第二章(R-15)
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第二章 第11話 バスタブの音
「羽翔?」
服を脱ごうとしていた千晶を、バスルームから連れ出し、ソファに誘導した。
僕が言い出そうとしているのを、千晶は黙って待っていた。
バスボールの発泡する音が僕をあざ笑う。
勇気を振り絞り、僕は、性病に罹っていることを、告白した。
千晶は、驚かなかった。
ヘルペス。
神経系に寄生するウイルスで、発症すると近くの皮膚表面にチクチクとした痒みを生じさせ、水疱ができる。症状が無くなっても、深部の神経系に居座り続け、免疫力が弱ったタイミングなどをきっかけにまた増殖し、再発する。一度罹ると根治することはほぼ不可能で、生涯のうちに何度か再発する可能性がある。
現代においては日本人の半数程度がウイルスを持っているとみられ、わりとメジャーな、といったら変かもしれないけど、よくあるウイルス、なんだと。
ちょうど免疫のところをやっているという千晶はスラスラと解説した。
医大生の彼女には、僕から説明することは特に無いのだと知った。
感染経路は、ウイルスが皮膚や粘膜に着くことから。男女の接触だけでなくタオルの共有など多岐に渡るため、原因がどこだったのかわからない場合もあるという。
自分でも知らないうちに、もらっちゃったんだね、と、千晶はまるで、僕に逃げ道を作ってくれているようだった。
むしろ、エイズとか梅毒みたいなやばいやつじゃなくてよかった、とまで言った。
治療法は?と聞かれ、飲み薬を5日間。今、2日目。まだ、飲みきってないから、君に触れることができないんだ。君に感染させないために。と、答えた。
「そっか。」
「ごめん。」
「しょうがないね。」
「ごめん。」
「感染経路もわからないんだし。」
……このまま、有耶無耶にしていいのか?
どうしてこの病に罹ってしまったのか。僕は知っているはずなのに。
このまま逃げたら、それこそ、不誠実なんじゃないか。
『本当のことを、言ってほしい。』
さっきそう言われたばかりの僕に、隠す道理はなかった。
これが却って、千晶を傷つけることになってしまった。
若気の至りを聞かされた千晶は、僕に背を向けて座り直した。その表情を窺い知ることは出来ない。
バスタブから溢れる水の音だけが、無情に響き渡っていた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
誠実であることが海自の特性なのか、ついに過去の荒れた女性関係をカミングアウトしてしまった羽翔さん。言わなきゃいいのに……。
羽翔を信じていた千晶の心の内は、如何に……?
バスタブに溜まる水は、時間の経過を表しています。
【ヘルペス】
皮膚科や泌尿器科のHPを参考に書きましたが、
深堀りしたい方は厚生労働省のページ(ファクトシート)も参照してください。
WHO(世界保健機構)の情報を基に書かれているので現時点で最も信頼性の高い情報といっていいでしょう。
https://www.forth.go.jp/moreinfo/topics/2016/01131321.html
真実を知るとわかるかと思いますが、実は、彼女はひとつだけ、嘘をついています。それは、目の前の人を傷つけないための、優しい嘘、であるということも。
(♪)
"朝焼けがそこまで来てる
もう「知らない」ふり 困るぜ"
佐々木望 - 午前3時の後悔 詞: 佐々木望 『純情』1990
「羽翔?」
服を脱ごうとしていた千晶を、バスルームから連れ出し、ソファに誘導した。
僕が言い出そうとしているのを、千晶は黙って待っていた。
バスボールの発泡する音が僕をあざ笑う。
勇気を振り絞り、僕は、性病に罹っていることを、告白した。
千晶は、驚かなかった。
ヘルペス。
神経系に寄生するウイルスで、発症すると近くの皮膚表面にチクチクとした痒みを生じさせ、水疱ができる。症状が無くなっても、深部の神経系に居座り続け、免疫力が弱ったタイミングなどをきっかけにまた増殖し、再発する。一度罹ると根治することはほぼ不可能で、生涯のうちに何度か再発する可能性がある。
現代においては日本人の半数程度がウイルスを持っているとみられ、わりとメジャーな、といったら変かもしれないけど、よくあるウイルス、なんだと。
ちょうど免疫のところをやっているという千晶はスラスラと解説した。
医大生の彼女には、僕から説明することは特に無いのだと知った。
感染経路は、ウイルスが皮膚や粘膜に着くことから。男女の接触だけでなくタオルの共有など多岐に渡るため、原因がどこだったのかわからない場合もあるという。
自分でも知らないうちに、もらっちゃったんだね、と、千晶はまるで、僕に逃げ道を作ってくれているようだった。
むしろ、エイズとか梅毒みたいなやばいやつじゃなくてよかった、とまで言った。
治療法は?と聞かれ、飲み薬を5日間。今、2日目。まだ、飲みきってないから、君に触れることができないんだ。君に感染させないために。と、答えた。
「そっか。」
「ごめん。」
「しょうがないね。」
「ごめん。」
「感染経路もわからないんだし。」
……このまま、有耶無耶にしていいのか?
どうしてこの病に罹ってしまったのか。僕は知っているはずなのに。
このまま逃げたら、それこそ、不誠実なんじゃないか。
『本当のことを、言ってほしい。』
さっきそう言われたばかりの僕に、隠す道理はなかった。
これが却って、千晶を傷つけることになってしまった。
若気の至りを聞かされた千晶は、僕に背を向けて座り直した。その表情を窺い知ることは出来ない。
バスタブから溢れる水の音だけが、無情に響き渡っていた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
誠実であることが海自の特性なのか、ついに過去の荒れた女性関係をカミングアウトしてしまった羽翔さん。言わなきゃいいのに……。
羽翔を信じていた千晶の心の内は、如何に……?
バスタブに溜まる水は、時間の経過を表しています。
【ヘルペス】
皮膚科や泌尿器科のHPを参考に書きましたが、
深堀りしたい方は厚生労働省のページ(ファクトシート)も参照してください。
WHO(世界保健機構)の情報を基に書かれているので現時点で最も信頼性の高い情報といっていいでしょう。
https://www.forth.go.jp/moreinfo/topics/2016/01131321.html
真実を知るとわかるかと思いますが、実は、彼女はひとつだけ、嘘をついています。それは、目の前の人を傷つけないための、優しい嘘、であるということも。
(♪)
"朝焼けがそこまで来てる
もう「知らない」ふり 困るぜ"
佐々木望 - 午前3時の後悔 詞: 佐々木望 『純情』1990
