謎の機械による身体検査が終わり、チクッ、と機械の先端に付属された注射器の針が刺さる。何かがじわじわと私の体の中に入ってくるのがわかる。そして針が抜けたその時、全身に電流のような激痛が走った。体の筋肉が裂けるように痛み始める。苦しい。息もできない。目の前が真っ白になり、何も考えることが出来ない。あまりの激痛と苦しさにただのたうち回ることしかできない。視界がぼやけ、脳の中をかき回されてるかのような頭痛。その苦しみは、約一分間は続いた。

やっと落ち着いてきた。一分間がまるで一時間かと思った。自分の体をぺたぺたと触って確認してみる。特に異常はなく、異形化もしていない。ホッ、と安心のため息が出た。
｢おぉ…まさか異形化せずに終わるとは…｣
ガラス張りの向こうからジョージョーが入ってきた。
｢何か違和感はないですかな。例えば口から虫が出そうとか炎が出そうとか｣
『例えが特殊すぎませんか…特に違和感はないです』
あるとすれば、全身の痛みや頭痛がなくなったことだろう。これもグルメ細胞の力なのか。
｢おぉそれは何より…スタージュン様もさぞお喜びでしょう。ささ、スタージュン様のところへ参りましょう｣
杖をついてのそのそを歩くジョージョーの後ろを着いていく。

しばらく歩くと大きな扉の前に出た。今までのとは尋常じゃないレベルで大きい。
｢こちら会議を行っております食堂にございます｣
『食堂なんですかここ』
食堂とは言えないくらいの圧迫感。一般人からしての食堂は、みんながわいわいご飯を食べるところなのだが…
『あの、今会議中では？』
｢スタージュン様から会議中でも早めの報告をするようにと命じられております｣
それでいいんかスタージュン。すると重量感のある扉が大きな音を立てて開いた。中にはかつて見たことのあるメンツがいた。
｢ジョージョー…話の途中に何の用だ｣
｢会議の途中失礼します…スタージュン様にご報告をと思い｣
一気に視線がこちらに向けられると共にジョージョーが歩き出す。緊張で冷や汗を出しながらぎこちない動きで後を追った。漫画でもそうだったが、やはり緊張感のある場所だ…
｢無事注入は終わったか、ジョージョー｣
｢はい、思っていた以上に早く終わりました。しかも異形化もせずに本来の姿のままで｣
｢ほう…｣
スタージュンは、横の柱にいる私に目をやる。他のメンツはなんだこいつと言わんばかりの視線を向けていた。
｢なんだコイツ、ただの女じゃねーか｣
｢セドル、口を慎みなさい｣
｢スタージュンよ、この娘はなんだ｣
クロマドの一言でスタージュンに一気に視線が集まる。するとスタージュンは恥ずかしがることなく
｢私の義理の娘です｣
と言い放った。