第一章
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第一章 第15話 ファースト・キス
四月八日。
遠洋任務への出航まで、あと一週間。
機密情報保守義務により、その詳細な場所などは教えられないものの、今日のデートは横浜で、と提案したのは羽翔のほうだった。
「誕生日特典ってお得だよね! 毎日が誕生日だったらいいのに。」
子供みたいなことを、と羽翔はその背中を愛おしそうに見つめる。
千晶の学校は、今日までが春休み。羽翔は有休を取っていた。
軽やかなスカートを、踊るようにくるりと回し、羽翔の方へ体を向ける千晶。
「羽翔の誕生日も、こうやって…。」
「次は……、来年、かな。」
その頃は、海にいる。
「ああ、そっか…。」
半年もの間、会えなくなるどころか、連絡すら、とれない。羽翔の心は、ざわざわと落ち着かない。
彼女の心が、僕から、離れてしまうんじゃないか……。
「ねえ、羽翔。」
俯く僕の前で、千晶はその手を斜め上に突き出した。
「観覧車、乗らない?」
その視線の先には、きらめくコスモワールド大観覧車。
自然と、隣同士に座った。
今にも触れられそうな距離。
その髪を撫でることだって……。
「あっ! 赤レンガ倉庫が見えてきた!」
伸ばしかけた手を引っ込める。
「船もよく見えるー! 羽翔が乗る船もあるかな?」
「さすがにここには、無いかな。」
「あはっ、そうだよね。あっ、キング・クイーン・ジャックの塔もここからならよく見えるかも。」
「え? なにそれ。」
「知らない? 有名な建築物なんだけど、……」
相変わらず、千晶のペースだ。
「もうすぐ、頂上、辺りかな。」
上を向く千晶。
「僕たちのいた地上が、もうあんなに遠く。あっという間だね。」
下を向く羽翔。
「……半年くらいだって、あっという間だよ。」
「そう、だね。」
「受験生には、時間なんていくらでも欲しいくらいだけどね。」
「そりゃそうか。」
はは、と同時に笑う。
ふたりの視線が水平になった。
心なしか、千晶の顔がうっすら紅潮していた。
「密室だとか、高いところ。」
「うん?」
「平時とは違った状況、ってのがあるかららしいんだけど。」
「うん。」
「……観覧車の頂上で、キス、したカップルが成就するって、本当かなあ。」
「ッ!」
千晶は今日、18歳。
もう、いいかな。
キス、くらいなら。
「千晶。」
結局は、千晶のペースに乗せられた僕だけど、
その震える肩を抱き、そっと、口づけをした。
白い肌に、涙が零れ落ちた。
それから、地上付近へと降りていく間、僕らは抱きしめ合っていた。
「もう帰る時間だ。」
基地へ戻る時間は厳守。後ろ髪を引かれる思いだった。
「今日は、ありがとう。誕生日プレゼント、嬉しかった。」
どれのことだろう、と千晶の顔を見ると、手が唇に添えられていた。
「あっ。」
「次は、秋以降?」
「うん。帰国したら、連絡する。」
「うん。」
「お互い落ち着いたら、また会おう。」
「うん。」
「受験、頑張って。」
「うん。頑張る。羽翔も…。」
「僕なら、大丈夫。」
本心は、離れたくなんか、ない。
何か言いたげなそぶりで、顔を赤らめる千晶。
「ねえ、羽翔。」
「うん?」
僕だけに聞こえる声量で、彼女は呪文を唱えた。
「ジュケンがセイコーしたら、セイコーしよう。」
「んん??」
「じゃあ、またね!」
そう言うなり、千晶は桜木町駅へと消えてしまった。……呆気ない。
基地へと帰還する道中、ひとり、羽翔は呪文の解読を進めていた。
「セイコー……、成功、したら、セイコー……。セイコー……、……、ハッ?!?!」
その意味が、そういう意味なら、彼女は…なんということを。
言葉の意味そのものというよりは、【千晶が】それを口にしたことに、頭を撃ち抜かれたような衝撃を覚える。
離れてもなお、千晶に振り回されている羽翔だった。
第一章 終わり
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
耳がいいのも困りますな。
下(過去)を向く羽翔と上(未来)を向く千晶という対比を映像化したい。そんなイメージをテキストデータ化してみたら、こんなお話になりました。
(♪)
”ガラス細工の夢にこだわらないで
明日を信じる心だけがダイアモンド”
佐々木望 - RUNNER 詞:岡田冨美子『Taste of Tears Ballad Selection』1993
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
次回、第二章。R-15になりそうです(わりとギリギリ)
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
四月八日。
遠洋任務への出航まで、あと一週間。
機密情報保守義務により、その詳細な場所などは教えられないものの、今日のデートは横浜で、と提案したのは羽翔のほうだった。
「誕生日特典ってお得だよね! 毎日が誕生日だったらいいのに。」
子供みたいなことを、と羽翔はその背中を愛おしそうに見つめる。
千晶の学校は、今日までが春休み。羽翔は有休を取っていた。
軽やかなスカートを、踊るようにくるりと回し、羽翔の方へ体を向ける千晶。
「羽翔の誕生日も、こうやって…。」
「次は……、来年、かな。」
その頃は、海にいる。
「ああ、そっか…。」
半年もの間、会えなくなるどころか、連絡すら、とれない。羽翔の心は、ざわざわと落ち着かない。
彼女の心が、僕から、離れてしまうんじゃないか……。
「ねえ、羽翔。」
俯く僕の前で、千晶はその手を斜め上に突き出した。
「観覧車、乗らない?」
その視線の先には、きらめくコスモワールド大観覧車。
自然と、隣同士に座った。
今にも触れられそうな距離。
その髪を撫でることだって……。
「あっ! 赤レンガ倉庫が見えてきた!」
伸ばしかけた手を引っ込める。
「船もよく見えるー! 羽翔が乗る船もあるかな?」
「さすがにここには、無いかな。」
「あはっ、そうだよね。あっ、キング・クイーン・ジャックの塔もここからならよく見えるかも。」
「え? なにそれ。」
「知らない? 有名な建築物なんだけど、……」
相変わらず、千晶のペースだ。
「もうすぐ、頂上、辺りかな。」
上を向く千晶。
「僕たちのいた地上が、もうあんなに遠く。あっという間だね。」
下を向く羽翔。
「……半年くらいだって、あっという間だよ。」
「そう、だね。」
「受験生には、時間なんていくらでも欲しいくらいだけどね。」
「そりゃそうか。」
はは、と同時に笑う。
ふたりの視線が水平になった。
心なしか、千晶の顔がうっすら紅潮していた。
「密室だとか、高いところ。」
「うん?」
「平時とは違った状況、ってのがあるかららしいんだけど。」
「うん。」
「……観覧車の頂上で、キス、したカップルが成就するって、本当かなあ。」
「ッ!」
千晶は今日、18歳。
もう、いいかな。
キス、くらいなら。
「千晶。」
結局は、千晶のペースに乗せられた僕だけど、
その震える肩を抱き、そっと、口づけをした。
白い肌に、涙が零れ落ちた。
それから、地上付近へと降りていく間、僕らは抱きしめ合っていた。
「もう帰る時間だ。」
基地へ戻る時間は厳守。後ろ髪を引かれる思いだった。
「今日は、ありがとう。誕生日プレゼント、嬉しかった。」
どれのことだろう、と千晶の顔を見ると、手が唇に添えられていた。
「あっ。」
「次は、秋以降?」
「うん。帰国したら、連絡する。」
「うん。」
「お互い落ち着いたら、また会おう。」
「うん。」
「受験、頑張って。」
「うん。頑張る。羽翔も…。」
「僕なら、大丈夫。」
本心は、離れたくなんか、ない。
何か言いたげなそぶりで、顔を赤らめる千晶。
「ねえ、羽翔。」
「うん?」
僕だけに聞こえる声量で、彼女は呪文を唱えた。
「ジュケンがセイコーしたら、セイコーしよう。」
「んん??」
「じゃあ、またね!」
そう言うなり、千晶は桜木町駅へと消えてしまった。……呆気ない。
基地へと帰還する道中、ひとり、羽翔は呪文の解読を進めていた。
「セイコー……、成功、したら、セイコー……。セイコー……、……、ハッ?!?!」
その意味が、そういう意味なら、彼女は…なんということを。
言葉の意味そのものというよりは、【千晶が】それを口にしたことに、頭を撃ち抜かれたような衝撃を覚える。
離れてもなお、千晶に振り回されている羽翔だった。
第一章 終わり
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
耳がいいのも困りますな。
下(過去)を向く羽翔と上(未来)を向く千晶という対比を映像化したい。そんなイメージをテキストデータ化してみたら、こんなお話になりました。
(♪)
”ガラス細工の夢にこだわらないで
明日を信じる心だけがダイアモンド”
佐々木望 - RUNNER 詞:岡田冨美子『Taste of Tears Ballad Selection』1993
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次回、第二章。R-15になりそうです(わりとギリギリ)
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