脅威の侵略者編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
瓦礫となった校舎の裏で破壊されていなかったドーム型の建物の中に足を踏み入れる。
木々の中に隠れていたおかげで修練所の入口が破壊されなくて良かった。ゲームでは確か別の入口があったはずだが、瓦礫を退けなきゃ行けなかったのでここが無事であってくれたのは本当に助かった。
地下の修練所に続く階段を降りていくと、そこに人影があった。
「誰?」
警戒するような声で、そこにいた長髪の女性が振り返ってこちらを見た。
本来ならサッカー部の関係者でも雷門中の職員でもないこの女性に対し、こちらこそ誰?であるが、言わずもがな、私は彼女のことを知っている。
『初めまして。雷門中サッカー部のマネージャーをしてます、水津梅雨です』
階段を全て降りて、彼女目の前に立ちそう言う。
「貴女が...」
まじまじ、とこちらを見詰めてくる彼女の反応的に、やはり彼と同じで何かしら私のことを知っているようだ。
ヒロトのいうあの人について何か分かるかもしれないな...。
『貴女は、吉良瞳子さん、ですよね?』
ニッコリと笑ってそう言えば、彼女は少し驚いたような顔をした後、怪訝そうにこちらを見た。
「何故私の名前を知ってるの」
おや?反応を見るにヒロトと違って私が彼女の事を知っている事を知らないようだ。
じゃあ、さっきの反応はなんだ??
『貴女も私の事をご存知の様でしたけど?』
「これから面倒を見るかもしれないチームの名簿に貴女の名前があったからよ」
『なるほど』
本当にそれで知ってただけっぽいな...。先を急いでフルネームで呼んだのはしくったかな。ものすごく警戒されている。
『私が貴女のことを知ってるのは、私が別の世界から来たからですよ。吉良さん』
そう言えば、彼女の眉間にシワがよった。それに、何を言ってるの?と言う目をしている。酷いなぁ本当の話なのに。
『別に不思議なことはないでしょう?宇宙人を名乗る子供が居るんですから、異邦人を名乗る者がいても』
「宇宙人を名乗る子供...。わざわざ自分は異邦人と、別の者として分ける当たり、宇宙人達とは違う、と言いたいのね?」
ええ、と頷けば吉良さんは黙ってじっとこちらを見つめた後、ついて来なさいと言って踵を返した。
言われるがままついて行けば、彼女は修練所の奥に進み、その突き当たりの壁に手を触れた。
シュン、と音がしてその壁が左右に別れた。
「乗って」
そう言われて、中に入れば吉良さんは扉の内側に設置されたパネルの数字を押した。
いつの間にか修練所内に設置されたこのエレベーターはゆっくりと下に降りていく。
『吉良さん、さっきの話信じてくれたんですか?』
「にわかには信じ難い話だわ。けれど...貴女の事は多少、響木監督から聞いています」
ふむ?どっちだろうか。本当の話か、偽の記憶喪失の可哀想な子の方か。いや、さっき異世界から来たって行った時に、眉間にシワこそ寄っていたが、馬鹿な事を言わないでとか、冗談と言わなかった所を見ると、本当の話をあらまし響木監督から聞いているのだろう。
「それに、あの選手データをまとめた資料とトレーニングメニュー表。一介の中学生が作ったものとは思えないほどきちんとまとめられていたから、響木監督から聞いた20歳を越えてるって話も納得できるわ」
吉良さんがそう話した後、ポンと音を立ててエレベーターが止まり降りると中は一面に大きなモニターがあってその前には雷門理事長が立っていた。
「来たか、瞳子くん。おや?水津くんも一緒か」
「先程、入口で遭遇したので」
吉良さんがそういう横で、理事長にぺこりと会釈する。
『理事長、怪我の程は...』
「うむ、もう大丈夫だよ。心配かけたね。夏未の支えになってくれてありがとう」
いえ、と頭を振る。
『どちらかと言えば、私の方が彼女に助けられてますから』
今日も実際世宇子中とのあれこれの最中助けてもらったし。
「そうか」
はい、と頷けば、理事長は満足そうに頷いた。やはり自分の娘が褒められると嬉しいのだな。
「瞳子くん、準備は整った。必要な物は全てイナズマキャラバンの方に積んである」
「ありがとうございます」
「後は、選手達だな。水津くん、みんなの怪我の様子はどうか聞いているかね」
『はい。今朝、入院してる5名のお見舞いに行って参りました。皆、全治数ヶ月と...。私が行った時は、気丈に振る舞ってましたけど、やはり体の傷だけでなく心にも負ってると思うので、きちんとしたメンタルケアが必要になるかと思います』
まあ、多分どう手を尽くしても彼らは力に魅了されるのだろうけれど...。
『他の...、試合に参加していない一ノ瀬、土門を覗いた8名は致命傷になるほどの大きな怪我は負ってないにしろ、世宇子中戦からの連戦なのもありますしダメージ蓄積は大きいと思います』
「そうか。残ったメンバーの精神状態はどうかね?」
『まあ、良くはないかと。けれど、あの円堂守が率いるチームですよ。そう簡単には折れませんよ』
「うむ、そうだな。彼らなら...」
『きっと宇宙人を倒すために立ち上がってくれますよ』
そう言えば、理事長は少し驚いたような顔をしたあと、ああと頷いた。
「君は勘がいいんだったね。きっと彼らは立ち上がってくれるだろう。だが、宇宙人と戦うというのはそう簡単な話ではない。だから水津くん、ぜひ彼らの力になってやってくれ」
『無論です』
そう力強く頷けば、理事長はよろしく頼むよと言った。
「理事長。彼女を連れて、キャラバンの最終確認をして来ても構いませんか」
「ああ。水津くん、私たちが先程から話しているイナズマキャラバンというのは、宇宙人と戦う為に君たちに各地で強い選手を集めて貰おうと思っていてね。そのために移動手段として用意したものでね」
はい、ととりあえず頷くが、全部知ってますよ理事長。
「マネージャーの君にも、キャラバンの荷の点検を頼むよ。それで必要なものがあれば、なんなりと言いなさい。全て出発までには用意しよう」
『了解です』
頷いて、吉良さんの方を見れば、行きましょうと言って彼女は踵を返した。
それについて行きエレベーターに乗って、もうひとつしたの階層に降りる。
『おぉ...』
エレベーターが開いて降りたエリアは広い格納庫になっていて、見た事のあるキャラバンが置いてあった。
『思った以上にデカイな...』
まあ20人は乗るようになるし、キャラバンと言えど普通にバス並みの大きさがある。
『吉良さん、まず何の点検からします?』
そう言えば、吉良さんはじっとこちらを見て黙っている。
『吉良さん?』
「その、吉良さんって言うのやめてちょうだい」
思わず、はい?と首をかしげる。
「苗字で呼ばれるのは好きではないの」
『あー...』
そうね。彼女的には出来れば苗字は伏せたいか。
『わかりました、瞳子さん』
「ええ、それで構わないわ」
ふむ。瞳子さんの年齢は公式に公開されてないから実際の所幾つか分からないが、明らかにサッカー部の子供たちよりかは私と年齢が近いはずだ。
なんかお友達でもない女性の方を名前で呼ぶのは変な感じだなぁ。仕事してると皆、苗字で呼び合うしねぇ。
「まずは...。貴女たちの部室から出せたものは少ないわ」
『まあ、あの状態じゃあ...』
部室の中にあったものを出すにはまず、瓦礫を撤去しなきゃだもんねぇ。
「選手データを印したファイルだけは1冊引っ張り出すことが出来たわ」
そう言って瞳子さんはキャラバンの荷台部分を開けて、色々と詰まっている荷物の箱の上に置かれた1冊のファイルを手に取ってこちらに突き付けた。
「成長の伸びや、体調によるコンデションの差、個々の突出した能力、見ていてとても分かりやすかったわ」
『私だけの力じゃないですよ。他のマネージャー達が、練習中の記録をしっかり取ってくれるので』
そう言いながら、ファイルを受け取る。
「他のマネージャーはどういった子たち?」
『木野さんは1番マネージャー歴が長いので手馴れていて、記録も見やすくてわかりやすいです。応急処置等も上手ですね。音無さんは、カメラを使って映像記録をしてくれて、データは彼女のPCに纏めてくれてます。あとは彼女は情報収集が得意ですね。兄の鬼道くんと一緒で観察眼もありますね』
説明をすれば、瞳子さんは静かに頷く。
『理事長の娘さんである雷門さんは、理事長の手伝いをされてきたので、書類を纏めたり、備品管理が得意ですね。お嬢様なので雑務をこなすマネージャーと言う点では他の2人に劣る面もありますけど、マネジメントと言う点では彼女の右に出るものはないかと』
「なるほど...。やはり、貴女のまとめは分かりやすいわ」
『そうですか?ありがとうございます』
「ええ、マネージャー達にどういう割り振りをすればいいか、今のでだいたい検討がつきました」
『お役に立てたようでなによりです』
そう言えば、瞳子さんは、それじゃあと話を切り替えた。
「ドリンクボトルとか、大急処置の道具とかはこちらの箱に入ってるわ。見て足りないものがあれば言ってちょうだい」
はい、と頷いて荷の詰められたダンボールを開けてみれば、大概の物は揃っているようだ。
『消毒液と冷感スプレーと包帯はもっと多くてもいいかも知れませんね。あとタオルはあればあるほどいいです。応急処置にも使えるので』
「わかったわ」
『あとユニフォームはどうされました?予備は全部部室の中だったと思うんですけど』
「ええ、取り出すのが無理だったから理事長が同じものを用意させたようよ。それも明日には届くそうよ」
『そうですか』
流石金持ち、やること事が早いな。
『サッカー部として必要なものはそれくらいですかね...。後は、酔い止めと袋と、携帯トイレもある方がいいかもしれませんね』
「携帯トイレ...。それは盲点だったわ。そうね長旅になるなら必要だわ」
壁山とか壁山とか壁山がすぐトイレ!って言うからなぁ。
「酔い止めと袋は一応用意してあるわ」
『じゃあ、そのくらいですかね』
他のダンボールに記載された文字を見れば、寝袋だとか調理道具って分けてあるし必要な物はそのくらいだろうか。
『逆に子供たちに持ってこさせるものをリストアップしといた方が良さそうですね』
誰かしら忘れ物しそうだし。
「ええ。それはお願いしても?」
『はい』
必要なものをまとめた後は、携帯で入力して後で一斉送信しよう。
「それじゃあ、理事長の所に戻りましょうか」
はい、と頷いて、瞳子さんと共にエレベーターに乗った。
事前準備
壁が薄いのか、子供たちの声がでかいのか分からないが、エレベーターのドア越しに話し声が聞こえていた。