身の上




僅かでも進学したい気持ちが重ければ、金銭的には何も問題はなかったのだからそうすることも出来た。無理をいうことにはなるが、父から養育費が送られてきていることを知らないほど子供でもなかったし。

だが確かに血は繋がっているのだろうが、一度も顔を見せたことのない父に、これ以上の施しを受けるのはどうしても嫌だったのだ。


そう。“施し”だ。




しかしキラは間に合わなかった。

高校三年になったばかりの春。


母は静かに息をひきとったのだった。




うちひしがれるキラの前に現れたのは、父ではなく彼の代理人と名乗る弁護士。彼は父・ウズミがキラを引き取りたいと言っていると、優しくキラに告げた。
母の早逝は予想の範疇だったとはいえ、当時キラはまだ未成年。一人になることは覚悟していたが、いざなってみればやはり不安だった。

しかしこの期に及んで代理人しか寄越すことのない父には反感しか覚えない。母の葬式にさえも質素な葬列に、場違いに豪華な献花が届いただけだったのだ。

キラは代理人の弁護士と相談し、母と暮らしたアパートにそのまま住むことを強要した。未成年が一人暮らしをすることを穏健派らしいその弁護士は懸念してくれ、しきりにアスハ家へ移るように勧められたが、頑として譲らなかった。

頑固なのは生まれつきだ。
自分の子供のそんな“性格”も知らないで、外聞が悪いからと金にものを言わせるようなことをする、父親の方が悪いのだ。

母の思い出の残るアパートに暮らしたいという主張は、至極当たり前のことだとキラは繰り返したのだった。




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