DX1~熱闘編~
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応急処置をしたとはいえ、大きな傷を負った羽京のことが気が気でない千晶。次の手を求めて立ち上がり、千空らのところへ歩みを進める。
「せめて抗生物質があれば…。」
千晶のつぶやき(といっても普通の話し声くらいの声量)が耳に入った千空、同じくらいのトーンで返した。
「あるぞ。」
「えっ?」驚きの表情を隠せない千晶は千空を向く。
「サルファ剤。」
「なんであるの?!」そりゃそうなるよな。
「素材を集めて順番に合成しただけだ。」簡単に言うけど!
「そりゃ、理論上はそうかもしんないけどさ! マジで作ったの?! ペニシリンじゃなくて?!」
「千晶、おまえもバカの仲間か? ペニシリンを合成してくる青カビ様を探すほうが非現実的なんだよ。」
「うっ…、な、なるほど…。」
こと科学に於いては、クイズ女王・千晶をもってしも千空には敵わない。
「ま、怪我人は出るだろうから一応持ってきたってとこだ。」
怪我人。そうだ。
「千空……それ、もらってもいい?」
「ああ、本当の怪我人がいるからな、好きに使え。」
「ありがとう。うっ。」
千空の方へ手を伸ばした千晶に、腕から背中にかけて痛みが走った。
「おまえ…。」
痛みを堪え、渋い表情の千晶も怪我を負っていた。
「千空はまだやることがあるでしょ。」
「ああ…。」
「あたしだって。」
踵を返し千晶は、羽京の方を向く。
「千晶…。」
千空から手渡された一回分のサルファ剤を大事そうに抱え、弱々しいながら気丈な足取りで千晶は羽京の元に戻ってきた。
「羽京。傷からの二次感染を防ぐために、使って、抗生物質。」
千晶の額から、痛みによる汗とみられる滴が光った。
「千晶も、怪我を? 千晶が先に使いなよ。」
「いや、出血量の多いあなたのトリアージは赤だよ。」
怪我を負いながらも力強い、千晶の真っすぐな眼差しに羽京は圧倒されてしまった。
「…そうか…。」
救助の優先順位、最も高い重傷者は赤、次いで中傷者は黄色、とラベル付けがなされる。元自衛隊の羽京はもちろんのこと、千晶も知識として頭に入っていた。
「あたしは、さしずめ黄色。」
ニッ、と笑って千晶は、羽京に手渡した。
「…ごめん…、ありがとう。」
「お礼は、千空に言って。」
「そうだったね。でも、君にも。」
「え?」
「僕を助けてくれて、ありがとう。」
「そんなの、当然だよ。重傷の人が救助のプライオリティ高いのは、医療のジョーシキだし?」
へたりと千晶は羽京の隣に腰を下ろした。
「それは、そうだね。……僕の思い違いか。」
「え?」
「いや、なんでも。ありがたくいただくよ。」
サルファ剤を流し込んだ羽京は、傍らに座る千晶の手を取り、袋を持たせて上からまたぎゅっと握った。(遠くでニッキーの黄色い声が聞こえた。)
「千晶も飲むこと。」
差し戻した袋には半量、薬が残っている。
「全部飲まなきゃ意味が…」
「千晶に」
羽京は負けじと目を向けて続ける。
「千晶にも、飲んで欲しい。これは僕からの頼みだ。…いいね?」
目をぱちくりさせる千晶だったが、素直に受け取り、羽京の目の前で飲み干した。そして、照れたように笑った。
1メートルもない距離でふたりはしばらくの間、見つめ合っていた。この時千晶は気づいていなかった、これが恋のはじまりだとは。
(♪)My foolish heart / Bill Evans
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
安全なところからひょっこり顔を出したスイカが、皆の元へと駆け寄る。
「あの人たちおおけがしてるんだよ! 助けなくちゃなんだよ!」
羽京らの元へ駆け寄ろうとしたスイカのそのスイカ頭が、ニッキーの手に捕まった。
「な、なにするんだよ。はなすんだよ。」
「いいかいおじょうちゃん。」
ニッキーはその少女の背丈に合わせて腰を下ろし、諭すように話しかけた。
「よく見なよ、応急処置はもう済んでる。これ以上の手当は不要さ。それよりも。」
「???」
「あのふたりの間に割って入ろうってのが、野暮ってもんなんだよ。」
お気に入りの少女漫画は数知れず。ピュアで乙女な格闘家は、うっとりとその光景を見守っていた。
「せめて抗生物質があれば…。」
千晶のつぶやき(といっても普通の話し声くらいの声量)が耳に入った千空、同じくらいのトーンで返した。
「あるぞ。」
「えっ?」驚きの表情を隠せない千晶は千空を向く。
「サルファ剤。」
「なんであるの?!」そりゃそうなるよな。
「素材を集めて順番に合成しただけだ。」簡単に言うけど!
「そりゃ、理論上はそうかもしんないけどさ! マジで作ったの?! ペニシリンじゃなくて?!」
「千晶、おまえもバカの仲間か? ペニシリンを合成してくる青カビ様を探すほうが非現実的なんだよ。」
「うっ…、な、なるほど…。」
こと科学に於いては、クイズ女王・千晶をもってしも千空には敵わない。
「ま、怪我人は出るだろうから一応持ってきたってとこだ。」
怪我人。そうだ。
「千空……それ、もらってもいい?」
「ああ、本当の怪我人がいるからな、好きに使え。」
「ありがとう。うっ。」
千空の方へ手を伸ばした千晶に、腕から背中にかけて痛みが走った。
「おまえ…。」
痛みを堪え、渋い表情の千晶も怪我を負っていた。
「千空はまだやることがあるでしょ。」
「ああ…。」
「あたしだって。」
踵を返し千晶は、羽京の方を向く。
「千晶…。」
千空から手渡された一回分のサルファ剤を大事そうに抱え、弱々しいながら気丈な足取りで千晶は羽京の元に戻ってきた。
「羽京。傷からの二次感染を防ぐために、使って、抗生物質。」
千晶の額から、痛みによる汗とみられる滴が光った。
「千晶も、怪我を? 千晶が先に使いなよ。」
「いや、出血量の多いあなたのトリアージは赤だよ。」
怪我を負いながらも力強い、千晶の真っすぐな眼差しに羽京は圧倒されてしまった。
「…そうか…。」
救助の優先順位、最も高い重傷者は赤、次いで中傷者は黄色、とラベル付けがなされる。元自衛隊の羽京はもちろんのこと、千晶も知識として頭に入っていた。
「あたしは、さしずめ黄色。」
ニッ、と笑って千晶は、羽京に手渡した。
「…ごめん…、ありがとう。」
「お礼は、千空に言って。」
「そうだったね。でも、君にも。」
「え?」
「僕を助けてくれて、ありがとう。」
「そんなの、当然だよ。重傷の人が救助のプライオリティ高いのは、医療のジョーシキだし?」
へたりと千晶は羽京の隣に腰を下ろした。
「それは、そうだね。……僕の思い違いか。」
「え?」
「いや、なんでも。ありがたくいただくよ。」
サルファ剤を流し込んだ羽京は、傍らに座る千晶の手を取り、袋を持たせて上からまたぎゅっと握った。(遠くでニッキーの黄色い声が聞こえた。)
「千晶も飲むこと。」
差し戻した袋には半量、薬が残っている。
「全部飲まなきゃ意味が…」
「千晶に」
羽京は負けじと目を向けて続ける。
「千晶にも、飲んで欲しい。これは僕からの頼みだ。…いいね?」
目をぱちくりさせる千晶だったが、素直に受け取り、羽京の目の前で飲み干した。そして、照れたように笑った。
1メートルもない距離でふたりはしばらくの間、見つめ合っていた。この時千晶は気づいていなかった、これが恋のはじまりだとは。
(♪)My foolish heart / Bill Evans
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
安全なところからひょっこり顔を出したスイカが、皆の元へと駆け寄る。
「あの人たちおおけがしてるんだよ! 助けなくちゃなんだよ!」
羽京らの元へ駆け寄ろうとしたスイカのそのスイカ頭が、ニッキーの手に捕まった。
「な、なにするんだよ。はなすんだよ。」
「いいかいおじょうちゃん。」
ニッキーはその少女の背丈に合わせて腰を下ろし、諭すように話しかけた。
「よく見なよ、応急処置はもう済んでる。これ以上の手当は不要さ。それよりも。」
「???」
「あのふたりの間に割って入ろうってのが、野暮ってもんなんだよ。」
お気に入りの少女漫画は数知れず。ピュアで乙女な格闘家は、うっとりとその光景を見守っていた。
