脅威の侵略者編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
東京から奈良までの500kmの距離。
夕方に出発したものの、運転手が古株さん1人というのと、子供たちの安全を考えて夜間移動は危険と判断し休息を入れて進み、奈良に着いたのは翌朝だった。
総理誘拐現場であるシカ公園の外周はパトカーが止まっていて、警察が公園内を封鎖していた。
「中には入れそうもないでヤンスねぇ...」
男の子達は窓に張り付き外の様子を見つめている。
瞳子さんが1人降りて警察官に通して貰えないか掛け合いに行ったが、もう5分もこうしている。
「ここまで来て門前払いかよ」
『まあ、普通部外者は立ち入り禁止だよねぇ』
「俺!お巡りさんに頼んでくる!」
いても立っても居られなくなったのか、円堂は窓から離れて席を立った。
「ちょっと!ここで待てって監督に言われたじゃない!!」
秋ちゃんがそう声を掛けるが円堂は勝手にキャラバンを降りていく。
もう、と秋ちゃんがむくれる隣で夏未ちゃんはやれやれと言った様子で、携帯電話を取り出して何処かに連絡を取り出した。
「場寅、お父様に繋いで...」
それから夏未ちゃんが電話の先で事の次第を話せば、直ぐに瞳子さんと円堂が戻ってきて、中に通してもらえることになったから、と皆でキャラバンを降り公園内に足を踏み込む。
「はい、ありがとうございます。助かりました、理事長」
「どんだけ顔が広いんだよ、理事長って」
土門の言葉にうんと頷く私の横で、夏未ちゃんは失礼しますと電話を切った。
『しかし...』
「こりゃ酷いな」
シカ公園の中は、橋は壊れ、和風の塔の屋根は破壊され、公園の中央にある鹿の像は頭が無くなっている。
「チクショウ!エイリア学園め!」
「よし!必ず奴らの手がかりを掴むぞ!」
おおー!と拳を掲げ皆ちりじりに走り出す。
その中で1人の背中に声を掛ける。
『豪炎寺』
「...なんだ?」
『ついて回ってもいい?』
「ああ、構わないが...?」
不思議そうな顔をしながらも豪炎寺が頷いてくれたので、じゃあ向こうを見て回ろうと、雷門イレブン達が居ない方に向かう。
『豪炎寺さ、何かあった?』
そう聞けば、彼は静かに目を見開いた。
「...。なぜだ?」
『元気ないというか、暗いというか...どこか上の空、そんな感じ?』
「...そうか」
うん、と頷けば、豪炎寺は黙ったまま
足を止めた。
「水津...もし、俺が...」
そこまで言って、豪炎寺はいや何でもないと頭を振った。
まあ、私には話してくれないよね。円堂にだって話せないでいるのに。
『豪炎寺、手出して』
「手?」
そう、と頷けば、豪炎寺は首を傾げたまま右手を出した。
制服の胸ポケットからあるものを取り出して豪炎寺の手の上に乗せた。
「これは...お守り?にしては...」
『出来は勘弁なさい。昨日の夜急ピッチで作ったんだから』
皆が寝てる中、コソコソ縫ったのだ。もう一個、御利益はないが交通安全祈願を兼ねて縫ったやつをキャラバンのミラーに括りつけたら、朝イチで気づいてくれた古株さんには好評だったぞ。
『神社とかで買ったものじゃないから御利益はないけど、中におまじないの紙が入ってるから困った時に開いて見て』
「おまじない...か。女子はそういうのが好きだな」
『夕香ちゃんもそうでしょ?』
「...、ああ。...そうだな」
そう言って豪炎寺はそっと目を伏せてお守りを握った。
『豪炎寺』
「なん、だ...?」
近くに寄って耳元で囁く。
『宇宙人に見られてない時に開けてね』
「...!どういう意味だ?」
『今も監視されてる。そうでしょ』
小声で言えば、豪炎寺は驚いたような顔をしていた。
「なぜ、知ってる」
『...私の所にも宇宙人が来た』
まあ来たのは豪炎寺の所のつるっぱげとは違って顔色の悪い少年の宇宙人なんだけど。
豪炎寺は、ハッとしたような顔でこちらを見つめた。
「どうしたんだ」
『私には何も無いから、丁重にお帰り願ったよ』
それはもう丁重にね。
「それで奴らは引き下がったのか」
『とりあえずね。でも、君はそうはいかなかったんでしょ?...守るべきものがあるから』
豪炎寺はああ、と頷いた。
その手をそっと取る。
『だから、どうしようもないと思ったらこれを使って。君の力になると思う』
豪炎寺の手を両手でぎゅっと包む。
「水津...」
「お、お前ら!こんなとこで手なんか取り合って、何して...!」
後ろからそう声をかけられて、豪炎寺の手を握ったまま振り返った。
後ろには、真っ赤になって驚いたような顔をした染岡が立っていた。
『んん...?』
ああ!傍から見たら手を取り合って見つめてるように見えたのかな?
『元気になるおまじないかけてただけよ』
ぱっと豪炎寺から手を離して、染岡に近づいてにししと、笑う。
『染岡にもしてあげよっか?』
「は、はあ!?要らねぇよ!だいたいなんだよ元気なるおまじないって」
『あら、女の子に手を握ってもらったら元気にならない?』
「知らねーよ!」
『そう?私は秋ちゃんや夏未ちゃんに手握ってもらうと元気になるけど...』
そう言えば、んだよそれ、と呆れたように染岡が呟く。
「とにかくお前らサボってねぇで、ちゃんと探せよな」
「ああ...、すまない」
『いや、普通に考えて警察が事件から半日以上経って見つけられてないものを私たちが見つけれるわけなくない?』
そう正論を言えば、染岡はぐ、と黙った。
「あ、あったッス!!!」
公園中に壁山の大きな声が聞こえた。
「見つけられたみたいだな?」
ジト目で見てきた染岡に対し、目を逸らしながら、そうね、と返す。
まあ、あるのは知ってたけど。こんな早くに見つかるとは。
『とりあえず行ってみましょうか』
ああと頷く2人を連れて、壁山の声の方に向かえば、ぞろぞろと他の雷門イレブン達も集まってきていた。
公園内のため池に繋がる水路に沈んでいたという、宇宙人への手がかりを発見者の壁山と目金が底より既に運び出していた。
黒いサッカーボール。
地面に置かれたソレを、円堂が掴んで持ち上げる。
「ぐっ...、!!!」
トラックのタイヤを平気で持ち上げるほど、雷門の力持ち代表とも言える円堂が、ボール1つ両手で持ち上げるのに歯を食いしばり、プルプルと腕は震えさす。
あまりの重さに円堂が手を話せば、重量に従い落ちたボールは、ドシンとボールに有るまじき音を立てた。
「...重い。こんなものを軽々と蹴っていたのか...?」
『蹴るだけじゃなくて、リフティングしてる子もいたわよ...』
ガッシャンガッシャン、まるで甲冑を着てんのかっていうような音をさせてリフティングしてた。
皆が唖然として黒いボールを見つめる。なんでこんなものを蹴れるんだってのが正直な感想だろうなぁ。
「全員、動くな!!」
急に、張り詰めたような声でそう叫ばれ、一同はえ?と固まった。
「もう逃がさんぞ!エイリア学園の宇宙人!」
そう言って現れたのは10人の黒服の大人達。
「え?」
「俺たちの事?」
確認するように風丸は自身を指さしている。
皆が、唐突のことに困惑していれば、黒服の大人の中でも1番顔のイカつい男が橋を駆け渡ってきた。
「財前総理は何処だ!何処へ連れ去った!!」
「え、あの、ちょっと」
円堂が弁解しようとすれば、食い気味に黙れ!と怒鳴られる。
「その黒いサッカーボールが何よりの証拠だ!!」
「違う!違います!!これは池に落ちてて!」
「惚けるつもりか?」
「本当です!」
円堂は弁明をしようとするが、他の大人達も橋を渡って、雷門サッカー部をぐるりと囲うように配備した。
「警察には話がついてるんじゃないのか」
鬼道が夏未ちゃんに確認すれば、困ったような顔をした。
「私に言われても...」
『警察官じゃないんじゃない?』
そう言って大人達を見れば、彼らは背筋を伸ばしてビシッと隙なく立っている。
「我々は、総理大臣警護のSPだ」
「だからと言っていきなり宇宙人呼ばわりするだなんて、失礼じゃありませんか!」
風丸が強く言えば、壁山が、うんと頷く。
まあぶっちゃけ、壁山は宇宙人と言われた見えなくもないと思う。その巨漢をその足首の細さでよく支えられてるよなぁ。
「宇宙人はどこだ!!」
今度はまた別の方向から、女の子の叫ぶ声が聞こえて振り返る。
苺色の長髪に帽子を被った黒服の少女が駆け寄ってくる。
「だから俺たちは宇宙人じゃないって!」
駆け寄って来た女の子に円堂がそう言えば、彼女はじっと円堂の顔を見詰める。
それからキョロキョロと雷門イレブン達を見回して、何かを考え出したかと思えば、ハッとしたように目と口を大きく開けた。
「俺たちはフットボールフロンティアで優勝した...!?「動かぬ証拠があるのに往生際の悪い宇宙人ね」
ジリ、と円堂ににじりよって、それ以上は言わせないとばかりに、少女はそう言い返して黒いサッカーボールを指さした。
「何度言ったら分かるんだ!俺たちは、宇宙人じゃ、ない!!!」
苛立ちながら、力強く円堂がそう言う。
「キャプテンの言う通りでヤンス!」
「俺たちの何処が宇宙人に見えるんだよ!!」
「疑うにも程がある!!」
雷門イレブンが次々に反発してそう言えば、少女はふふんと笑って腕を組んた。
「そうやって必死に否定する所がますます怪しい」
「宇宙人じゃないったら、宇宙人じゃない!!」
「いいや!宇宙人だ!」
「宇宙人じゃない!」
「宇宙人だ!」
「違う!」
女の子と円堂が、顔を突合せ、ぐぎぎ、と睨み合いの喧嘩を続ける。
「よし!そこまで言うなら証明してもらおうか!」
「おう!望むところだ!」
円堂がそう返事をすれば、女の子は着いてきな!と背を向けた。
他のみんなは気づいてなかったようだが、女の子が振り返って直ぐに小さくガッツポーズするのが見えて思わず笑ってしまった。
策士
案内されたのは公園内のサッカーグラウンドだった。