第一章
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第一章 第8話 同じ気持ち
みやじマリン水族館を泳ぐ魚の群れの影が、羽翔と千晶を通り過ぎる。
「こんなこと言うと、ナンパの常套句みたいで可笑しいんだけど、実はね、あなたとは…初めて会った気がしなかったんだ。」
初めて会う気がしなかった。羽翔が感じていたものと、同じだった。
「でね、この感じは何なんだろうって、ずっと気になってて。それで、実際にまた会って確かめてみようと思った。いわば実験・観測・検証ってとこね。」
「で、どうだった?」
ちょっといたずらっぽく訊いてみる。
「うん。それが、不可解なんだけど。」
「不可…解?」
さすがに戸惑う。
「一緒にいるのが、自然に思えた。むしろ、同じ時間を過ごすごとに、心地よさを感じた。この感覚に、我ながら戸惑っているところもあって。」
千晶もまた、戸惑っていた。
「この感覚は、どこからくるんだろう、何故なんだろう、って、根拠とか理由を考えてた。」
「それで、わかったの?」
「仮説…、だけど。」
「うん。」
「あたしの行きたいところ、見たいもの、食べたいもの、触れてみたいもの……。その全部、あなたは寄り添って、ついてきてくれた。地味に危ない場面も、さりげなく守ってくれてたでしょ。考えてみたら、こんな嬉しいことないよ。」
幾多の恋愛「ごっこ」で得たスキルだった。
やってあげないと文句を言われ、感謝の言葉などほとんどなかった。
千晶に対しても、自然とその行動が現れたのである。
だがこと千晶に関しては、その知的好奇心の強さからなのか、前のめりで、少々危なっかしいところがあった。
先回りして守る場面が多かった。彼女の次の行動パターンが、なんとなくわかってしまう。まるで、ずいぶん前からよく知っているみたいに……。
羽翔にとってのそんな当たり前の行動が、千晶にとっては嬉しかった。
「嬉しい……。」
その言葉の意味を反芻する。
「うん。」
羽翔の中に、温かいものが満たされていく。
目の前のこの人は、僕の「見た目」ではなく、「行動」で、僕を好きになってくれたというのか……。
淡く白いライトに照らされた千晶が、まぶしく見えた。
「ねえ、羽翔。」
次の千晶の言葉は、羽翔には意外なものだった。
「あなたはどうしたい?」
「え?」
「……実はあたし、初恋失敗してるんだ。」
羽翔に背を向け、俯いて話す千晶。
「自分の気持ちばかりぶつけて。自分の思い通りにならないと気がすまなくて。これだけ伝えれば応えてくれるって過信してた。……だめだった。相手の気持ち、全然考えてなかった。おかしいよね、現代文の答案用紙ではスラスラ書けるのに、いざ現実になるとさっぱりわからなくなるなんて!」
くるりと翻し、まっすぐ羽翔に向き合った。
「だから、学んだ。失敗したから、学んだ。誰かを好きになるってことは、その相手の気持ちを、大切にしなきゃ、ってこと。」
ああそうか。そうなんだな。
今までの僕は、あの子たちは、それが欠けていたんだ。
そして愚かにも僕は、ちゃんと省みることができなかった。
七つも下の女の子に教えられてしまうなんて。
「あたしは、あなたが好き。本当に好きだから、自分以上に、あなたの気持ちを尊重したい。あなたは、どうしたい?」
同じ気持ちだ。
まっすぐこちらに向く視線を、遮断する理由は無かった。
「ああ、僕も、君が好き。…ほんとは僕から言いたかったところだけど。」
「えっえっあっそうなのあのなんかごめん」
「えっなんで謝るの」
「えっだって」
「ああ…」
僕は、この子が好きだ。
淡く白い光の中、千晶の胸元に構えられた両手を、包み込むように優しく握り、深呼吸してから羽翔は、言った。
「僕と……お付き合い、してください。」
潤んだ瞳で微笑んだ。
「はい。喜んで。」
やっとわかった。
やっと出会えた。
これが、彼女が、ほんとの僕の初恋だ。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
キュン死必至
羽翔、遂に本当の恋を知る
男性にとって初恋は一生モノ
(海自の男性は、まっすぐ想いをぶつけてくる女性が好みらしい?)
言葉の掛け合いなので、舞台演劇っぽくなった。
(♪)
”ラズベリー・ロマンス
今までの恋は練習だったのね”
森丘祥子 - 唇にラズベリー 詞:石川あゆ子『pink&Blue』1990
みやじマリン水族館を泳ぐ魚の群れの影が、羽翔と千晶を通り過ぎる。
「こんなこと言うと、ナンパの常套句みたいで可笑しいんだけど、実はね、あなたとは…初めて会った気がしなかったんだ。」
初めて会う気がしなかった。羽翔が感じていたものと、同じだった。
「でね、この感じは何なんだろうって、ずっと気になってて。それで、実際にまた会って確かめてみようと思った。いわば実験・観測・検証ってとこね。」
「で、どうだった?」
ちょっといたずらっぽく訊いてみる。
「うん。それが、不可解なんだけど。」
「不可…解?」
さすがに戸惑う。
「一緒にいるのが、自然に思えた。むしろ、同じ時間を過ごすごとに、心地よさを感じた。この感覚に、我ながら戸惑っているところもあって。」
千晶もまた、戸惑っていた。
「この感覚は、どこからくるんだろう、何故なんだろう、って、根拠とか理由を考えてた。」
「それで、わかったの?」
「仮説…、だけど。」
「うん。」
「あたしの行きたいところ、見たいもの、食べたいもの、触れてみたいもの……。その全部、あなたは寄り添って、ついてきてくれた。地味に危ない場面も、さりげなく守ってくれてたでしょ。考えてみたら、こんな嬉しいことないよ。」
幾多の恋愛「ごっこ」で得たスキルだった。
やってあげないと文句を言われ、感謝の言葉などほとんどなかった。
千晶に対しても、自然とその行動が現れたのである。
だがこと千晶に関しては、その知的好奇心の強さからなのか、前のめりで、少々危なっかしいところがあった。
先回りして守る場面が多かった。彼女の次の行動パターンが、なんとなくわかってしまう。まるで、ずいぶん前からよく知っているみたいに……。
羽翔にとってのそんな当たり前の行動が、千晶にとっては嬉しかった。
「嬉しい……。」
その言葉の意味を反芻する。
「うん。」
羽翔の中に、温かいものが満たされていく。
目の前のこの人は、僕の「見た目」ではなく、「行動」で、僕を好きになってくれたというのか……。
淡く白いライトに照らされた千晶が、まぶしく見えた。
「ねえ、羽翔。」
次の千晶の言葉は、羽翔には意外なものだった。
「あなたはどうしたい?」
「え?」
「……実はあたし、初恋失敗してるんだ。」
羽翔に背を向け、俯いて話す千晶。
「自分の気持ちばかりぶつけて。自分の思い通りにならないと気がすまなくて。これだけ伝えれば応えてくれるって過信してた。……だめだった。相手の気持ち、全然考えてなかった。おかしいよね、現代文の答案用紙ではスラスラ書けるのに、いざ現実になるとさっぱりわからなくなるなんて!」
くるりと翻し、まっすぐ羽翔に向き合った。
「だから、学んだ。失敗したから、学んだ。誰かを好きになるってことは、その相手の気持ちを、大切にしなきゃ、ってこと。」
ああそうか。そうなんだな。
今までの僕は、あの子たちは、それが欠けていたんだ。
そして愚かにも僕は、ちゃんと省みることができなかった。
七つも下の女の子に教えられてしまうなんて。
「あたしは、あなたが好き。本当に好きだから、自分以上に、あなたの気持ちを尊重したい。あなたは、どうしたい?」
同じ気持ちだ。
まっすぐこちらに向く視線を、遮断する理由は無かった。
「ああ、僕も、君が好き。…ほんとは僕から言いたかったところだけど。」
「えっえっあっそうなのあのなんかごめん」
「えっなんで謝るの」
「えっだって」
「ああ…」
僕は、この子が好きだ。
淡く白い光の中、千晶の胸元に構えられた両手を、包み込むように優しく握り、深呼吸してから羽翔は、言った。
「僕と……お付き合い、してください。」
潤んだ瞳で微笑んだ。
「はい。喜んで。」
やっとわかった。
やっと出会えた。
これが、彼女が、ほんとの僕の初恋だ。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
キュン死必至
羽翔、遂に本当の恋を知る
男性にとって初恋は一生モノ
(海自の男性は、まっすぐ想いをぶつけてくる女性が好みらしい?)
言葉の掛け合いなので、舞台演劇っぽくなった。
(♪)
”ラズベリー・ロマンス
今までの恋は練習だったのね”
森丘祥子 - 唇にラズベリー 詞:石川あゆ子『pink&Blue』1990
