脅威の侵略者編
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『うぅ、寒い寒い。秋ちゃん上着!!』
染岡が飛び出して行ったことにより、静まり返っていた空気を、水津が腕を擦りながらそう言ってぶち壊した。
「あ、うん」
秋は慌てて手に持っていた水津のコートを、どうぞ、と手渡している。
「染岡くん、大丈夫かしら...」
不安げに、そう話しかける秋に対して水津はコートに袖を通しながら、ああ、と笑った。
『大丈夫よ。円堂が行ったんだし』
完全に信頼しきった様子で言う水津を見て秋も少し思うところがあるのか、そうね、と納得したように頷いた。
寒いから戻ろう!と言う水津の提案にみんなが賛成して教室に戻れば白恋中の子たちが直ぐにストーブを焚いてくれて、水津がその前を陣取った。そんなに半袖半ズボンでいるの寒かったんだな。各言う俺も寒かったけど。
「それにしても、凄かったよ。水津さんって言ったよね?まさかシュートを決められるとは...。流石、雷門中だね」
ニコニコと笑って近づいて来た吹雪に水津は、少し照れたように髪を触った。
『え、いや、まあ。たまたまだよ。あんなの初見殺しみたいなもんだし...』
水津は謙遜した様にそう言うが...、例え初見殺しで最初の1回しか決められなかったとしても、その1点がサッカーにおいてはとても大事だったりする。
「そんな事ないよ。あの回避にも驚かされたし。水津さんも他のスポーツをやったりするの?」
も、と言うのは自分も他のスポーツをやるということだろう。吹雪が学校に到着する前に、白恋中の子たちが言っていたように。
『他のスポーツと言うか...元々フリースタイルフットボールやってるからその兼ね合いで体操とダンスはちょっとかじったけど...』
「へぇ、そうなんだ。それであんなアクロバットが出来てたんだ。元々って事はサッカーは最近始めたの?」
『え、えーと...』
吹雪は随分と水津に興味があるようだ。確かに彼女の技能は興味深いよね。俺も色々と参考になることがあるし。けれど、
「この状況見たら彼、怒りだしそうだなぁ」
グイグイ来られるのが苦手と噂の彼女が、困ったように吹雪の質問に返しているのをぼんやりと見つめていれば、良くないことにタイミング良く円堂が染岡を連れて戻ってきた。
教室に入ってくるなり、ストーブの前で会話している水津と吹雪を目に入れた染岡は機嫌が悪そうに舌打ちをした。
うん。やっぱりそうだよね。
染岡は多分水津の事...
「た、大変です!」
ノートPCを弄っていた音無が突然大声を上げて、みんなの視線がそちらを向いた。
「これ見て下さい!」
《白恋中のもの達よ。お前たちは我がエイリア学園に選ばれた。サッカーに応じよ》
音無のPCの中に映る映像では、雪降る中壊された校舎の踏み台にしているエイリア学園の奴らの姿がある。
《断ることはできない。負ければ破壊が待っている。助かる道は勝利のみ》
一方的にそう言って、映像はぷつんと途切れた。
「この白恋中に...」
「エイリア学園がやってくる...!」
そういう理由で翌日から白恋中のグラウンドを借りて、宇宙人が訪れるまでの間練習が始まった。
「今日から吹雪と一緒に練習だ!今度こそエイリア学園に必ず勝つ」
そう言って円堂がグッ拳を握りしめる。
「そのためには今まで以上に特訓して...あ!」
話と止めて、円堂はある一辺を見て、よお!と声を上げた。
吹雪が雷門中のユニフォームを来てグラウンドに入って来れば、白恋中の女の子が、わぁ、と歓声を上げた。
「似合ってるよ吹雪くん!」
「かっこいいなぁ〜」
「ありがとうみんな。僕もこれで雷門イレブンの1人だ。この白恋中を絶対守って見せるからね」
白恋中の仲間にそう応える吹雪の肩を円堂がその意気だ!とポンと叩いた。
「で、どんな練習をするの」
「白と赤でチームを2つに分けるんだ。それぞれ攻守を交代してコンビネーションの練習をするんだよ」
「面白そうだね、いいよ」
「吹雪くん。貴方にはFWをお願いするわ」
「僕が、FW...」
少し戸惑ったように呟いた吹雪の後ろで相変わらず染岡が睨みつけるように見ている。
「不服かしら?」
「いえ、問題ありません」
そう答える吹雪を見て、チッと舌打ちする染岡の肩を、まあまあ、と言ったように水津が叩く。
相変わらず寒いのが嫌なのか水津はコートを着ている。
『とりあえずFWはバラけさせたほうがいいから染岡はこっちに着替えてね』
そう言って水津は染岡に白い雷門中のセカンドユニフォームを押し付けるように渡した。
『後は、風丸、塔子ちゃん、土門、壁山もこっちに着替えて来て』
そう言って他の人達にもセカンドユニフォームを配り出した。
って、事は俺のチームは、俺と鬼道と栗松と目金と吹雪と、着替えに行かないとこ見ると水津もこっちチームかな。...あれ?
「攻守交代制ってことは円堂は常に守備チームのゴールに入るってことだよね?」
そう聞けば、円堂がああ、と頷いた。
「円堂外すと5対6になるけど、1人が交代で攻撃チームに入るって事?」
『あ、今日は私入んないよ。だから平等に5対5の紅白戦』
「えっ、なんでだよ?」
円堂も知らなかったのか驚いた様にそう聞いている。
「お前、寒いからとかだったらぶっ飛ばすぞ」
そう言った染岡に、違う違うと水津は笑う。
「水津さんには他にやってもらう仕事があるの。別に彼女が居なくても問題ないでしょう」
そう言った監督に、染岡がハア!?と声を荒らげる。確かに今の言い方はちょっと...。
居なくても問題ないなんて言われた水津は、どうどう、といって染岡を宥めようとしている。
「やってもらう事ってなんだよ!」
「マネージャーとしての仕事よ」
淡々とそう答えた監督に、染岡の目が更につり上がった。
「なんなんだよ!マネージャーから勝手に選手にしたと思ったら今度はまたマネージャーって!」
「私は水津さんの能力を買っている、それだけの事よ」
そう言って踵を返しベンチ向かっていく監督に染岡が吠える。
「なんだよそれ!」
『ああもう、いいから落ち着いて!私、マネージャーの仕事も好きだから』
染岡を宥めようとする水津から目で止めるの手伝ってと言われた。
「染岡。水津が嫌がってるんならともかく、そうじゃないんだからさ」
ぽんぽんとその肩を叩けば、染岡はちっ、と舌打ちをした。
「本当に嫌じゃねーのか」
納得がいかないような顔で水津
を見た染岡に、彼女はどこか可笑しそうに笑って見せた。
『うん。嫌なら嫌って言えって前に君に怒られたしね。むしろ寒いのに半袖でいるのヤダからありがたいまである』
「そうかよ」
『そうだよ。ほらみんな待ってるからさっさと着替えておいで』
水津がそう言えば、染岡は静かに頷いてユニフォームを着替えに行った。
「凄いね、水津は」
『...?何が?』
首を傾げる水津に、いや、と首を振る。
「あの染岡が大人しく言う事聞いて行ったからさ」
やっぱり染岡も好きな子には弱いって事かな。怒ってた理由も水津が監督にいいように利用されてる気がしたからなんだろうけど。
『そう?私より円堂の言うことの方が聞くと思うんだけど』
こっちは全く気づいてないのかな。あからさまに他と水津とじゃ染岡の態度が違うと思うんだけどなぁ。
「円堂もだろうけど、水津じゃなきゃダメな事もあると思うよ」
そう言えば、水津に凄く怪訝そうな顔をされた。
『...いや、私じゃなくてもきっと大丈夫だよ。ちゃんと話せば分かってくれるし』
そう言って、目を伏せた水津は何か悟っている様な表情だった。
君じゃなきゃ
水津は時々、自分を居ないものの様に言う時がある。水津じゃなきゃダメなのに、そうじゃないように言う。どうしてなのだろうか。