#だきまくら
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明日、夕焼けの草原の第二王子であり、ナイトレイブンカレッジでサバナクロー寮の寮長でもあり、そして、私の愛しい人でもある彼が帰省してくる。彼の甥にあたるチェカ様のお付きの侍女である私はチェカ様が’’おじたん’’のお話をされるのを1週間程前から聞いていた。
なんだか私はチェカ様に懐かれているようで、仕事をしている所にやってきて、「モカ~遊ぼ!」と嬉しい誘いをしてくださる時もあれば、ひたすらレオナの話をしてくださる時もある。チェカ様によると、レオナおじたん、はマジフトが上手くて、おともだちがたくさんいて、チェカ様の書いたお手紙をちゃんと読んでくれている、だそうだ。チェカ様がレオナの話をする時、大きな目をきらきらさせて、嬉々とした様子でいるのがなんとも愛らしい。チェカ様は明日が待ちきれないといった様子で、ベッドでお休みになることを拒んだが、血は抗えないのか、ベッドの横で御本を読んで差し上げると、ものの数分で眠ってしまった。
眠ったチェカ様をお部屋に残して、起こさないようにこっそりと部屋を出る。まだ夜の9時だから他の侍女もみんなベッドメイクや、洗濯物の片付けなどに勤しんでいる。月明りの綺麗な廊下を歩いて、私も仕事をしようと、3、4人の侍女達が固まってお喋りをしながら、洗濯物を畳んでいる所へ混じった。話題は明日帰ってくるレオナについてで……
「ねぇ、明日第二王子がお帰りになられるんですって。」
ファレナ様お付きの侍女が眉を潜めて言う。
「ええ、何でも恐ろしい魔力の持ち主なんだとか。」
「いつも不機嫌そうにしていて、学校でも恐れられているって聞いたことがあるわ。」
そんなことはない。実際この間のホリデーで会ったときに、身の回りの世話をしてくれる後輩がいると言っていた。後輩を顎で使っているという問題はあるが、孤立している様子はないし、なんでも今年入学してきた1年生に変わった人物がいるそうで、退屈しないと言っていた。
「こらっ王子に向かって無礼な発言は控えなさい。」
1番年長の侍女が窘めると、ぴたりとお喋りが止んだ。王宮で仕えていると、彼の良い噂より悪い噂______ほとんどが根も葉もないものだったが______が多少なりとも耳に入る。1度だけ彼に言ってみたことがあるが、鼻で笑われ優しく頭を撫でられるだけだった。彼が気にしていなかったとしても、私は気にするのに。彼が帰ってくる前日であるのに、いつもは楽しみで眠れないのに、悶々として眠れなかった。
早朝から忙しく動き回っていて、よく眠れなかった分の疲れが出てきた昼下がり。私はチェカ様に連れられて王宮の噴水の側でチェカ様に植物の名前をお教えしていた。
「ねぇモカ!これは~?」
「それはバオバブの樹です。とっても大きいんですよ。」
好奇心旺盛なチェカ様と話していると疲れを忘れられる。昨日の侍女達の噂話が頭から離れない。早く彼に会いたい、でもきっと今日はファレナ様達に挨拶に行ったりで彼も疲れてしまうだろうからまだ辛抱だと言い聞かせる。
「…モカ~?どうしたの?」
黙りこくってしまった私を心配してチェカ様が顔を覗き込んだ。くりくりの大きな目が見開かれている。
「大丈夫ですよ。有難うございます。」
そういうと、急にチェカ様が驚いた表情で飛び上がった。と思うと、弾丸のように走っていってしまった。突然のことに驚きながらも、側に置いていた図鑑やペンを片付けておく。チェカ様はどこへ行ってしまったのだろうと疑問に思っていると、
「おい。」
少し冷たい言い方で、でも透き通るように甘く低い声。振り返るとそこには何か月ぶりだろうか、私の恋人である、レオナ・キングスカラーが腰に手を当てて立っていた。チェカ様が彼の足元にくっついてにこにこ笑顔を見せている。
「……レオナ様。お帰りなさいませ。」
「…ああ。顔、上げろよ。」
寝不足の酷い顔を見せたくはなかったが、顔を上げ、彼を見上げる。綺麗なグリーンの瞳が私を射抜くように見た。
「……おい。」
「…?なんでしょう。」
その瞬間、私の身体が急に宙に浮きあがった、と思ったらレオナが私を抱き上げていた。ふわっと香る彼のムスクの匂い。身に着けた上質な服が衣擦れの音を立て、彼の腕が私の腰を抱えている。
「ちょっと!レオナ!こんなところで、誰かに見られたら…下ろしてください!」
焦って普段なら外にいる時は様付けで呼んでいるのに、つい呼び捨てをしてしまった。
「…うるせえな。ちょっと俺の部屋まで来い。」
「え?ちょっと!下ろしてください!」
彼の背中を叩くがびくともせず、そのまま悠々と歩いていく。チェカ様が笑顔で手を振っている。止めてほしい……
幸い誰にも見られることなくレオナの部屋までたどり着くことができた。余裕そうに王宮の廊下を歩いていて、その涼しい顔をいつか崩してやりたい、なんて思ったり。優雅な仕草で部屋の扉を閉め、私を抱えたまま部屋の奥へと向かう。
ふわっと彼のベッドに下ろされた。ふかふかで、整えたてだからまだしわもない。どういうつもりなのか問いただそうとすると、ぎゅっと後ろから抱きしめられ、倒され、強制的に彼のベッドに寝そべることになる。
「……どうしたのですか?」
こんなことをされるのは初めてで戸惑う。心なしか声が震えた。
「ああ、…周りの奴らに媚びてきて疲れたんだ。モカ、抱き枕になってくれよ。」
後ろから抱きしめられているから表情は見えないけれどきっといつものにやにや笑いを浮かべているのだろう。
「……だめですよ。私、仕事しにいかなくちゃ。」
抜け出そうともぞもぞ動くと腕の力が強くなる。
「あ?仕事くらいいいだろ。ちょっと付き合えよ。久しぶりに帰ってきたんだし。」
こうなるとレオナは絶対に聞かない。レオナは3秒で寝るという特技を持っているので、すぐ寝た後にこっそり抜け出そう。
「……仕方がありません、少しだけなら…」
「いい子だ。じゃあ遠慮なく。」
更に強く抱きしめ、先ほどまでバックハグだったのを丁度彼の胸に私の顔が当たるような形に変えてきた。そうなると視界が暗くなってなんだか昨晩良く眠れなかったから、こちらまで眠たくなってくる。少しくらいなら大丈夫かと私も目を閉じた。
「…おい、寝たか。」
自分の腕の中にいる彼女の顔にかかった髪を払い、問いかける。反応はないので眠ったのだと分かった。穏やかな表情で、伏せられた睫毛が影を作っている。
「全く。」
無理をしているのがばればれだ。顔色が悪かったし、目の下に隈が出来ていた。あのチェカにも分かったくらいだ。大方、人の言葉に過敏に反応するモカだから、昨日の夜にでも王宮の使用人どもが俺の噂をしているのでも聞いたのだろう。不吉な魔法を使う第二王子、気性が荒い、恐ろしいだの、そんなところだろうか。前に心配されたときに俺は気にしないと伝えたのに。優しいモカらしい。
「……俺はお前みたいに自分を理解してくれる奴が1人でもいればいいんだ。」
そう言って彼女の髪を撫でる。するとほんの少しだけ彼女が微笑んだ気がした。……俺も少し眠ろう。
Fin.
なんだか私はチェカ様に懐かれているようで、仕事をしている所にやってきて、「モカ~遊ぼ!」と嬉しい誘いをしてくださる時もあれば、ひたすらレオナの話をしてくださる時もある。チェカ様によると、レオナおじたん、はマジフトが上手くて、おともだちがたくさんいて、チェカ様の書いたお手紙をちゃんと読んでくれている、だそうだ。チェカ様がレオナの話をする時、大きな目をきらきらさせて、嬉々とした様子でいるのがなんとも愛らしい。チェカ様は明日が待ちきれないといった様子で、ベッドでお休みになることを拒んだが、血は抗えないのか、ベッドの横で御本を読んで差し上げると、ものの数分で眠ってしまった。
眠ったチェカ様をお部屋に残して、起こさないようにこっそりと部屋を出る。まだ夜の9時だから他の侍女もみんなベッドメイクや、洗濯物の片付けなどに勤しんでいる。月明りの綺麗な廊下を歩いて、私も仕事をしようと、3、4人の侍女達が固まってお喋りをしながら、洗濯物を畳んでいる所へ混じった。話題は明日帰ってくるレオナについてで……
「ねぇ、明日第二王子がお帰りになられるんですって。」
ファレナ様お付きの侍女が眉を潜めて言う。
「ええ、何でも恐ろしい魔力の持ち主なんだとか。」
「いつも不機嫌そうにしていて、学校でも恐れられているって聞いたことがあるわ。」
そんなことはない。実際この間のホリデーで会ったときに、身の回りの世話をしてくれる後輩がいると言っていた。後輩を顎で使っているという問題はあるが、孤立している様子はないし、なんでも今年入学してきた1年生に変わった人物がいるそうで、退屈しないと言っていた。
「こらっ王子に向かって無礼な発言は控えなさい。」
1番年長の侍女が窘めると、ぴたりとお喋りが止んだ。王宮で仕えていると、彼の良い噂より悪い噂______ほとんどが根も葉もないものだったが______が多少なりとも耳に入る。1度だけ彼に言ってみたことがあるが、鼻で笑われ優しく頭を撫でられるだけだった。彼が気にしていなかったとしても、私は気にするのに。彼が帰ってくる前日であるのに、いつもは楽しみで眠れないのに、悶々として眠れなかった。
早朝から忙しく動き回っていて、よく眠れなかった分の疲れが出てきた昼下がり。私はチェカ様に連れられて王宮の噴水の側でチェカ様に植物の名前をお教えしていた。
「ねぇモカ!これは~?」
「それはバオバブの樹です。とっても大きいんですよ。」
好奇心旺盛なチェカ様と話していると疲れを忘れられる。昨日の侍女達の噂話が頭から離れない。早く彼に会いたい、でもきっと今日はファレナ様達に挨拶に行ったりで彼も疲れてしまうだろうからまだ辛抱だと言い聞かせる。
「…モカ~?どうしたの?」
黙りこくってしまった私を心配してチェカ様が顔を覗き込んだ。くりくりの大きな目が見開かれている。
「大丈夫ですよ。有難うございます。」
そういうと、急にチェカ様が驚いた表情で飛び上がった。と思うと、弾丸のように走っていってしまった。突然のことに驚きながらも、側に置いていた図鑑やペンを片付けておく。チェカ様はどこへ行ってしまったのだろうと疑問に思っていると、
「おい。」
少し冷たい言い方で、でも透き通るように甘く低い声。振り返るとそこには何か月ぶりだろうか、私の恋人である、レオナ・キングスカラーが腰に手を当てて立っていた。チェカ様が彼の足元にくっついてにこにこ笑顔を見せている。
「……レオナ様。お帰りなさいませ。」
「…ああ。顔、上げろよ。」
寝不足の酷い顔を見せたくはなかったが、顔を上げ、彼を見上げる。綺麗なグリーンの瞳が私を射抜くように見た。
「……おい。」
「…?なんでしょう。」
その瞬間、私の身体が急に宙に浮きあがった、と思ったらレオナが私を抱き上げていた。ふわっと香る彼のムスクの匂い。身に着けた上質な服が衣擦れの音を立て、彼の腕が私の腰を抱えている。
「ちょっと!レオナ!こんなところで、誰かに見られたら…下ろしてください!」
焦って普段なら外にいる時は様付けで呼んでいるのに、つい呼び捨てをしてしまった。
「…うるせえな。ちょっと俺の部屋まで来い。」
「え?ちょっと!下ろしてください!」
彼の背中を叩くがびくともせず、そのまま悠々と歩いていく。チェカ様が笑顔で手を振っている。止めてほしい……
幸い誰にも見られることなくレオナの部屋までたどり着くことができた。余裕そうに王宮の廊下を歩いていて、その涼しい顔をいつか崩してやりたい、なんて思ったり。優雅な仕草で部屋の扉を閉め、私を抱えたまま部屋の奥へと向かう。
ふわっと彼のベッドに下ろされた。ふかふかで、整えたてだからまだしわもない。どういうつもりなのか問いただそうとすると、ぎゅっと後ろから抱きしめられ、倒され、強制的に彼のベッドに寝そべることになる。
「……どうしたのですか?」
こんなことをされるのは初めてで戸惑う。心なしか声が震えた。
「ああ、…周りの奴らに媚びてきて疲れたんだ。モカ、抱き枕になってくれよ。」
後ろから抱きしめられているから表情は見えないけれどきっといつものにやにや笑いを浮かべているのだろう。
「……だめですよ。私、仕事しにいかなくちゃ。」
抜け出そうともぞもぞ動くと腕の力が強くなる。
「あ?仕事くらいいいだろ。ちょっと付き合えよ。久しぶりに帰ってきたんだし。」
こうなるとレオナは絶対に聞かない。レオナは3秒で寝るという特技を持っているので、すぐ寝た後にこっそり抜け出そう。
「……仕方がありません、少しだけなら…」
「いい子だ。じゃあ遠慮なく。」
更に強く抱きしめ、先ほどまでバックハグだったのを丁度彼の胸に私の顔が当たるような形に変えてきた。そうなると視界が暗くなってなんだか昨晩良く眠れなかったから、こちらまで眠たくなってくる。少しくらいなら大丈夫かと私も目を閉じた。
「…おい、寝たか。」
自分の腕の中にいる彼女の顔にかかった髪を払い、問いかける。反応はないので眠ったのだと分かった。穏やかな表情で、伏せられた睫毛が影を作っている。
「全く。」
無理をしているのがばればれだ。顔色が悪かったし、目の下に隈が出来ていた。あのチェカにも分かったくらいだ。大方、人の言葉に過敏に反応するモカだから、昨日の夜にでも王宮の使用人どもが俺の噂をしているのでも聞いたのだろう。不吉な魔法を使う第二王子、気性が荒い、恐ろしいだの、そんなところだろうか。前に心配されたときに俺は気にしないと伝えたのに。優しいモカらしい。
「……俺はお前みたいに自分を理解してくれる奴が1人でもいればいいんだ。」
そう言って彼女の髪を撫でる。するとほんの少しだけ彼女が微笑んだ気がした。……俺も少し眠ろう。
Fin.
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