｢そういえば先ほどの話の続きだが…｣
げ、と顔をしかめる。実のところ私自身もよく分かっていない。質問されても答えられるか不安だ。
｢まず、お前はどこから来た｣
『……日本…？』
｢日本…そのような地名は聞いたことも無い｣
でしょうね。なぜなら異世界にあるので。しかし異世界にあると言ってもきっと信じてはもらえないだろう。
『あの、私はこれから何を…』
｢お前には身体検査を受けたあと、グルメ細胞を注入してもらう｣
早速か。と心の中で呟いた。
｢グルメ細胞は、食材の味を更に旨くする細胞だ。しかしそれを人間に注入すると、超人的な力と治癒能力が手に入る。｣
なんとなくはリーガルマンモス編で説明があったから知っている。そうか、だから私はこれからグルメ細胞を…
『あの、さっきカイトラさんからグルメ細胞にうまく適合できなければ異形化するか死ぬ、と…』
｢…やはり隠せなかったか｣
いや隠して注入しようとしてたんかい！死んだらどうするんだよ！と心の中で叫んだ。しかしその叫びがそのまま顔に出てたらしく、私の顔を見てスタージュンは
｢すまない｣
と謝罪した。
｢しかしグルメ細胞が無ければお前はすぐ死ぬと考えた方が良い。ここは荒っぽいヤツが多いからな｣
そうかもしれないけど…突然美食會に飛ばされて生きるか死ぬかのギャンブルをさせられていると思うと少々複雑な気持ちになる。
｢この際だからグルメ細胞を注入した後の難点を伝えておこう｣
『難点？』
｢グルメ細胞を維持するためには多大なエネルギーが必要になる。つまり、毎日大量に食わねば死ぬということだ。｣
そうか、だからトリコたちの食欲は化け物レベルだったのか。と、私は今になって理解した。しかしグルメ時代のこの世の中ではメリットの方が多いのかもしれない。そして一つ気になることがあった。
『あの、もしかして私戦いに出されることって…』
｢ない｣
ズバッと言われた。ここまで潔いと安心を通り越して少し悲しい。
『じゃあ私は何を…』
｢お前は、私の養子になる｣
『え』
衝撃的な一言。驚きすぎて一瞬歩みが止まった。私がスタージュンの子供に…？いや、何かの聞き間違いか何かだろうきっと。
｢お前には私には無い食運がある。それもかなりの食運だ。きっといい料理人にも巡り会えるだろうと思いお前を養子にすることにした｣
『なるほど…』
本気だった。それにしても食運ってなんだろう、普通に運勢のことかなと考えていたら既に目的地に到着していたらしく、スタージュンがそっ、と手を出し私の歩みを止めた。
｢これはこれはスタージュン様｣
ドアから出てきたのはジョージョーだった。確かジョージョーはGTロボの開発担当…ということはここは研究所か何かだろうか。
｢ジョージョー、あとは頼むぞ。私は会議があるので急ぐ｣
｢おまかせください｣
ジョージョーに私を預けてスタージュンは行ってしまった。会議ということはあのクロマドに呼び出されてでもしているのだろう。大変なんだな、と彼の背中を見つけた。
｢さあこちらに｣
扉の中に入っていくジョージョーの背中を追う。すると様々な機械が設置されており、まさしく研究所という感じだった。そして行くその先には怪しげな機械と真っ白なベッド。
｢さあ、ここに横になってくだされ｣
言われた通りにベッドに横になる。これから、グルメ細胞を注入される。死ぬか無事生き残るか……それとも異形化してしまうか。まさしくギャンブルだ。怪しい機械が迫ってくる。せめて、ここで死ねたら。元の世界に戻ってくれたりしないかな。そう思い私は目を瞑り機械を受け入れた。