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しつこい程に好意を示してくる彼女「好きな人ができました(大嘘)」
2019/06/01 15:471️⃣自身を好きと豪語していた女に別の相手が見つかった?そんなこと信じてなるものか。「あー、うん。そうなんだ…へぇ」真っ白になる脳内と真っ暗になる視界。間の抜けた返事をするだけで精一杯だった。じゃあ、と去る彼女の背中は心なしか嬉々としているようにすら見える。やっとの思いで踏み出す一歩。腕を伸ばして細い手首を捕まえた。「待って、最後に言わせて。俺は○○が好きだよ」こうなるまで気が付かなかったことを悔やんだ。彼女は一向に振り向かない。それが答えを物語っている?否、涙を見せないための抵抗だ。「お願い。答え…聞かせて?」振り払われないのをいいことに背後から肩を抱き締めた。心なしか震えている。手をぎゅっと掴んだ彼女は一向に放そうとしない。彼は、先の言葉を嘘と確信した。「ねぇ、俺のことまだ好きでしょ?」
2️⃣「は?俺は?もういいの?」率直な感想だった。同時に、得体の知れない怒りにも似た感情が腹の奥底から湧き上がる。早くなる鼓動、捻れる消化器、乾く口内。もういいの、彼女は笑顔でそう告げる。「待てよ…ふざけんなよ……俺は…俺はもう…お前のこと好きになっちまってんのに…」帽子で隠れた瞳はよく見えないが、声は心なしか震えていた。構って欲しくて言った一言がこうも効くとは。驚きと嬉しさで彼女の口許は綻んでいる。「何笑って……もしかしておまっ…動画撮ってた?!」見開かれた瞳。的外れな思い違いに笑みを零す。歓喜も程々に真実を告げ、やがて報われる各々の想い。「ばっ……ばか…そーゆー嘘…や、やめろよな!」
3️⃣「ふーん。その程度だったんですね」執拗なまでの“好き”を断り続けることはある種の優越感ですらあった。その相手から愛想を尽かされた、この事実が深く突き刺さる。否、本当は気が付いていた。自分も彼女が好きなのだと。告げられる度に募る想いに気付かぬはずがなかった。なのに、つまらぬ優越感とあまりの熱意に安心しきっていた。ふうっと息を吐き意を決す。「では餞別です。僕は…貴女のことが好きです。貴女が僕を思うように」真っ直ぐ目を見てそう言えば、先程の悪戯盛りのような顔とはまるで違う、恋する乙女のような表情が其処に現れた。ズルい、手で覆われた口元から聞こえた小さな声。「僕の勝ちですね」惚れてしまったという点を除けば。
🐴「あ゛?」その一音に彼の全ての気持ちが込められている。怒り、嫉妬、焦燥、後悔etc...。今までごめんね?もう忘れて、言ってやった。ついに言ってやった。彼女は嬉々として嘘を告げる。相手にしない彼が悪いのだ。これで少しは意識するというものだろう。しかし彼女の思惑通りにはいくはずもない。何故なら彼はとっくに恋をしていたから。「おい。くだらねぇこと言ってねえでいつもみてぇに鬱陶しいほど纏わり付いてこいよ」愁いを帯びたその声が心を射抜かぬはずがなかった。“好き”その言葉はいつも、どのように口にしていたのだろう。彼女の口からは思うように言葉が出ない。眼前には愛しの彼。何故、こんなにも近くにいるのだろう。「下手くそかよ」心臓に悪いその言葉と同時に、煙草の味が口いっぱいに広がった。
🐰好きな男ができたと女は言った。「へぇ。上手くいったら是非とも紹介して下さいね」彼は笑顔を作りまるで興味はないとでも言いたそうな返事をした。それもそのはず、ストーカー紛いの女の事など、疎ましくはあれど他の興味などないのだろう。少しくらい振り向いてくれたっていいじゃない、その気持ちを込めた精一杯の悪足掻きだった。けれどそれさえ裏目に出て、いよいよこの恋にも終わりが近いことを彼女は察する。「行かなくてよろしいのですか?新しい好きな男の所に」美しい横顔が奏でる滑らかな言葉。そんなクール過ぎる姿と、時折見せる熱い姿と、良く通る大き過ぎる声に惚れたのだ。「んだよ、まだ俺に未練があんのか?俺は…未練有り有りだよボケ女」低い声、重なる唇、絡み合う舌。恋は、違う形で終焉を迎えた。
🐦「そうか…」良い機会だと揶揄ってみただけだった。なのに、だというのに。そんな風に大きな身体を竦められては心が痛む。嘘だと切り出せる空気でもなく、美しい瞳と無言で見つめ合うだけの時間が過ぎた。「小官のことは構うな…想い人の元へ……」覇気の無い言葉に胸が痛む。雄々しい彼が、天然な彼が、マイペースな彼が好きなのに。予想していなかったとはいえ悲しませてしまった。意を決し、さっきのは嘘です!と普段に負けない勢いで叫んだ。「嘘…?」終わった、仏のような面持ちにもなるというものだ。一世一代の恋が今終わりを告げようとしている。「……つまり」続きの代わりに唇が触れた。幸せの満ちる脳の端で彼女は思う、彼が“良い人”で本当に良かったと。
🍭「なにそれ。僕のこと諦めちゃうの?」予想外の薄い反応に顔を強張らせれば頬を左右に引っ張られた。真剣な表情の彼は続ける「そういう大嘘吐くならさー、僕の反応なんて気にしてたらダメだよぉ?」。パッと頬は放され、唖然としたまま、笑顔に戻った彼を目で追った。可愛い、好き、かっこいい、好き……好き!言いたくて堪らない。抱き締めたくて堪らない。けれど彼はきっとそれを許しはしない。どんなに熱く恋い焦がれようと報われない恋などざらに存在するのだ。「で、僕のこと諦めちゃうの?ふーん。……じゃあ、今度は僕が追い掛けるから、覚悟してよね!」ピョンと大きく飛び跳ね、詰められた距離に退けば、頬には柔らかな温もりが静かに走った。「ばーか。好きになるなら、惚れさせるくらいの気持ちでやりなよね。つっまんないのー」
📚「嘘ですよね?」顔面蒼白、必死の形相。憐れに思い嘘だと即座に告げた。全身の力が抜け座り込む彼を見下ろし、片想いながら酷く絆されていることを実感する。「よかった」彼女の脚に身体を預け、小さく息を吐いた彼。自らは本音を述べないくせに相手には本音を求めるなんて、まったくもって狡い男だ。けれど惚れた弱みなのだろう、悲しませるくらいならば真実のみを告げ続ける。それでも伝わらない恋など止めてしまいたい。そう、何度思っただろう。何度、嘘を吐いては否定してきただろう。これってもう実質付き合ってない?それを言えてしまえば楽になれるのに。「ところで。小生たち…もう付き合ってますよね?」揶揄われている。揶揄われているだけのはず。嘘ですよと今に言うはず。「ねぇ、そうでしょう?」翡翠色の瞳も今日ばかりは真摯だ。縮まる距離、触れる唇。もう、これは真実だ。
🎲「まあ…そーゆーこともあるよな」聞き慣れない悲しげな声の出所を見遣れば、見慣れない悲しげな瞳が見つめていた。だって迷惑でしょ?と畳み掛けるように彼女は続ける。見抜いてほしい、引き留めてほしい、いい加減、この恋が本気なのだと気付いて欲しい。でもこの想いは届かず日常に戻るのだろう。ひと所に留まらない彼を追い、いまいち気持ちの掴めない表情を想う毎日に。不機嫌なままの彼は言う「迷惑なんかじゃねーよ」。怒気を孕んだ声色には背筋が凍った。強く掴まれた肩には膝が震えた。塞がれた唇には温もりが伝わった。もしかすると気持ちも届いたかもしれない。そう高望みせずにはいられない程に、脳は幸せに支配されている。「……意味、わかっかよ。俺も………その…あれだ……お前のことが好き!」ニッと上がった口角。ああ、やはり彼にはその顔が似合う。今だけでも、ここに、そばにいて欲しい。
💉「ここ暫く顔を見せないと思えば…なるほど」はぁ、と小さな溜息。そういうわけなので!と去ろうとするや否や骨張った大きな手に手首を掴まれた。「行かせないよ」短く、低く呟かれた言葉。待ち望んでいた一言。放してと口にすれば「君とお付き合いさせて欲しい。真剣に。……好きだよ」と早口気味に告げられた。今まで何度も自らが口にし、使い古してきた“好き”。やっと手に入れた彼からの“好き”。重みが違った。己の軽薄さを恨んだ。「いつもの元気はどうしたの?いや……好きな人が出来たから私の気持ちには応えられない、のか」解っていて言っているのだろう、彼は反応を窺っている。意を決し、見くびらないでくださいと叫び唇を奪う。諦められるわけがない。彼女勇ましい姿を目にし、彼は満足気に微笑んでいた。「よくできました……なんてね」
🥂「そう…それじゃあ…お別れだね」スーツの襟を正し小さく息を吐く。この戦闘服に身を包まなくとも彼女であれば解り合えるかもしれない、その願いは泡と消えた。「一つだけいいかい?僕…実はね、スーツを着ていないと女の子と会話すら出来ないんだ。だから…いずれ君に愛想を尽かされることは覚悟してたよ」美しい顔を伝う雫。嘘とは言い出せない空気にたじろぐ。「こんな重い話、急にごめんね。ホストとして出会っていない君となら…なんて高望みしていたんだ。許してほしい」そっと手を取り甲にキスしてお別れ。キザなことこの上ない。彼女は息を吸い嘘だと声を張る。彼は目を見開いたのち言った。「……じゃあ、もう少しだけ待っていてくれる?」そんなこと、言われるまでもなく待つつもりだ。「…僕が、君を独り占めしてみせるからね」
👔「……は?お前、俺のこと好きって言ってたじゃん」心の支えだった。こんな自分を無条件で愛してくれる、そんな殊勝な人間はきっとこの先一生現れない。「つまんない冗談止めろよ…」気付いた時には腕を掴んでいて、彼女は驚いて目を見開いていた。それでも尚、冗談じゃないよ?と悪戯っぽい笑顔を浮かべる彼女。今まで邪険にしてきたツケが回ったのかと目が眩む。俺のせい、俺のせい、俺のせい、繰り返し過ぎ行くいつもの台詞。息が詰まり、目は霞む。大丈夫?と肩を叩かれ我に帰るも、動悸は収まらず気持ちは落ち着かない。見慣れた光景を一蹴しようと、ネタばらしをすべく彼女は口を開いたが、その前に彼から小さな言葉が発せられた。「お前がいなくちゃ俺は駄目なんだ」その意味は、その意図は。「だから……俺のこと好きなままで居てよ」嘘と告げられない彼女と涙目の彼。無言の問答は暫し続く。
2️⃣「は?俺は?もういいの?」率直な感想だった。同時に、得体の知れない怒りにも似た感情が腹の奥底から湧き上がる。早くなる鼓動、捻れる消化器、乾く口内。もういいの、彼女は笑顔でそう告げる。「待てよ…ふざけんなよ……俺は…俺はもう…お前のこと好きになっちまってんのに…」帽子で隠れた瞳はよく見えないが、声は心なしか震えていた。構って欲しくて言った一言がこうも効くとは。驚きと嬉しさで彼女の口許は綻んでいる。「何笑って……もしかしておまっ…動画撮ってた?!」見開かれた瞳。的外れな思い違いに笑みを零す。歓喜も程々に真実を告げ、やがて報われる各々の想い。「ばっ……ばか…そーゆー嘘…や、やめろよな!」
3️⃣「ふーん。その程度だったんですね」執拗なまでの“好き”を断り続けることはある種の優越感ですらあった。その相手から愛想を尽かされた、この事実が深く突き刺さる。否、本当は気が付いていた。自分も彼女が好きなのだと。告げられる度に募る想いに気付かぬはずがなかった。なのに、つまらぬ優越感とあまりの熱意に安心しきっていた。ふうっと息を吐き意を決す。「では餞別です。僕は…貴女のことが好きです。貴女が僕を思うように」真っ直ぐ目を見てそう言えば、先程の悪戯盛りのような顔とはまるで違う、恋する乙女のような表情が其処に現れた。ズルい、手で覆われた口元から聞こえた小さな声。「僕の勝ちですね」惚れてしまったという点を除けば。
🐴「あ゛?」その一音に彼の全ての気持ちが込められている。怒り、嫉妬、焦燥、後悔etc...。今までごめんね?もう忘れて、言ってやった。ついに言ってやった。彼女は嬉々として嘘を告げる。相手にしない彼が悪いのだ。これで少しは意識するというものだろう。しかし彼女の思惑通りにはいくはずもない。何故なら彼はとっくに恋をしていたから。「おい。くだらねぇこと言ってねえでいつもみてぇに鬱陶しいほど纏わり付いてこいよ」愁いを帯びたその声が心を射抜かぬはずがなかった。“好き”その言葉はいつも、どのように口にしていたのだろう。彼女の口からは思うように言葉が出ない。眼前には愛しの彼。何故、こんなにも近くにいるのだろう。「下手くそかよ」心臓に悪いその言葉と同時に、煙草の味が口いっぱいに広がった。
🐰好きな男ができたと女は言った。「へぇ。上手くいったら是非とも紹介して下さいね」彼は笑顔を作りまるで興味はないとでも言いたそうな返事をした。それもそのはず、ストーカー紛いの女の事など、疎ましくはあれど他の興味などないのだろう。少しくらい振り向いてくれたっていいじゃない、その気持ちを込めた精一杯の悪足掻きだった。けれどそれさえ裏目に出て、いよいよこの恋にも終わりが近いことを彼女は察する。「行かなくてよろしいのですか?新しい好きな男の所に」美しい横顔が奏でる滑らかな言葉。そんなクール過ぎる姿と、時折見せる熱い姿と、良く通る大き過ぎる声に惚れたのだ。「んだよ、まだ俺に未練があんのか?俺は…未練有り有りだよボケ女」低い声、重なる唇、絡み合う舌。恋は、違う形で終焉を迎えた。
🐦「そうか…」良い機会だと揶揄ってみただけだった。なのに、だというのに。そんな風に大きな身体を竦められては心が痛む。嘘だと切り出せる空気でもなく、美しい瞳と無言で見つめ合うだけの時間が過ぎた。「小官のことは構うな…想い人の元へ……」覇気の無い言葉に胸が痛む。雄々しい彼が、天然な彼が、マイペースな彼が好きなのに。予想していなかったとはいえ悲しませてしまった。意を決し、さっきのは嘘です!と普段に負けない勢いで叫んだ。「嘘…?」終わった、仏のような面持ちにもなるというものだ。一世一代の恋が今終わりを告げようとしている。「……つまり」続きの代わりに唇が触れた。幸せの満ちる脳の端で彼女は思う、彼が“良い人”で本当に良かったと。
🍭「なにそれ。僕のこと諦めちゃうの?」予想外の薄い反応に顔を強張らせれば頬を左右に引っ張られた。真剣な表情の彼は続ける「そういう大嘘吐くならさー、僕の反応なんて気にしてたらダメだよぉ?」。パッと頬は放され、唖然としたまま、笑顔に戻った彼を目で追った。可愛い、好き、かっこいい、好き……好き!言いたくて堪らない。抱き締めたくて堪らない。けれど彼はきっとそれを許しはしない。どんなに熱く恋い焦がれようと報われない恋などざらに存在するのだ。「で、僕のこと諦めちゃうの?ふーん。……じゃあ、今度は僕が追い掛けるから、覚悟してよね!」ピョンと大きく飛び跳ね、詰められた距離に退けば、頬には柔らかな温もりが静かに走った。「ばーか。好きになるなら、惚れさせるくらいの気持ちでやりなよね。つっまんないのー」
📚「嘘ですよね?」顔面蒼白、必死の形相。憐れに思い嘘だと即座に告げた。全身の力が抜け座り込む彼を見下ろし、片想いながら酷く絆されていることを実感する。「よかった」彼女の脚に身体を預け、小さく息を吐いた彼。自らは本音を述べないくせに相手には本音を求めるなんて、まったくもって狡い男だ。けれど惚れた弱みなのだろう、悲しませるくらいならば真実のみを告げ続ける。それでも伝わらない恋など止めてしまいたい。そう、何度思っただろう。何度、嘘を吐いては否定してきただろう。これってもう実質付き合ってない?それを言えてしまえば楽になれるのに。「ところで。小生たち…もう付き合ってますよね?」揶揄われている。揶揄われているだけのはず。嘘ですよと今に言うはず。「ねぇ、そうでしょう?」翡翠色の瞳も今日ばかりは真摯だ。縮まる距離、触れる唇。もう、これは真実だ。
🎲「まあ…そーゆーこともあるよな」聞き慣れない悲しげな声の出所を見遣れば、見慣れない悲しげな瞳が見つめていた。だって迷惑でしょ?と畳み掛けるように彼女は続ける。見抜いてほしい、引き留めてほしい、いい加減、この恋が本気なのだと気付いて欲しい。でもこの想いは届かず日常に戻るのだろう。ひと所に留まらない彼を追い、いまいち気持ちの掴めない表情を想う毎日に。不機嫌なままの彼は言う「迷惑なんかじゃねーよ」。怒気を孕んだ声色には背筋が凍った。強く掴まれた肩には膝が震えた。塞がれた唇には温もりが伝わった。もしかすると気持ちも届いたかもしれない。そう高望みせずにはいられない程に、脳は幸せに支配されている。「……意味、わかっかよ。俺も………その…あれだ……お前のことが好き!」ニッと上がった口角。ああ、やはり彼にはその顔が似合う。今だけでも、ここに、そばにいて欲しい。
💉「ここ暫く顔を見せないと思えば…なるほど」はぁ、と小さな溜息。そういうわけなので!と去ろうとするや否や骨張った大きな手に手首を掴まれた。「行かせないよ」短く、低く呟かれた言葉。待ち望んでいた一言。放してと口にすれば「君とお付き合いさせて欲しい。真剣に。……好きだよ」と早口気味に告げられた。今まで何度も自らが口にし、使い古してきた“好き”。やっと手に入れた彼からの“好き”。重みが違った。己の軽薄さを恨んだ。「いつもの元気はどうしたの?いや……好きな人が出来たから私の気持ちには応えられない、のか」解っていて言っているのだろう、彼は反応を窺っている。意を決し、見くびらないでくださいと叫び唇を奪う。諦められるわけがない。彼女勇ましい姿を目にし、彼は満足気に微笑んでいた。「よくできました……なんてね」
🥂「そう…それじゃあ…お別れだね」スーツの襟を正し小さく息を吐く。この戦闘服に身を包まなくとも彼女であれば解り合えるかもしれない、その願いは泡と消えた。「一つだけいいかい?僕…実はね、スーツを着ていないと女の子と会話すら出来ないんだ。だから…いずれ君に愛想を尽かされることは覚悟してたよ」美しい顔を伝う雫。嘘とは言い出せない空気にたじろぐ。「こんな重い話、急にごめんね。ホストとして出会っていない君となら…なんて高望みしていたんだ。許してほしい」そっと手を取り甲にキスしてお別れ。キザなことこの上ない。彼女は息を吸い嘘だと声を張る。彼は目を見開いたのち言った。「……じゃあ、もう少しだけ待っていてくれる?」そんなこと、言われるまでもなく待つつもりだ。「…僕が、君を独り占めしてみせるからね」
👔「……は?お前、俺のこと好きって言ってたじゃん」心の支えだった。こんな自分を無条件で愛してくれる、そんな殊勝な人間はきっとこの先一生現れない。「つまんない冗談止めろよ…」気付いた時には腕を掴んでいて、彼女は驚いて目を見開いていた。それでも尚、冗談じゃないよ?と悪戯っぽい笑顔を浮かべる彼女。今まで邪険にしてきたツケが回ったのかと目が眩む。俺のせい、俺のせい、俺のせい、繰り返し過ぎ行くいつもの台詞。息が詰まり、目は霞む。大丈夫?と肩を叩かれ我に帰るも、動悸は収まらず気持ちは落ち着かない。見慣れた光景を一蹴しようと、ネタばらしをすべく彼女は口を開いたが、その前に彼から小さな言葉が発せられた。「お前がいなくちゃ俺は駄目なんだ」その意味は、その意図は。「だから……俺のこと好きなままで居てよ」嘘と告げられない彼女と涙目の彼。無言の問答は暫し続く。