第三章(芸能編+クロルリ)
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第三章 第6話 二十歳記念
千晶の二十歳の誕生日・4月8日がある週の日曜日。
記念写真を撮るから、羽翔も来て、と呼び出され、地図アプリに表示された場所へ現地集合となった。
どうやら、写真撮影スタジオのようだ。成人記念に振袖でも着て撮影するのかな、と内心わくわくの羽翔だった。
歳を重ねるごとに美しくなっていく千晶。振袖姿はさぞ美しかろう、と羽翔は期待が膨らむ。
そんな浮き足立つ彼を、スタジオの受付付近で待っていたのは、眉間に皺のある初老の男性。背筋を伸ばし、腕を組み、仁王立ちで佇んでいる。
なんとなく、オーラが恐い。
自衛隊で鬼軍曹のしごきにも耐えてきた羽翔ではあるが、制服を脱いだらただの一般男性。恐いもんは恐い。
……別の家族グループの父親か何かかな、と羽翔は思った。思いたかった。そうであって欲しかった。
しかしその一縷の望みは、奥から出てきた千晶の声によって脆くも崩れ落ちる。
「お父さん! こっちこっち!」
千晶の、父親?!
唖然とする羽翔を、千晶は見つけた。
「あっ、羽翔も来てたんだ! 早いねー、まだ予約時間よりちょっと早いんだけど。」
自衛隊は、5分前行動が基本である。部隊が大きくなれぱなるほど、その時間は繰り上がる。
「とりあえずラウンジで待機してていいって。こっちだよ。」
てっきり千晶の撮影の見学だけだと思って来た羽翔は、ラフな私服姿だった。
千晶の視線に気づいた父親が、羽翔を見やる。羽翔は命懸けの作戦に出陣しているときと同じ質の汗をかいていた。
〈カシャッ カシャッ〉
「まあ素敵! そう! いいですね。次は体全体を横に向けて、肩から上をカメラに向けてみましょう。…そうです! うん、そう! 上手ですね!」
千晶の振袖撮影が始まった。ここは千晶が赤ちゃんの頃から利用している写真スタジオで、ほぼ毎年家族写真を撮りに来ているとのことだった。
〈カシャッ カシャカシャッ〉
……綺麗だ。
「千晶可愛いわー。」
「でもやっぱり振袖は重いなあ。」
「あらそお? 今しか着られないんだから記念よ記念。」
ニコニコと話しをしている母親と千晶。
「…………。」
「…………。」
視線も合わさず、隣同士に座って黙り込む父親と羽翔。
……どうして、僕が呼ばれたんだろう。
身内での撮影なら、僕がここにいる必要は無いんじゃないか。
「羽翔くん、といったね。」
口火を切ったのは父親のほうだった。
「は、はいっ。」
ちょっと声が裏返りそうになった。
「千晶と仲良くしてくれているそうじゃないか。」
「え、ええ、まあ……。」
また汗が滲む。
「千晶は……、まだまだ子供だと思っていたんだが、それは私が知らなかっただけで、もう十分、大人なのかもしれないなあ。」
今でこそ対等な関係のふたりだが、その父親の言葉は、一年程前まで羽翔が千晶に思っていたのと同じだった。
「あのワガママ娘、千晶が、人に思いやりを持てるようになってきた。時期的には羽翔くん、君と交際している頃からなんだろうなあ。千晶はめきめきと大人の女性になっていった、そんな気がするよ。」
羽翔には思いもよらぬ言葉だった。しかし言われてみれば確かにここのところ、千晶の少々きつかった性格に丸みが出てきた感じはあるかもしれない。その変化のきっかけが自分にあろうとは想像だにしなかった。
「それでな、羽翔くん。」
「はい。」
緊張し背筋が伸びる。
「千晶を……。これからも千晶と仲良くしてやってくれ。」
羽翔の眼の奥に熱いものがこみあげた。
「…はい。そのつもりです。」
顔を隠すように、羽翔は帽子を深くかぶった。
「最後に家族写真だって! 皆こっち来て!」
母親とともに千晶がこちらを手招きする。
皆って?
家族写真なら、父親だけを呼べばいいのに……。
「羽翔も! これは、命令です!」
腰に手を当てふくれっ面の千晶に、泣いていいのか笑っていいのか本気で困る羽翔だった。
「まったく千晶ってば、なんて顔してるんだ、君は。」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
とにかく泣いちゃう羽翔さん。
しかし平穏な日々は、長くは続かないのがセオリーで…?
(♪)
"夜が止まりそうになった瞬間
溶けた氷が落ちて"
ミツメ - トニックラブ 詞:川辺素 (2020)
千晶の二十歳の誕生日・4月8日がある週の日曜日。
記念写真を撮るから、羽翔も来て、と呼び出され、地図アプリに表示された場所へ現地集合となった。
どうやら、写真撮影スタジオのようだ。成人記念に振袖でも着て撮影するのかな、と内心わくわくの羽翔だった。
歳を重ねるごとに美しくなっていく千晶。振袖姿はさぞ美しかろう、と羽翔は期待が膨らむ。
そんな浮き足立つ彼を、スタジオの受付付近で待っていたのは、眉間に皺のある初老の男性。背筋を伸ばし、腕を組み、仁王立ちで佇んでいる。
なんとなく、オーラが恐い。
自衛隊で鬼軍曹のしごきにも耐えてきた羽翔ではあるが、制服を脱いだらただの一般男性。恐いもんは恐い。
……別の家族グループの父親か何かかな、と羽翔は思った。思いたかった。そうであって欲しかった。
しかしその一縷の望みは、奥から出てきた千晶の声によって脆くも崩れ落ちる。
「お父さん! こっちこっち!」
千晶の、父親?!
唖然とする羽翔を、千晶は見つけた。
「あっ、羽翔も来てたんだ! 早いねー、まだ予約時間よりちょっと早いんだけど。」
自衛隊は、5分前行動が基本である。部隊が大きくなれぱなるほど、その時間は繰り上がる。
「とりあえずラウンジで待機してていいって。こっちだよ。」
てっきり千晶の撮影の見学だけだと思って来た羽翔は、ラフな私服姿だった。
千晶の視線に気づいた父親が、羽翔を見やる。羽翔は命懸けの作戦に出陣しているときと同じ質の汗をかいていた。
〈カシャッ カシャッ〉
「まあ素敵! そう! いいですね。次は体全体を横に向けて、肩から上をカメラに向けてみましょう。…そうです! うん、そう! 上手ですね!」
千晶の振袖撮影が始まった。ここは千晶が赤ちゃんの頃から利用している写真スタジオで、ほぼ毎年家族写真を撮りに来ているとのことだった。
〈カシャッ カシャカシャッ〉
……綺麗だ。
「千晶可愛いわー。」
「でもやっぱり振袖は重いなあ。」
「あらそお? 今しか着られないんだから記念よ記念。」
ニコニコと話しをしている母親と千晶。
「…………。」
「…………。」
視線も合わさず、隣同士に座って黙り込む父親と羽翔。
……どうして、僕が呼ばれたんだろう。
身内での撮影なら、僕がここにいる必要は無いんじゃないか。
「羽翔くん、といったね。」
口火を切ったのは父親のほうだった。
「は、はいっ。」
ちょっと声が裏返りそうになった。
「千晶と仲良くしてくれているそうじゃないか。」
「え、ええ、まあ……。」
また汗が滲む。
「千晶は……、まだまだ子供だと思っていたんだが、それは私が知らなかっただけで、もう十分、大人なのかもしれないなあ。」
今でこそ対等な関係のふたりだが、その父親の言葉は、一年程前まで羽翔が千晶に思っていたのと同じだった。
「あのワガママ娘、千晶が、人に思いやりを持てるようになってきた。時期的には羽翔くん、君と交際している頃からなんだろうなあ。千晶はめきめきと大人の女性になっていった、そんな気がするよ。」
羽翔には思いもよらぬ言葉だった。しかし言われてみれば確かにここのところ、千晶の少々きつかった性格に丸みが出てきた感じはあるかもしれない。その変化のきっかけが自分にあろうとは想像だにしなかった。
「それでな、羽翔くん。」
「はい。」
緊張し背筋が伸びる。
「千晶を……。これからも千晶と仲良くしてやってくれ。」
羽翔の眼の奥に熱いものがこみあげた。
「…はい。そのつもりです。」
顔を隠すように、羽翔は帽子を深くかぶった。
「最後に家族写真だって! 皆こっち来て!」
母親とともに千晶がこちらを手招きする。
皆って?
家族写真なら、父親だけを呼べばいいのに……。
「羽翔も! これは、命令です!」
腰に手を当てふくれっ面の千晶に、泣いていいのか笑っていいのか本気で困る羽翔だった。
「まったく千晶ってば、なんて顔してるんだ、君は。」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
とにかく泣いちゃう羽翔さん。
しかし平穏な日々は、長くは続かないのがセオリーで…?
(♪)
"夜が止まりそうになった瞬間
溶けた氷が落ちて"
ミツメ - トニックラブ 詞:川辺素 (2020)
