脅威の侵略者編
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子供の頃にやったっきりだったが、意外と覚えているもので、直ぐに乗りこなすことが出来た。
普通のスキーよりショートスキーの方が速さは出ないが小回りが効くから転がされる雪玉を避ける特訓も難なく出来ている。
「水津先輩上手いでヤンス!」
「いやはや流石の運動能力ですね」
『褒めてくれるのは有難いけど、君らも練習なさい』
そう、下から栗松と目金に声をかければ2人は、はーいと返事をしてボードを足に装着して斜面を滑り...いや、転げ落ちた。
『ちょっと、大丈夫!?』
慌てて2人の元に滑り寄り、足を八の字にして勢いを殺しながら斜面に対して横向きになることでその場に留まった。
「は、はい、なんとか...ってうわあああ!!」
『あ、』
足にボードを付けたままなのを忘れ、ひとりでに起き上がろうとした目金は、そのままズルズルとボードが滑るまま下に流されて行った。
『ああなるから、栗松は先にボード外してから立ち上がりなさいね』
「はいでヤンス」
『ちょっと待ってなさい。目金助けて来るから』
そう言って、板を横向きから斜面に沿うように向き直せば、板がジャリジャリと雪を擦って下に進む。
どうにかこうにか止まっていた目金を見つけ先程と同じように、板を横向きにして彼の前で止まる。
『大丈夫...じゃなさそうね』
「...はい」
うつ伏せで雪に顔を埋める形で倒れている目金を見て、しょうがないなと自分の足に着いてる板を外してから滑っていかないように雪に縦に突き刺す。
『先にボード外すから、』
ちょっと待ってねと言おうと思った所だった。
「うわあああああああああッス」
「うおおおおおおおおおおおお」
2つの雄叫びと共に、上から壁山と染岡が転がり落ちてきた。
それを見て、はあ、と大きくため息を吐くのであった。
『とりあえず君たちは、まず、止まり方を覚えなさい!』
目金のついでに、壁山と染岡を助け起こして3人を待たせている栗松の元に連れ上がり、開口一番そう告げる。
「最初は滑り方じゃないんですか?」
『滑るのなんか斜面に真っ直ぐ向けたら滑る。さっき勝手に滑って行ったからわかるでしょう』
聞いてきた目金にそう言えば、あ、はい、と言ってしゅんとした。
『で、今言ったのと反対に斜面に対して横に向けたら止まります。でもただ横にするだけだと、完全には止まれないから重心を少し後ろに傾けます。それで止まれない時は、膝をしっかり曲げてお尻から尻もちをつくような形で倒れなさい』
「尻もちッスか?」
『うん、前に倒れるのは危ないからね。それから滑る時は斜面に対して斜めに滑りなさい。斜面に対して真っ直ぐだと凄いスピードが出て危ないから斜面に対してS字を描くように降りるの』
「でもスピードを鍛えるための特訓だろ?」
「そうでヤンス。吹雪さんは真っ直ぐ滑ってるでヤンスよ?」
『アレは初心者がいきなりやるもんじゃないわよ。そもそもがスピード出してもきちんと止まれるから出来るんだよ。君らは結局スピード出過ぎてバランス取れなくてその上止まれなくて転んで行ったでしょうが』
そう言えば、4人はッスー…と息を吐いた。
『とにかく君らは、まず斜めに緩やかに下ってきちんと止まる。その練習から』
さ、やるよ、とパンパンと手を叩いた。
『目金!へっぴり腰じゃなくてもっとしっかり腰を落とす!壁山はちゃんと前見て!』
はいぃぃぃぃ、と情けない声を上げながら2人は雪の上を滑って行く。
『この中じゃ栗松が1番感が良かったわね』
目金と壁山よりも先に行く栗松は、きちんとS字に緩やかに滑りながら、止まる時は言われた通りにしっかり腰を落として止まる。それを繰り返しながらちゃんと先に進んでいる。
で、染岡だ。
板を真っ直ぐに向けて斜めに滑り降りる時点でバランスが悪く転けてしまう。目金でも止まるまでは出来てるぞ。
『全く...全然腰が落とせてないよ。染岡、バンザイ』
「は?」
なんだ?と口を開けて首を傾げる染岡に、もう一度バンザイしてと告げれば、彼は天に向かって真っ直ぐ両手を突き上げた。
『よし、じゃあそれをゆっくり横に下ろして...はい、ストップ』
スノーボードと平行よりはちょっと斜め下くらいで止める。
『で、そのままの形で腰を下げる。うーん、もうちょい、あ、よし!これが基本姿勢ね。で、そのまま真っ直ぐ前見て滑る!』
GO!とその背を押せば、うおおお、と雄叫びを上げて滑って行った。
ゲレンデの下を見ていれば、上からザザザッとボードが雪を擦る音がして、ギュッ、と音を立てて横で止まった。
「どう?楽しんでる?」
横を見ればやってきたのは吹雪だった。質問にええ、と頷く。
「今からもう一度雪玉転がしてもらうけど、水津さんもどうかな」
『あー』
ちらり、と下を見る。
滑っていた染岡がグッと身体を曲げてボードの進行方向を変えて、踵の方に重心をかけてガリガリと雪を掻きながら腰を落として止まった。
「よっしゃあ!見たか水津!」
そう言って振り返って上を見上げた染岡は、固まった。
吹雪の事、視界に入れるのも嫌なんだなぁ。
そう思っていれば染岡はチッと舌打ちして、再び雪の上を滑り出した。
「あー、僕のせい、かな」
まあ、十中八九そうかな。
困ったように笑う吹雪に申し訳ないなぁと思いつつ、こればっかりはこちらではどうしようもない。
『まあ、染岡の事はあんま気にしないで。そのうちどうにかなるから』
そう言えば吹雪は、不思議そうに首をかしげながらも、そう、と頷いた。
『せっかく呼びに来てくれたけど、今みんなの練習見てる所だから...また、次の時に誘って』
「そっか。分かったよ」
それじゃあ、と言ってボードを抱えてゲレンデを登って行った。
さて、と。
雪の上を滑って、下に向かう。
『染岡』
彼の側でピタリと止まる。
『ちゃんと見てたわよ』
そう言えば染岡は、ムスッとしたような顔でこちらを見た。
「アイツと何話してたんだよ」
『ああ。雪玉転がし始めるけど来るかって。まだみんなの練習途中だし断ったけど』
そう言えば染岡はじっとこちらを見たまま黙り込んだ。
『染岡?』
「それじゃあ、お前の練習になんねぇだろ。行ってこいよ。別にお前に張り付いて見られてねぇと、出来ないわけじゃねぇし」
『そうだけど...』
更に下にいる、目金と1年生2人も協力しながらどうにか滑っては止まるを繰り返せてるし、大丈夫そうだ。
『そうね。じゃあ、向こうの練習に混じってくるけど、私の目が離れたからって基礎を疎かにしたらダメよ』
「あー、分かった分かった」
『本当に分かってるかぁ〜??』
「いいから行けって!!」
『はいはい。...ありがとうね』
彼なりに気を使ってくれたんだろうと礼を言えば染岡はフンと鼻を鳴らしてそっぽを向いた。その様子に少し笑って、スキー板を外してそれを抱えてゲレンデを登った。
「あ、梅雨ちゃん」
ゲレンデの頂上まで登れば、数人が集まっている中から土門がヒラヒラと手を振った。
「あれ?」
先程断ったのに、と不思議そうに吹雪が首をかしげる。
『気にせず行ってこいって言われて。そういう訳で参加させてもらえる?』
「もちろんだよ。それじゃあ、みんな位置について」
そう言われ、皆、斜面の前に並ぶ。
「みんな、お願い!」
そう言って雪玉を転がしてくれる白恋中の子達に見えるように手を上げれば、吹雪の合図に合わせ雪玉が押し出され転がりだした。
「行くぞ」
そう言って、まずは鬼道と一之瀬が滑り降りていく。それから直ぐに円堂と塔子ちゃん、土門と風丸も滑って行く。
「さあ、僕らも行こう」
『うん』
先にぴょんとスノーボードで雪の上に飛び降りた吹雪を追って、膝を曲げてスキー板を押し出す。
斜面を板が滑る中、吹雪の跡を通るのが安全だろうと雪の上に残った標を辿る。
「すごいすごい!みんな早くなってきたね!」
前にいる吹雪が喜びの声を上げている。
彼よりも更に前に居るみんなは、各々上手に雪玉を避けていく。
「もっともっと早くなれるよ!」
嬉しそうな吹雪は更にスピードを上げて滑り降りていく。
『う、わっと、』
横から転がってきた玉に驚きながらも慌てて進行方向を変えて避ける。
吹雪の跡を追うだけじゃダメだな。彼ほどのスピードがなければ追いかけても彼が避けた後の雪玉にぶつかるだけだ。もっとスピードを出すには斜面に対して真っ直ぐに......。
ゲレンデの1番下まで降りれば、先に到着したみんなが雪の上にペタリと座って待っていた。
『ふぅ...。難しいなこれ...』
「水津さん、初めてにしては上出来だったよ」
『ありがとう。これ反射神経も結構いるね』
「ああ!キーパーとしてもすっげーいい練習になる!」
そう言って円堂がグッと握った手をパッと突き出してみせた。
「けど、1発クリアって。俺たち最初は苦戦したのにな」
そう言って土門と風丸が、な、と顔を見合せた。
『まあ、スキーの方がスノーボードより小回り効くしね。それに、フリスタで動体視力鍛えられてるからねぇ』
「ああ、なるほど」
「梅雨ってその、フリスタ?はどのくらいやってんの」
そう聞いてきた塔子ちゃんに、えーと、と言葉を詰まらせる。20年くらい前から?いやまあ怪我で10年はブランクあるしなぁ。
『小学3、4年くらいだったかな』
「へぇ、じゃあ結構やってるんだな」
『うん。近所に住む当時大学生だった兄ちゃんが教えてくれてね。サッカーボールを使った競技でこんなのがあるんだよって、初めて動画で見た時はワクワクしたなぁ』
懐かしさに浸っていれば、塔子ちゃんはニコニコと笑った。
「梅雨はフリスタがすっごい好きなんだな!」
『え?』
「話してるの楽しそうだったからさ」
そんなに顔に出てた?と頬を押さえれば、塔子ちゃんはうんと頷いた。
「聞いた事はあるけど、どんなのか詳しく知らないから見てみたいな」
にこにこと笑って吹雪がそう言えば、雷門の皆が、あっ、と呟いた。
「吹雪それは...」
「あ、ごめん。怪我の事があるんだっけ?」
申し訳なさそうにする吹雪に、いやと首を振る。
『いいよ別に』
「うん、ごめんね」
『あ、そういう意味じゃなくって。やってもいいよって事』
そう言えば、ええ!?と雷門イレブン達が一同に声を上げた。
「俺が見たいって言った時はダメって...」
そう言った一之瀬に、あー、あの時はと思い返す。
『あの時はルーティン出来てなかったからね。あれから、皆が見たいって言ってくれたから構成も考え直して練習もしたし、多分大丈夫だと思う、からやってもいいかなって。それにみんなが優勝したらって約束してたしね』
優勝した時のみんなは揃ってないけれど...。
「そっか。よーし!じゃあ俺、他のみんな呼んでくる!」
そう言って円堂が雪の上から立ち上がって、駆け出して言った。
『え、別にみんな呼ばなくったって、ここにいる人だけでも...って行っちゃった』
聞く耳持たず走り去って行った円堂を見て、苦笑いを零した。
ちょっとずつ
進んでいこうか。