吹雪はシュートを打つ。
「ブラックホール」
GKゴルレオが手のひらを翳せば、ボールは黒い穴に吸い込まれて行く。
綺麗にキャッチしたゴルレオはフッと笑ってレーゼの方へ大きくボールを投げた。
『よっ、と!』
その軌道上を追って空中にジャンプしヘディングでパスカットする。
ジェミニの選手達は体勢を立て直す時、だいたい司令塔であるレーゼにボールを返す事が多い。その癖のおかげで難なく読めた。
「よくやった!」
頭からぶつかって転げ落ちたボールは吹雪が素早く拾って再びゴールに向かった。
「グラビテイション」
吹雪の前に立ち塞がったガニメデが、両手で大きく地面を叩きつける。
彼の周りの時空が歪み、重力が重くなり圧迫された吹雪が膝を付いた。
その隙にボールが蹴り飛ばされ、ガニメデからイオ、イオからリームへと渡る。
「さあ!今度はジェミニストームのチャンスだ!」
駆け上がるリームの前に塔子ちゃんが飛び出した。
「ザ・タワー!!」
そびえ立つ塔に雷撃が落ち、リームが目を眩ませれば、その隙に塔子ちゃんがボールを奪い返した。
その様子にレーゼがまたか!?と声をあげる。
実際前半からずっと塔子ちゃんのザ・タワーの成功率は高い。抜かれたのレーゼのアストロブレイクの時だけじゃないか?
「こっちだ!」
染岡がパスを要求すれば、塔子ちゃんが素直にパスを出した。しかし、それを笑いながら吹雪がカットして奪いさる。
「なっ、吹雪!」
『ちょっと、連携!』
思わず怒れば、ドリブルしながら振り返った吹雪はいたずらっ子の様にへへっと笑って見せた。
「ゴールを奪うんだろ?俺に任せとけばいいんだよ!」
「ッチ...!」
『あーもう!』
相変わらず連携も何もあったもんじゃない。DFしてた時はそれなりにパス回しも出来てたのに、全くこっちの吹雪は...!
調子に乗って攻め上がる吹雪に、カロンが立ちはだかって、軽くジャンプした彼はクルクルと自身をスピンさせた。
「フォトンフラッシュ!」
眩い光が放たれて、吹雪が思わず目を瞑ればその隙をついてボールを奪われた。
目潰し系ずるいよな。いやこっちも塔子ちゃんが使ってるから言えないけど。
「決められなかったじゃねーか!何考えてんだよ!」
染岡が怒鳴る。いやまあコレは怒ってもしょうがない。
「いいから見てろ!本番はこれからだ!」
そう言ってボールを追ってセンターラインに戻っていく吹雪に染岡は、ぐっと唇を噛んだ。
ボールはカロンからパンドラに渡り、彼女の前に鬼道と一之瀬がマークに着く。
足を止めたパンドラと、2人が読み合いで拮抗していれば、先にパンドラが動き彼女がボールをパスした。
「そうか!」
そう言ってボールが蹴られると共に一之瀬はイオの前に瞬時に向かった。
そして、足から滑り込んだ一之瀬は、低くなった重心の支えを腕に変え逆立ちをし、そのまま身体を捻り足を振り回す、ブレイクダンスをやって見せた。
一之瀬の回転と共に炎が現れた彼の周りを舞踊る。
「フレイムダンス!」
回転の風圧と共に大きくなった炎が、イオの元に届いたボール事吹き飛ばしてしまった。
ボールはラインの外に出て、ピッーとホイッスルが鳴る。
「ついに出た!一之瀬の新必殺技だ!」
実況の角馬くんが盛り上がる中、よしと私も拳を握る。
「やったな!凄い技じゃないか!」
同じMFの風丸、鬼道、塔子ちゃんが一之瀬に駆け寄った。
「ああ。水津とのフリスタ特訓のおかげだよ」
そう言って、一之瀬は二本指を揃えて顔の横で傾けながら、遠巻きで見ていたこちらに向かってウインクしてきた。
『なるほど...』
頼れる奴、キザな奴
そんな歌詞もあったし、後のあの子が惚れるのも分かる気がする。