DX1~熱闘編~
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策略で羽京を誘い込み、一対一の交渉に持ち込んだ千晶は、いよいよ賭けに出た。
「今いる人々が生き延びるためにも、千空のもつ科学力は必要。そうは思わない? 元自衛隊のお兄さん。」
「フッ」
羽京に賭けたのは消去法だったとはいえ、羽京しかいない、という直感もまた千晶の中にあった。
「今ここにいる誰にも死んでほしくない、というのは、僕も同じだ。」
「千空の力を借り、人類を救う。一緒に、闘ってくれる?」
希望を見出した千晶を前に、羽京は、鼻で笑う。
「つまり、司を裏切る、と? 恐ろしいことを言うんだな、君は。彼に知られたら、拷問どころじゃ済まない。僕が君を売らないとも限らない。わかっていて、言っているの?」
木蔭の闇にぼんやり浮かぶ羽京の顔は強張っている。
それでも千晶は、己の信じるものを疑わなかった。
「あなたがあたしを売ったとて、明日死ぬか来年死ぬかの違いしかない。」
「…ッ!」
「理想郷は、理想でしかない。このままでは我々は、うたかたの理想に殺される。」
それは、羽京が内心思っていたことだった。だが、迫りくる残酷な現実から目を逸らし、考えないようにしてきたことでもあった。
「我々は、いずれ死ぬ。それこそ歳をとる前に、死ぬ。科学が当たり前にあった時代の人間が、科学力の無い世界で生き抜くことなど、ほぼ不可能。感染症、栄養失調、毒、暑さ寒さに天災、獣害、残り少ない資源を巡っての醜い争いと、残酷な階級社会……生き延びたとしても、待っているのは地獄だ。」
千晶の言葉一つ一つを、羽京は嚙みしめるように聴いていた。
「……同意見だ。」
「科学力を復活させ、今いる人々を生き延びさせたい。……協力、してくれる?」
羽京の目に、かすかに、明るい光が灯った。
「共同戦線、というわけだね。」
「うん。あたしとじゃ、不服?」
その真っすぐな視線の先で、羽京に明るい光が差した。
「いや、僕を選んでくれて、光栄だね。」
「よろしく。」
手を差し出す千晶と、応える羽京。
「うん。」
視線を合わせ、固く結ばれた双方の手は、少しだけ汗ばんでいた。
「それにしても。」
千晶と横に並んで座った羽京は、緊張の糸が解けたのか、大きく息を吐いて、切り出した。
「それにしても?」
「僕が自衛官とわかっていたのなら、その技術力とか、奉公の精神とか、口説くカードはいっぱいあったはずだ。何でまた、前置きもせずに本題に入ったの。」
「え? そんなの、要らないじゃん。」
「え?」
「司帝国にいながらにして、その在り方に内心疑問を持っている、マトモな思考回路の人物。であれぱ、それでよかったんだよ。回りくどいこと言ったところで、それが合致してなかったら意味がないでしょ。」
「…とは言うけど、結局、ぶっつけ本番だったってこと?」
まさか、という顔の羽京に向いて、千晶はニカッと笑って、言った。
「結果オーライ。」
「……君って人は……。」
「あはは。」
「…僕じゃなかったら、どんな目に遭ってたか…。」
「いいじゃん、結果オーライなんだから。」
羽京は、頭を抱えた。
「羽京は、監視、という名目で、情報を集めてるんだよね?」
「うん。今は、少しでも多くの情報を集めている段階だ。まだ当分は変な動きはできないだろうな。」
「まだ情報が少なすぎる、か。情報量が鍵となるのは、確かに数多の戦争の歴史が教えてくれている。」
「周囲の情報収集は僕に任せて。千晶は…」
「内部の情報収集。」
「…で、いい?」
「役割分担は共闘の基本。そのために、あたしは司の懐にいる。」
「……強いんだな、君は。」
「え? あたし自身に武力が無いから、司の元にいるのが身を護るのに最適ってことからなんだけど、な。」
「……まあ、いい。気をつけて。」
「うん。羽京も。」
羽京が言う「強い」とは、武力のことを指したのではなく……。
森から出て、それぞれの持ち場へと戻る。その華奢な背中を、羽京は、しばらく見送っていた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
お待たせしました! 千晶と羽京のバディ、爆誕です!
「今いる人々が生き延びるためにも、千空のもつ科学力は必要。そうは思わない? 元自衛隊のお兄さん。」
「フッ」
羽京に賭けたのは消去法だったとはいえ、羽京しかいない、という直感もまた千晶の中にあった。
「今ここにいる誰にも死んでほしくない、というのは、僕も同じだ。」
「千空の力を借り、人類を救う。一緒に、闘ってくれる?」
希望を見出した千晶を前に、羽京は、鼻で笑う。
「つまり、司を裏切る、と? 恐ろしいことを言うんだな、君は。彼に知られたら、拷問どころじゃ済まない。僕が君を売らないとも限らない。わかっていて、言っているの?」
木蔭の闇にぼんやり浮かぶ羽京の顔は強張っている。
それでも千晶は、己の信じるものを疑わなかった。
「あなたがあたしを売ったとて、明日死ぬか来年死ぬかの違いしかない。」
「…ッ!」
「理想郷は、理想でしかない。このままでは我々は、うたかたの理想に殺される。」
それは、羽京が内心思っていたことだった。だが、迫りくる残酷な現実から目を逸らし、考えないようにしてきたことでもあった。
「我々は、いずれ死ぬ。それこそ歳をとる前に、死ぬ。科学が当たり前にあった時代の人間が、科学力の無い世界で生き抜くことなど、ほぼ不可能。感染症、栄養失調、毒、暑さ寒さに天災、獣害、残り少ない資源を巡っての醜い争いと、残酷な階級社会……生き延びたとしても、待っているのは地獄だ。」
千晶の言葉一つ一つを、羽京は嚙みしめるように聴いていた。
「……同意見だ。」
「科学力を復活させ、今いる人々を生き延びさせたい。……協力、してくれる?」
羽京の目に、かすかに、明るい光が灯った。
「共同戦線、というわけだね。」
「うん。あたしとじゃ、不服?」
その真っすぐな視線の先で、羽京に明るい光が差した。
「いや、僕を選んでくれて、光栄だね。」
「よろしく。」
手を差し出す千晶と、応える羽京。
「うん。」
視線を合わせ、固く結ばれた双方の手は、少しだけ汗ばんでいた。
「それにしても。」
千晶と横に並んで座った羽京は、緊張の糸が解けたのか、大きく息を吐いて、切り出した。
「それにしても?」
「僕が自衛官とわかっていたのなら、その技術力とか、奉公の精神とか、口説くカードはいっぱいあったはずだ。何でまた、前置きもせずに本題に入ったの。」
「え? そんなの、要らないじゃん。」
「え?」
「司帝国にいながらにして、その在り方に内心疑問を持っている、マトモな思考回路の人物。であれぱ、それでよかったんだよ。回りくどいこと言ったところで、それが合致してなかったら意味がないでしょ。」
「…とは言うけど、結局、ぶっつけ本番だったってこと?」
まさか、という顔の羽京に向いて、千晶はニカッと笑って、言った。
「結果オーライ。」
「……君って人は……。」
「あはは。」
「…僕じゃなかったら、どんな目に遭ってたか…。」
「いいじゃん、結果オーライなんだから。」
羽京は、頭を抱えた。
「羽京は、監視、という名目で、情報を集めてるんだよね?」
「うん。今は、少しでも多くの情報を集めている段階だ。まだ当分は変な動きはできないだろうな。」
「まだ情報が少なすぎる、か。情報量が鍵となるのは、確かに数多の戦争の歴史が教えてくれている。」
「周囲の情報収集は僕に任せて。千晶は…」
「内部の情報収集。」
「…で、いい?」
「役割分担は共闘の基本。そのために、あたしは司の懐にいる。」
「……強いんだな、君は。」
「え? あたし自身に武力が無いから、司の元にいるのが身を護るのに最適ってことからなんだけど、な。」
「……まあ、いい。気をつけて。」
「うん。羽京も。」
羽京が言う「強い」とは、武力のことを指したのではなく……。
森から出て、それぞれの持ち場へと戻る。その華奢な背中を、羽京は、しばらく見送っていた。
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お待たせしました! 千晶と羽京のバディ、爆誕です!
