#みらい
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「…ケホッケホッ……先輩?…先輩?!大丈夫ですか?!」
誰からも返事がない。白い煙が辺りに立ち込めていて何も見えない。手探りで床を這うようにして進んでいくと、筋肉の発達した逞しい腕に触れる。慌てて手を引っ込めると、その手をぐいっと掴まれ、
「オレだよ、小エビちゃん♡小エビちゃんこそだいじょーぶ?」
すごい力で引き寄せられた。先輩が無事のようでよかったが……
「アズール先輩っ!ジェイド先輩!?」
一緒に来た2人からの返事がない。気を失ってしまっていたらと、そればかりが頭の中を駆け巡る。
今日は先週から作成していた、モストロラウンジのライトアップ用の薬品を取りに来ていた。アズール先輩が来週の一般開放での新規顧客の獲得に向けて、内装をリニューアルしようと言い出し、ここ1週間、薬品の開発に関わってきたのだ。放課後、魔法薬学室を借りて薬品の調合を行い、ここ3日間はねかせておいて、さらに美しい色合いにするのだと息巻いていた。そして、実験室のドアを開けた途端、この有様である。ドアを開けた瞬間、何かが軽く爆発するような音が聞こえ、辺りが真っ白な煙に包まれてしまったのだ。
「先輩!?先輩!!」
私が叫ぶ横で、フロイド先輩が何か詠唱したかと思うと、白い煙の霧が晴れて、そこに居たのは……
「…………うわぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」
「……ぐすっぐすっ……」
泣き叫ぶ2歳くらいのアズール先輩と、泣き叫ぶアズール先輩を見て驚いて泣いてしまっている同じく2歳くらいのジェイド先輩が居た。
「……え?…アズールもジェイドもどうしたの?なんで赤ちゃんになってんの~?」
フロイド先輩は固まってその場に立ち尽くしている。立ち尽くしているのは私も同じだ。どういうわけだか、2人は小さくて可愛らしい赤ちゃんになってしまったのだ。
「おい!今、爆発音が聞こえたが……って監督生じゃないか」
「それにムシュー愉快犯。一体どうしたんだい、この爆発は」
立ち尽くす私たちの後ろのドアから走って入ってきたのは、本来この放課後の時間に活動している、サイエンス部のトレイ先輩と、ルーク先輩だった。
「あ、あの……何かが爆発して……先輩たちが……」
恐る恐る2人の赤ちゃんの方を指さすと、2人の足音が怖かったのか、アズール先輩もジェイド先輩も涙が止まってしまっていて、トレイ先輩とルーク先輩の方を潤んだ目でじっと見つめていた。
「……えっと…これはどういうことだ?」
トレイ先輩は誰かがリドル寮長の逆鱗に触れてしまって困ったときと同じように眉を下げ、私の顔を見る。眼鏡の奥の目は驚きに見開かれている。私もほとほと困ってしまって、横にいる大男を見上げた。でも、フロイド先輩は相変わらず口をぽかんと開けて赤ちゃんになった2人を見ている。そんな沈黙を破ったのは、アズール先輩の甲高い声だった。
「ままぁ!ぱぱ!」
私とフロイド先輩の方を、赤ちゃん特有のむちむちした小さな指で一生懸命指さして叫ぶ。ジェイド先輩もお気に入りのおもちゃを見つけたような顔でこっちを見てにぱぁっと笑う。
「まま…ぱぱ……!!」
私とフロイド先輩の方を見ながらきゃっきゃっと笑い、小さな手を叩くジェイド先輩。実験室の床の上で座り込んで赤ちゃんが泣いている様子はどう見ても異様だった。ましてや、それがオクタヴィネルの寮長と副寮長なのだから。
「……努力の君 とムシュー計画犯はどうやらキミとムシュー愉快犯のことを母君と父君だと勘違いしているようだ!」
どこか嬉しそうな声で肩を竦めながら言うルーク先輩。
なぜそう勘違いしたかは、きっとこの2人だけが私とフロイド先輩が付き合っていることを知っているからだろう。正直、ママ、パパ、だなんて恥ずかしすぎる。先輩も同じことを考えて、困った表情をするだろうと思ったが、先輩は赤ちゃん2人の方にしゃがみこんでにこにこ笑っている。
アズール先輩とジェイド先輩が一度にフロイド先輩の方へ寄っていって、フロイド先輩の寮服のストールを掴んだ。何とも可愛らしい仕草で、普段の、VIPルームでにやにや札束を数えている姿も、丁寧に見えても裏にどこか狂気が見えるような様子も全く想像できない。
「……ぱぱ?あそぶ!」
「…あは、そうみたい、ジェイドもアズールもオレのことパパだと思ってるんだ~♡ウミネコくん、どうしたらいいと思う~?」
先輩は子供の相手なんてしなさそう、子供って束縛するからやだぁ~とか言いそう、と思っていたのに、案外乗り気な様子だ。魚は兄弟が多いから人魚の先輩にも小さい兄弟がいるのだろうか、なんてぼんやり考えた。サイエンス部の2人の先輩のご指南で、私たちは取敢えずクルーウェル先生の所へ相談に向かった。
__________
「…もしかしてあの2人……いや、余計な詮索はよすか」
「友の世話を懸命にしようとする彼らの姿勢、実にボーテ!そう思わないかい、薔薇の騎士 ?」
__________
クルーウェル先生の所へ相談に行ったところ、誰の仕業か調べてみる、2人の面倒はお前たちが見ろ、と言われた。先生の口元が心なしか緩んでいたような気がする。
今日はオクタヴィネル寮に泊まるから、とグリムに伝え___初めは嫌そうな顔をされたが、ハーツラビュルに泊まりに行っていいし、ツナ缶を後であげると言ったら喜んでくれた___購買部にまさか離乳食なんてないだろうと思ったら、サムさんは何でも備えているようで、すぐに持ってきてくれた。
その間フロイド先輩はいつもの気分屋はどこへ行ったのやら、赤ちゃん2人をあやしたり、服の袖をしゃぶられても怒らずにニコニコするといった、温厚さを見せていた。
「ぱぱ!ごはん!」
「ぱぱ!ごはんです!」
夕食の時間だとしきりに訴える先輩達。可愛らしい腕を伸ばして要求してくる姿に私も悶絶してしまう。
「ママ~もうご飯食べる~?」
「ッ!先輩!恥ずかしいです……」
不意打ちの先輩からの呼び方に顔にカッと熱が集まる。
「あはっちょっとふざけただけだよ~」
ごめんごめんと言いつつ、あまり詫びる様子がないフロイド先輩。ご飯を食べさせた後も私がお風呂に入れようとしたら、オレがやるからいい!と言って2人を連れてバスタブへ飛び込んでいった。先輩の献身的な態度にに何だか嬉しくなった。
お風呂も入って、少し遊んで、もうすっかり寝る時間になってしまった。
「アズールもジェイドも一緒に寝んの~?2人はなんか小っちゃいベッド作ってあげれば良くね?」
不満げに口を尖らせてベッドに座るフロイド先輩。ウツボがプリントされたTシャツにバスパンを合わせた見慣れない緩い服装に少しどきどきする。先輩の腕の中の2人は既にうとうとしかけていて、しっかり抱えていないと落ちてしまいそうだった。
「赤ちゃんだから……可哀そうじゃないですか」
だから、一緒に寝ましょ、と先輩を諭すと、分かったよ~とまだどこか不満げに言って、ベッドに寝そべる。少し明かりを落とすとフロイド先輩の顔が薄暗い中にぼぅっと見えて、なんだか嬉しくなった。
私とフロイド先輩の間にアズール先輩とジェイド先輩が寝るという形になって、本当に家族みたいだ……と思った。慣れない赤ちゃんの世話に疲れたし、先輩の部屋は程よい薄暗さでまどろみかけていたところ、先輩が口を開いた。
「オレ、モカちゃんとのこんな未来が見えた、今日」
いつもは小エビちゃんで、滅多にモカちゃんなんて呼んでくれないから、胸が高鳴った。
「……私もです。先輩…好きです」
「…あは、オレも~好きだよ♡」
その言葉を最後に私の意識は途切れた。
「…………ん……あさ……?ってえ!?!?」
なんと、私とフロイド先輩の間に普通サイズのアズール先輩とジェイド先輩が寝ているのだ。寝ている間に元の姿に戻ったのだろう。
「……ん?…こえびちゃ………あーー!!!」
私の声で起きた先輩が、まるで何かにつつかれたかのように飛び起き、間でまだ寝ている先輩2人を容赦なくベッドの下へ突き落した。
「うわぁ!!!!眼鏡がない…………あれ、何故僕はフロイドの部屋にいるんだ……?」
「はっ!!おや…………?ここはフロイドの部屋…………?」
まだ寝惚けてながらも、状況が分からない2人に、もうすっかり目が覚めた様子のフロイド先輩が叱咤する。
「2人とも酷い~!小エビちゃんの彼氏はオレなのに!」
そう言って私の腰を抱き寄せ、べーっと舌を出して見せた。その様子があまりにも愛しくて、先輩の腕の中で私もへらっと笑って見せた。
Fin.
誰からも返事がない。白い煙が辺りに立ち込めていて何も見えない。手探りで床を這うようにして進んでいくと、筋肉の発達した逞しい腕に触れる。慌てて手を引っ込めると、その手をぐいっと掴まれ、
「オレだよ、小エビちゃん♡小エビちゃんこそだいじょーぶ?」
すごい力で引き寄せられた。先輩が無事のようでよかったが……
「アズール先輩っ!ジェイド先輩!?」
一緒に来た2人からの返事がない。気を失ってしまっていたらと、そればかりが頭の中を駆け巡る。
今日は先週から作成していた、モストロラウンジのライトアップ用の薬品を取りに来ていた。アズール先輩が来週の一般開放での新規顧客の獲得に向けて、内装をリニューアルしようと言い出し、ここ1週間、薬品の開発に関わってきたのだ。放課後、魔法薬学室を借りて薬品の調合を行い、ここ3日間はねかせておいて、さらに美しい色合いにするのだと息巻いていた。そして、実験室のドアを開けた途端、この有様である。ドアを開けた瞬間、何かが軽く爆発するような音が聞こえ、辺りが真っ白な煙に包まれてしまったのだ。
「先輩!?先輩!!」
私が叫ぶ横で、フロイド先輩が何か詠唱したかと思うと、白い煙の霧が晴れて、そこに居たのは……
「…………うわぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」
「……ぐすっぐすっ……」
泣き叫ぶ2歳くらいのアズール先輩と、泣き叫ぶアズール先輩を見て驚いて泣いてしまっている同じく2歳くらいのジェイド先輩が居た。
「……え?…アズールもジェイドもどうしたの?なんで赤ちゃんになってんの~?」
フロイド先輩は固まってその場に立ち尽くしている。立ち尽くしているのは私も同じだ。どういうわけだか、2人は小さくて可愛らしい赤ちゃんになってしまったのだ。
「おい!今、爆発音が聞こえたが……って監督生じゃないか」
「それにムシュー愉快犯。一体どうしたんだい、この爆発は」
立ち尽くす私たちの後ろのドアから走って入ってきたのは、本来この放課後の時間に活動している、サイエンス部のトレイ先輩と、ルーク先輩だった。
「あ、あの……何かが爆発して……先輩たちが……」
恐る恐る2人の赤ちゃんの方を指さすと、2人の足音が怖かったのか、アズール先輩もジェイド先輩も涙が止まってしまっていて、トレイ先輩とルーク先輩の方を潤んだ目でじっと見つめていた。
「……えっと…これはどういうことだ?」
トレイ先輩は誰かがリドル寮長の逆鱗に触れてしまって困ったときと同じように眉を下げ、私の顔を見る。眼鏡の奥の目は驚きに見開かれている。私もほとほと困ってしまって、横にいる大男を見上げた。でも、フロイド先輩は相変わらず口をぽかんと開けて赤ちゃんになった2人を見ている。そんな沈黙を破ったのは、アズール先輩の甲高い声だった。
「ままぁ!ぱぱ!」
私とフロイド先輩の方を、赤ちゃん特有のむちむちした小さな指で一生懸命指さして叫ぶ。ジェイド先輩もお気に入りのおもちゃを見つけたような顔でこっちを見てにぱぁっと笑う。
「まま…ぱぱ……!!」
私とフロイド先輩の方を見ながらきゃっきゃっと笑い、小さな手を叩くジェイド先輩。実験室の床の上で座り込んで赤ちゃんが泣いている様子はどう見ても異様だった。ましてや、それがオクタヴィネルの寮長と副寮長なのだから。
「……
どこか嬉しそうな声で肩を竦めながら言うルーク先輩。
なぜそう勘違いしたかは、きっとこの2人だけが私とフロイド先輩が付き合っていることを知っているからだろう。正直、ママ、パパ、だなんて恥ずかしすぎる。先輩も同じことを考えて、困った表情をするだろうと思ったが、先輩は赤ちゃん2人の方にしゃがみこんでにこにこ笑っている。
アズール先輩とジェイド先輩が一度にフロイド先輩の方へ寄っていって、フロイド先輩の寮服のストールを掴んだ。何とも可愛らしい仕草で、普段の、VIPルームでにやにや札束を数えている姿も、丁寧に見えても裏にどこか狂気が見えるような様子も全く想像できない。
「……ぱぱ?あそぶ!」
「…あは、そうみたい、ジェイドもアズールもオレのことパパだと思ってるんだ~♡ウミネコくん、どうしたらいいと思う~?」
先輩は子供の相手なんてしなさそう、子供って束縛するからやだぁ~とか言いそう、と思っていたのに、案外乗り気な様子だ。魚は兄弟が多いから人魚の先輩にも小さい兄弟がいるのだろうか、なんてぼんやり考えた。サイエンス部の2人の先輩のご指南で、私たちは取敢えずクルーウェル先生の所へ相談に向かった。
__________
「…もしかしてあの2人……いや、余計な詮索はよすか」
「友の世話を懸命にしようとする彼らの姿勢、実にボーテ!そう思わないかい、
__________
クルーウェル先生の所へ相談に行ったところ、誰の仕業か調べてみる、2人の面倒はお前たちが見ろ、と言われた。先生の口元が心なしか緩んでいたような気がする。
今日はオクタヴィネル寮に泊まるから、とグリムに伝え___初めは嫌そうな顔をされたが、ハーツラビュルに泊まりに行っていいし、ツナ缶を後であげると言ったら喜んでくれた___購買部にまさか離乳食なんてないだろうと思ったら、サムさんは何でも備えているようで、すぐに持ってきてくれた。
その間フロイド先輩はいつもの気分屋はどこへ行ったのやら、赤ちゃん2人をあやしたり、服の袖をしゃぶられても怒らずにニコニコするといった、温厚さを見せていた。
「ぱぱ!ごはん!」
「ぱぱ!ごはんです!」
夕食の時間だとしきりに訴える先輩達。可愛らしい腕を伸ばして要求してくる姿に私も悶絶してしまう。
「ママ~もうご飯食べる~?」
「ッ!先輩!恥ずかしいです……」
不意打ちの先輩からの呼び方に顔にカッと熱が集まる。
「あはっちょっとふざけただけだよ~」
ごめんごめんと言いつつ、あまり詫びる様子がないフロイド先輩。ご飯を食べさせた後も私がお風呂に入れようとしたら、オレがやるからいい!と言って2人を連れてバスタブへ飛び込んでいった。先輩の献身的な態度にに何だか嬉しくなった。
お風呂も入って、少し遊んで、もうすっかり寝る時間になってしまった。
「アズールもジェイドも一緒に寝んの~?2人はなんか小っちゃいベッド作ってあげれば良くね?」
不満げに口を尖らせてベッドに座るフロイド先輩。ウツボがプリントされたTシャツにバスパンを合わせた見慣れない緩い服装に少しどきどきする。先輩の腕の中の2人は既にうとうとしかけていて、しっかり抱えていないと落ちてしまいそうだった。
「赤ちゃんだから……可哀そうじゃないですか」
だから、一緒に寝ましょ、と先輩を諭すと、分かったよ~とまだどこか不満げに言って、ベッドに寝そべる。少し明かりを落とすとフロイド先輩の顔が薄暗い中にぼぅっと見えて、なんだか嬉しくなった。
私とフロイド先輩の間にアズール先輩とジェイド先輩が寝るという形になって、本当に家族みたいだ……と思った。慣れない赤ちゃんの世話に疲れたし、先輩の部屋は程よい薄暗さでまどろみかけていたところ、先輩が口を開いた。
「オレ、モカちゃんとのこんな未来が見えた、今日」
いつもは小エビちゃんで、滅多にモカちゃんなんて呼んでくれないから、胸が高鳴った。
「……私もです。先輩…好きです」
「…あは、オレも~好きだよ♡」
その言葉を最後に私の意識は途切れた。
「…………ん……あさ……?ってえ!?!?」
なんと、私とフロイド先輩の間に普通サイズのアズール先輩とジェイド先輩が寝ているのだ。寝ている間に元の姿に戻ったのだろう。
「……ん?…こえびちゃ………あーー!!!」
私の声で起きた先輩が、まるで何かにつつかれたかのように飛び起き、間でまだ寝ている先輩2人を容赦なくベッドの下へ突き落した。
「うわぁ!!!!眼鏡がない…………あれ、何故僕はフロイドの部屋にいるんだ……?」
「はっ!!おや…………?ここはフロイドの部屋…………?」
まだ寝惚けてながらも、状況が分からない2人に、もうすっかり目が覚めた様子のフロイド先輩が叱咤する。
「2人とも酷い~!小エビちゃんの彼氏はオレなのに!」
そう言って私の腰を抱き寄せ、べーっと舌を出して見せた。その様子があまりにも愛しくて、先輩の腕の中で私もへらっと笑って見せた。
Fin.
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