脅威の侵略者編
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世宇子中との戦いで傷付いたみんなの治療も鬼瓦刑事が手配してくれた医療班にしっかりしてもらって、テレビや雑誌なんかの勝利者インタビューを終えて、バスに揺られて雷門中へ帰る。
一ノ瀬と土門は、幼なじみの西垣がお祝いしてくれるからとそちらに向かったのでバスに乗車していない。豪炎寺も夕香ちゃんへの報告の為に病院の最寄りで降ろした。
バスの中にいるみんなは優勝トロフィーにウキウキしている。
「落とさないでよー!落としたら大顰蹙だからね」
宍戸の言葉に現在トロフィーを持ってる少林寺がわかってるって、と返すが、バスが揺れた衝撃に寄って、手からポロリと落ちた。
それを少林寺の隣に座った壁山が何とかキャッチしてくれた。
「サンキュー壁山ぁ!」
はあ〜、と1番後ろの席の1年生達がほっと息を着く中、前列では仲良く兄妹並んで座った春奈ちゃんが鬼道におめでとう、とお祝いの言葉を述べている。
「誰がここまで行けるって想像した?俺達、初めはたった7人だったんだぜ!?」
両拳を握って力説する半田の隣で染岡はチラリと夏未ちゃんの方を見た。
「廃部廃部ってバカにしてた奴も居たよなあ?」
いや、それはそもそも練習全くしてなかった君らが悪くない?
「それを言うなら鬼道くんだって初めは豪炎寺くん以外相手にしてなかったわよ」
ふふん、と夏未ちゃんは鬼道の方に視線を移した。
「最初はな。だが、帝国との練習試合がお前たち全員を目覚めさせた」
『そうね』
「おやおや皆さん?1番大事な人を忘れてませんか?」
そう言って目金は眼鏡の縁を持ち上げてみせた。
「お前なんかしたか?」
「帝国との練習試合で僕が戦略的撤退したからこそ、豪炎寺くんが蘇ったんですよぉ?つまり雷門を優勝に導いた功労者はこの僕という事に!」
「逃げときながら!」
「威張るな!」
染岡と半田の連携攻撃が突き刺さり、目金は、はわ〜と唸った。
「それなら目金さんより水津さんが来てあの場を繋いでくれたお陰で豪炎寺さんが来てくれたっスよ」
『え?あ、私?』
「ああ、レッドカードで退場したやつな」
「鬼道の事ビンタしてな!」
染岡と半田がまたも連携してそう言えば今度は、鬼道にダメージが入った。
「ぐっ。お前たち、その事を掘り返すな!人がせっかく忘れようとしているのに...」
『諦めな鬼道。私ら永遠にこのネタで弄られるよきっと』
「くそっ、貴様のせいだからな」
『だからごめんって』
鬼道にそう言えば、彼の隣の春奈ちゃんがくすくすと笑った。
「どうした春奈?」
「いや、お兄ちゃんと先輩、第一印象最悪だった筈なのに、今ではすっかり仲良しだなって」
「確かにそこが仲良くなってんのが1番意味不明だよね」
松野の言葉にそうかな?と首を傾げる。
『昨日の敵は今日の友ってやつだったんじゃない?』
ね?と鬼道を見れば彼はふっと笑った。
「まあ、思っていたよりまともな思考回路のやつだったからな」
『待って、それって最初頭おかしい奴だと思ってたって事!?』
「ああ」
即答で頷いた鬼道に思わず、はあ!?と返す。
そんな2人の様子に他の子達はケタケタと笑っていた。
「私は...この日が来るのをずっと信じてたよ」
そう秋ちゃんがポツリと話した。
そうだよなぁ。秋ちゃんは創設からずっとみんなの事を見てきてるんだもんなぁ。
「ありがとう!秋!」
円堂が嬉しそうに秋ちゃんの方を振り向いてみた。
と言うか...いつの間にやら名前で呼んでる。円堂のことだから一ノ瀬が呼んでるのが移ったとかそんなところで他意はないんだろうなぁ。
「それで?これからの戦いは?日本一になったら次に目指すものは何かしら?」
夏未ちゃんの問に、次?と円堂は首を傾げる。
「次か...。面白いじゃないか」
そう答えたのは円堂の隣に座っている風丸だった。
「きっとまだまだ強い奴はいっぱいいるからな」
「いっぱいって何処に?」
「世界だよ。もっともっと強いやつらが居るはずだ」
流石、アスリート気質な風丸はしっかりと先を見据えている。
「世界...!」
「ふふ...世界か...!」
みんなそれぞれが、風丸の言葉に世界を想像した。
「でっかく出たね」
「デカすぎて俺トイレ行きたくなったッス...!」
「よぉし!世界目指してみんなで大特訓頑張ろうぜ!!」
円堂の掛け声に、おお!とみんなが力強く頷いた。
『世界、か...』
もうすぐ稲妻町に着く頃だろう、と窓の外を見た。
世界の前に
この先で待ち構えるのは...。
それを想像してため息をひとつ吐いた。